505 リヴァイアサンのタタキ? いや炙り?
投稿したつもりでした。( ・∇・)ハハ
「うっわ、リヴァイアサンの切り身だ」
莉奈が魔法鞄から魚の切り身を取り出すと、皆が一斉にザワついた。
薄青色した切り身だから、すぐにリヴァイアサンだと分かったのだろう。
エギエディルス皇子が結局、口にしなかったリヴァイアサン。色もそうだけど、生だったから抵抗感があったみたいだ。
「どうするんだ、ソレ」
手の空いたマテウス副料理長が、興味津々の様子でチラッと見た。
「陛下のおつまみに使おうかと」
そう説明しながらリック料理長を見れば、また周りにまとわりつき始めたリリアンに手を焼いていた。
そのリリアンと目が合えば、今度はコッチに来るのだから厄介である。
パンケーキを食べた莉奈にもリリアンのレーダーが反応したのだとしたら、恐ろしい嗅覚だ。
「痛ぁっ!」
邪魔だしウザイので、何か言われる前に軽くチョップをかましておいた。
仕事の邪魔をするなんて言語道断である。莉奈はまだ、邪魔をされてはいないけど。
「と、その前にボウルに氷水を用意しておく」
「カクテルか?」
「カクテルなんだな?」
「おつまみって言ったでしょう? 大体、リヴァイアサンを使うカクテルって何かな」
氷と聞いた途端に皆がザワつくものだから、莉奈は呆れていた。
おつまみと説明したのに、何故カクテルになる。しかも、リヴァイアサンを用意しているのに。
「えっと。リヴァイアサンは柵のまま、オリーブオイルを引いたフライパンで表面を強火で軽く焼く」
「軽く? 火は通さないんだな?」
「うん。炙る感じ」
せっかく新鮮なリヴァイアサンだから、まずは新鮮さを活かした料理を堪能したい。それからムニエルや鍋など、火を通す料理に……。
「軽く表面が色づいたら、氷水にドボンと入れる」
「サウナ風呂だ」
それを見ていたリリアンが、瞬いたように声を上げた。
確かに、温まってから水に入るのはサウナ風呂みたいだ。莉奈が、なるほどと頷きかけたその時ーー
「いやいや、表面に完全に火が通ってるんだから、火炙りだろ」
すかさずマテウス副料理長が、ツッコんでいた。
そうだった。表面を温めるなんてレベルではなかった。
「サウナ風呂も火炙りもヤメてくれ」
莉奈は思わず頷きかけたが、料理に対してそんな表現をするなと、リック料理長は眉間にシワを寄せていた。
「サッと冷やしたリヴァイアサンは、布巾で水気を取って少し厚めに切っておく」
1センチくらいの厚みでリヴァイアサンを切り分け、平たくて長細いお皿に並べておいた。薄青い身のリヴァイアサンだったが、火を通した部分は白くなっていた。
今だに身の色は見慣れないけど、白と青のコントラストがとてもキレイだなと思う。
「ところで、何故表面だけ炙ったんだ?」
「魚特有の生臭さが軽減されたり、脂の多い魚は表面を炙ると、ほどよく脂が抜けて美味しくなるんだよ」
「なるほど」
「特に皮が硬かったり臭みの強い青魚は、炙る事で香ばしさも増して美味しく食べられる」
まぁ、リヴァイアサンは皮付きじゃないし、生臭さは全くないけど。
マグロやサーモンの様に少し炙ると、味わいがガラッと変わるのでは? と想像したのだ。
「イブッチャーは煮ても焼いても臭いけどな」
「"イブッチャー"?」
ギロンチみたいな魚なのだろうか?
漁師町出身の料理人ダニーの呟きに、莉奈は思わず反応していた。
「蛍光ピンクな派手な魚でさ。ウチの村では、糸を垂らせばすぐ釣れるって言われるくらいに、よく獲れるんだけど……まぁ小っとアンモニア臭がスゴいんだよ」
「「「……」」」
小便と言いかけたが、皆に怪訝な表情をされたので言い換えた。
だが、今さらアンモニアと言い換えられても、頭の中はトイレ臭が。リック料理長達も微妙な表情をしているけど、貴族様には無縁の臭いではなかろうか?
そう思っていたのだが、貴族でもペットや家畜がいる家も多いらしく、臭いは理解出来るようだった。
「サメやエイみたいなものか。なら、ホーニン酒やワインにしばらく浸けておくと、臭いが抜けるかもね」
後は柑橘系のモノにしばらく浸けておくと、イイって聞いた事がある。
サメのヒレであるフカヒレも、しっかり下処理をしないと、アンモニア臭があるとか。ものスゴい高いお金を払って、やっと口に出来たフカヒレ料理が臭かったら、色んな意味で衝撃的過ぎる。
「へぇ。お酒に浸けるとあのアンモニア臭が抜けるのか……」
「もったいなっ!!」
「そこまでして食う意味」
「俺はホーニン酒が飲みたい」
臭み消しにお酒を使うと聞いた料理人達は、一斉に無駄遣いだとザワめいた。
酒を使ってまで、そんな臭い魚を食べる理由がないと。
「"完成"!」
「「「えっ!?」」」
話しながらも調理をしていた莉奈は、皆が脱線しまくっている間に料理を完成させていた。
元より簡単なおつまみだっただけに、工程がそんなになかったから余計だ。
「つけダレは別添えか」
「2種類のタレを用意したからね」
1種類なら、かけて出してもイイかもしれない。
「え? それなんて料理?」
あっという間に出来た料理に、驚いている料理人が訊いてきた。
リック料理長は、味見用にと大皿にも用意していた莉奈の盛り付けに、感心していた。
フェリクス王のは長細い平皿に、少し重ねる様に1列に並べたけど、大皿は真ん中にタレの小皿を中心にして、リヴァイアサンのタタキを丸くキレイに盛っていたからだ。
ベビーリーフを先にひいたから、野に咲く花のようでオシャレになった。上出来ではなかろうか。
「リヴァイアサンのタタキ」
「タタキ? タタキって何」
「う〜ん? 本来なら塩とかタレを付けて、身を叩いて味を馴染ませるから"タタキ"と言うんだけど……叩いてないから、コレはリヴァイアサンの炙りかな?」
カツオのタタキは、それが由来だった気がする。
だから、これは厳密に言うと、叩く工程をしていないから、炙りが正解なのかもしれない。
「つけダレが2種類あるけど?」
「黒い方は、醤油にライムを少し入れたタレ。そっちは見たまんま、粒マスタードに醤油を入れたタレ。後はホースラディッシュを添えてみた。リヴァイアサンはクセがないから付けなかったけど、ニンニク醤油でも美味しいよ?」
昔の人の知恵で、食中毒を防ぐためにニンニクが薬味に付いているそうだけど、臭み消しにもなるし美味しいから一石三鳥だよね。




