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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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502 解禁とは?



 ーーパンケーキを食べ終えた莉奈は。




 主に後は煮るだけなので、リック料理長達に任せて、莉奈は銀海宮に戻る事にした。

 途中、竜の広場で碧空の君が寛いでいたので、ミルクワームのお礼を言うついでに、今後は遠慮しておくと伝えておいた。

 好物をくれるのはありがたいけど、莉奈にはどうしてもアレは食べられない。竜が食べているのだから、【鑑定】で視たら間違いなく"食用"と出そうだが、見た目が無理である。

 食用と表記されても、気分は向上しないので視ようと思わない。絶品なんか出た日には、微妙な気分になりそうだ。

 シュゼル皇子とエギエディルス皇子が、スライムを拒絶するのも同じ感覚なのかもしれない。莉奈的には、黒スライムは是非食べてみて欲しいのだが。




「あ」

 シュゼル皇子かエギエディルス皇子がいるであろう所へ向かう途中、莉奈はフと思った。

 弟皇子2人にデザートは用意したが、フェリクス王には何も用意していないなと。

 甘味などいらないのは重々承知しているが、手ぶらか手ぶらでないかで気分が違う。万が一「俺には?」と聞かれた時、何もありませんでは睨まれそうだ。

 オヤツ=甘い物ではない。

 間食的なちょっとした料理でもいい。

 とりあえず、何か作った方がいいかなと、莉奈は銀海宮の厨房に向かう事にした。




「あれ? リナだけ?」

「料理長と副料理長は?」

 莉奈が厨房に顔を出したら、皆が一斉にアレと言う表情をしていた。

 莉奈が何か作ると2人は白竜宮に行ったのに、戻って来たのは莉奈だけだからだ。

「もう少ししたら戻って来るよ」

 確証はないけど後は煮るだけだから、リリアン以外なら任せても大丈夫だろう。

「こっちでも何か作るのか?」

 白竜宮で何か作るとは聞いていたが、こっちでもとは聞いてなかった。

 新作は嬉しいけど、アッチコッチと大変では? と料理人達が珍しく労う様子を見せていた。

「陛下用に何かね?」

 まさか、弟皇子にはパンケーキを用意したから、とはここでは言えないけど。

「「「陛下用」」」

 莉奈が何の意味もなくそう言ったら、何故か厨房が一気にザワめいた。

 陛下と聞いただけで、緊張したのかと思ったら違った。

「カクテル!! カクテルだな!?」

「何が必要だ。リナ!!」

「……」

 あぁ、そうなっちゃう感じですか。

 陛下の為の料理=酒。

 皇子の為の料理=甘味。

 この方程式は鉄則の様だ。

 色めき立つ料理人達の目が、爛々としていて莉奈は頬が引き攣った。今さら、違うよと言えない雰囲気になってしまった。




 こうなったら、カクテルを作る事にしますか。

 フェリクス王はおつまみ系より、お酒の方が喜びそうだ。莉奈はそう思い立つと酒倉に向かって行った。




 厨房に併設されている酒倉は、半地下で肌寒いくらいだった。

 初めて来た時は半地下だから肌寒いのかと思っていたが、天井に魔石が埋め込まれている。氷の魔石を上手く使って、お酒の保存に最適な温度にしてあるのだろう。

「何にしようかねぇ」

 増えに増えたお酒の種類に、莉奈は苦笑いを漏らしていた。

 カクテルを教えたら、お酒の種類が半端ないくらいに増えたのだ。莉奈の知らないお酒もかなりある。

 【鑑定】がなかったら、分からないお酒ばかりだ。

 何のカクテルを作ろうか考えた時、知らないカクテルのレシピまで"記憶"のように頭に浮かんでくるのだから、完全に何か技能スキルがあるなと思う。

 しかも、大抵の料理やカクテルのレシピは、莉奈の家にあったレシピ本や、TVで見た事のある料理が多い気がする。

 技能スキルを使っている感覚も、違和感もなく頭の中に浮かぶので、今までまったく気付かなかった。

 ただ、その一点を意識して使おうとすると、頭がクラクラするから厄介だ。

 よく覚えていない料理は、曖昧でうろ覚えの事が多いから技能スキルを使いたいが、それで具合が悪くなるのはちょっと。

 【鑑定】と違いすぐに魔力酔いを起こすので、この技能スキルは使える様で使えない。

 どうにかならないかなと、莉奈は思うのだった。

 



「何しゃがんでんだ?」

 莉奈がしゃがんでいたら、頭の上から声が聞こえた。

 どうやら料理人のダニーが、カクテル作りを手伝おうと来た様だった。

「ちょっと、魔力酔い」

 船酔いみたいなノリで、"魔力酔い"だなんて言葉を使う日がこようとは。莉奈は自分で言っていて、笑いが漏れてしまった。

「え? 大丈夫か?」

「大丈夫」

 瞬間移動テレポートの間で酔った時の方が、酔いは激しかったからね。この程度なら、すぐに治る。




「あ、白ワインだ」

 莉奈は立ち上がろうとした時、たまたま目に入った棚には、大量の白ワインが並んでいた。ここだけでこの本数があるなら、きっと違う場所にも保管してあるのだろう。

 ラベルは同じだから、同じ酒造元のワインだ。

「スゴい量だね。白ワイン」

「スパーニュー地方の白ワインが、ついこの間、解禁したからな」

「解禁?」

「そう、解禁」

 そう嬉しそうに話すダニーの横で、莉奈は解禁とは何だろうと小首を傾げた。

 両親は、解禁日になるとワインを買いに行っていたが、何故か訊いた事があったかな? と考えていた。

 そもそもワインなんて、年がら年中お酒を取り扱う店にはあった気がする。なので、解禁と言われても莉奈にはよく分からなかった。




「え? でも、白ワインなんていつもあったよね?」

 多種のお酒が並んでいるが、赤ワイン同様に白ワインはいつも酒倉に常備してあったハズだ。

「それは、スパーニュー地方じゃないワインな」

「どゆこと?」

 ダニーにそう言われても、莉奈にはサッパリ分からない。

 莉奈の首が、さらに倒れたのを見たダニーは苦笑いしていた。

「製造方法とか色々と厳しい産地は、酒の品質を下げないために"解禁日"が設定されてるんだよ。早い物勝ち……いわゆる抜け駆け防止策ってヤツ?」

「ん? 出来たら売るじゃダメなの?」

「俺もよく分からないけど……酒ってある程度時間が掛かるだろ? だから、早く出来たら売るってなると、競争みたいになっちゃって、不出来なワインが多く出回ったらしいんだよ」

「なるほど?」

「結果、真面目に造ってるヤツが割りを食った挙句、あの地方のワインは不味いって評判も落ちたらしい。で、怒った領地の主がとうとう法令を定めたって訳。解禁するまで、今年の分は勝手に売るなってな」

「へぇ、品質保持のための設定って訳か」

「そう。だから、このスパーニュー産の白ワインは外れがないんだよ」

 基本的に、王宮に入ってくる酒や食材の品質は当然高い。

 だが、このスパーニュー産の白ワインは、領地主のお墨付きがあるので間違いない様だった。

 まぁ、品質保証と信頼性が高い分、悪徳業者がラベルを張り替えたり、産地偽装したりと違う問題はありそうだけど。









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