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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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475 何故、真珠姫はリナを攫ったのだろう



「「「無事のご帰還お待ちしていました!!」」」

 厨房で大人しくするならと許可を得て、回復した莉奈が厨房に戻ると、マテウス副料理長を筆頭に、料理人達が笑いながら敬礼してきた。

 真珠姫に攫われたのを、ラナ女官長かモニカ辺りに聞いていたのだろう。

「あはは」

 揶揄われた莉奈は、怒るより乾いた笑いしか出ない。もう何とでも言ってくれ。

「何したの?」

「分からん」

 料理人に何をしたら攫われるのだと訊かれたが、莉奈はまったく分からなかった。むしろ逆に聞きたい。

 怒りに任せて蹴る前に、真珠姫から事情を訊くべきだった。

 例え理不尽な理由でも、何故そんな事態になったのかは気になる。シュゼル皇子が訊いてくれるみたいだから、待つしかないか。



「リナ、何作るの?」

 厨房の片隅で寛いでいた莉奈が、お米を研ぎ始めたのでリリアンが訊いてきた。

「夕食はご飯が食べたいなと」

 お米があるとはいえ、皆の主食は基本的にパンである。

 だが莉奈は、ご飯が食べたい今日この頃だった。

「ご飯なら、俺が炊いとこうか?」

「ん? んじゃ、お願い」

 すでに習得したマテウス副料理長が、代わりにとかって出てくれた。

 ありがたい。莉奈はマテウス副料理長に後を任せ、ならばとオカズを作る事にする。

 メインを肉にするか魚にするかとか、副菜は何にするか。

 だけど、1番は汁物を何にするかではなかろうか?

 ご飯に合うのは、やっぱり味噌汁だ。しかし、醤油の実はあったけど、味噌の代わりになるモノがない。

 味噌は味噌として、この世界にあるのだろうか?

 それとも実としてあるのか、それすらも分からない。

 確か、醤油は味噌を造る時の上澄み液が、醤油の原型だと聞いたような覚えがある。それは味噌の上澄み醤油と言って、厳密には醤油と違うけど、味噌と醤油の中間みたいな味で美味しい。

 だが、醤油が醤油として存在していないのなら、味噌はないのかもしれない。

 莉奈がそんな事を考えていると、リック料理長がいそいそと寸胴鍋を持って来た。




「あ、そうそう。リナに味見してもらいたいモノがあるんだ」

「ん?」

「鶏ガラで出汁を取るようになって、ずっと考えてたんだよ。鶏ガラで出来るなら、魚のアラからも取れるんじゃないかなと」

 味見して欲しいモノとは、どうやらスープか出汁のようだ。

 作ってみたんだよと、少し恥ずかしそうにリック料理長が小皿に出汁を取り分け、莉奈に手渡した。

 寸胴鍋を覗いて見た感じからして、和食の出汁の取り方ではなく洋風。鶏ガラを魚のアラに変えて、香草や野菜のクズを使ったスープだ。

 どうかなと言われ、莉奈は早速口にした。

「ん、美味しい」

 魚の旨味の中に、野菜の優しい甘み。多少の魚特有の生臭さはあるが、丁寧に作られた出汁である。

 初めて莉奈の鶏コンソメスープを飲んだ時に、今まで作っていた自分達のは水煮だったと、料理人達は自嘲していたけど……あれは野菜の旨味を引き出した出汁。

 色んな味に親しんだ莉奈には多少物足りなかったが、あれはアレで美味しい野菜スープであった。

 その野菜スープを作っていたリック料理長達なら、スープは得意とする分野だろう。

 それを活かし丁寧な仕事から生まれた、洋風の魚の出汁である。リック料理長の作った魚の出汁を飲みながら、自分のお役御免も近いかなと、莉奈は少しだけ寂しく感じていた。



「でも、なんかちょっと臭みがないかい?」

 何回か試作したのだが、イマイチ魚の生臭さが抜けないのだとリック料理長がため息を吐いていた。

 確かに、一瞬口に含んだ時に生臭さが鼻に抜けたが、それも微々たるもので気にならない。だが、リック料理長は完璧を目指したいのだろう。

「臭みの抜き方は?」

「鶏ガラと同じで熱湯にくぐらせて、良く洗ったよ」

「うん、それでもイイけど……魚から出汁を取る時は、熱湯にくぐらせる前に軽く塩を振って置いておくとイイよ?」

「え? 塩を振って置いておくのか?」

「そう。塩で魚の臭みが浮き上がるから、それを洗ってから水から煮るの」

 魚のアラに塩を振ってバットやボウルに入れておくと、あの生臭さの原因になるモノが水分と一緒に浮いてくる。

 それを洗うかフキンで取ってからやるのと、そのまま調理したモノとでは美味しさが全然違う。たぶん、それをやっていないからかなと莉奈は思った。

「そうか、鶏ガラと調理工程が少し違ったのか」

 あれ程悩んだのに、莉奈に訊けばすぐ改善策を教えてくれる。

 莉奈を追い抜こうと頑張ってはいたが、追い抜く前に並ぶ事が先だと考えを改めたのであった。



「ちなみに、出汁と一口に言っても取り方はいっぱいある」

「え?」

「香草や野菜と一緒に煮るやり方もその一つだけど、野菜を入れない作り方もある。後は、白ワインの代わりにホーニン酒にするとか、材料を生から煮るか焼くか、出汁を取る前の下処理も塩の代わりに酢でやるかでも、味はガラッと変わるよ?」

「「……」」

 一緒に聞いていたマテウス副料理長も、リック料理長同様に固まっていた。

 材料や焼く方法どころか、下処理から色々な方法があったのかと、愕然としていたのだ。

「ちなみに、水から魚介を煮て、塩だけで味付けした汁物は"潮汁うしおじる"って言う」

「「ソウデスカ」」

 莉奈に肩を並べるのは、いつになるのだろうかと、皆はため息も出なかったのだった。









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