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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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47 開祖…?



 まだ、太陽が上り始め空が白み始めた頃、莉奈はいつもの様に王宮の外、庭をランニングしていた。

 ジャージこそないが、替わりに簡単なシャツ、動きやすいズボンを穿いて軽く走っていた。最近、身体が軽くなった気がする。

 鑑定をしながら走り込むおかげで、ただ走るより面白く必然的に気が紛れ続いたのかもしれない。


 そこで最近鑑定をして気付いたのだが、すべてを見たい時は普通に鑑定すればいいし、必要な情報だけでいい時は、込める魔力を弱めると部分的にだけ表記される "部分鑑定" が出来るみたいだった。

 ついでに云うとわからない部分、目を合わせダブルクリックするみたいに片目で瞬きをすると、物によって詳しく分かる物もある。意外と便利だった。


 ただ "鑑定" について、人によって違うから訊いてもわからない事が多いし、これだって目にゴミが入らなければ気付かなかった。ひょっとしたら、まだ何かあるのかもしれない。不思議な技能(スキル)だ。

 と、いう事で自分が痩せたか視てみる。



    

  〈状態〉

   健康…………

    ……だがまだ、ぽっちゃり。



「……チッ」

 莉奈は、舌打ちした。ダイエットによくある停滞期か……。

 痩せたとは思うが、微妙らしい。

 まぁ、でも体育座りが普通に出来る様にはなったし身体は軽い。ピーク時は体育座りがキツくて泣けた。足先が見えるからいいかと思ってた時期はなんだったのか。今は痩せる事が楽しい。



「それは、ともかくとして、魔法鞄(マジックバック)が欲しいな」

 と呟く。ランニングついでに鑑定をしていて "ククベリー" なる、木の実を見つけていたのだ。その辺に普通に生えている背の低い木になっていて、黒く熟すのを待っていたのだ。やっと黒く熟したので、今 走り回りながら採っていた。

 味に関しては木苺と似ていて、甘酸っぱくて美味だった。

 袋を持っては来たが、全然足りない。まだまだそこらじゅうになっている。ナゼ採らないのか、勿体無いとあるだけ採っていた。



 ん? まさか "神木" とか "神実" とか云われてて、採ったらヤバイやつとか?



 ……まっ、いっか!!



 莉奈は考えるのをヤメた。




 ◇◇◇




「……エド。暇なの?」

 いつもの通り、汗を流し着替えて部屋に戻ると、エギエディルス皇子がソファに座っていた。



 この光景にも慣れたけど、私一応乙女なんですけど?

 その乙女の部屋に、家主の許可なくなんで入れるかな?

 エドはもう、私の旦那かね?

 普通、先触れとかあるんじゃないのかな。



 とか、色々考え目を細めていたら

「お前、朝から風呂かよ」

 ホカホカの莉奈を見て、呆れた様に言ってきた。勝手に部屋に来といて偉そうに言うエギエディルス皇子にイラッとした。だから

「……エド、くっさ~!!」

 と大袈裟に鼻を詰まんで手で煽って見せた。

「ええぇ~~~!? マジかよ!?」

 自分の服の匂いを、慌てて嗅ぐエギエディルス皇子。

「モニカ、お茶ちょうだい?」

 それを横目にガン無視してやった莉奈。

「リナ……エギエディルス殿下、リナのウソですよ?」

 真に受けているエギエディルス皇子に苦笑しつつ、莉奈を咎めるラナ女官長。モニカは吹き出すのを我慢しながら、莉奈に紅茶を淹れた。

「なっ! ウソかよ!!」

 そんなくだらないウソに引っ掛かり、衝撃を受けていた。

「本当に臭かったら、出禁にするし」

「お前……ホント大概な……」

 皇子である自分に対する態度に、呆れ笑う。

「……まぁ、いいけど」



 …………いいんかい!!



 と、ラナ、モニカは突っ込みを入れていた。



「そんな事より、色々訊きたい事がある」

 テーブルに肘をのせ、エギエディルス皇子は面白そうに言った。

「ん? なにかな?」

「まず、ここで宗教開くなら、兄上達の許可は取ってからにしとけ?」

「…………は……?」

 莉奈は、瞠目した。



 …………宗教……? 開く?



 ……そんなもの、開くつもりも開いたつもりもないんだけど? 



 ……え? どゆことかな?



 莉奈が首を捻ってると、エギエディルス皇子は面白そうに笑う。

「お前、昨日……食堂で……開宗? したらしいな」

「…………………………………………」



 ……食堂……?



「「リナ様~」」

「「フレンチトーストを~」」

「「リナ様~」」

「「フレンチトーストを~」」

 ラナとモニカが笑いながら、昨日のマネをして見せる。



 あ・れ・か・!!



「開いてないよ……」

 なんで開いた事になるかな……。

 あ~、拝んでる様に見えたからか……?



 まだ1日が始まったばかりなのに、莉奈はどっと疲れが出た。



「大変だったものねぇ~?」

 他人事なのでクスクスと笑うラナ。ラナは旦那のリックと仲良く食べてたから楽しかったのだろうけど、莉奈は大変だった。

 結局、あれから人だかりが出来て、第二回ジャンケン大会を開き、数名の勝者にチーズオムレツを渡すまで帰る事が出来なかったのだ。

「ラナは楽しそうでなにより……」

「フレンチトーストもチーズオムレツも、美味しかったわよ?」

 ラナもモニカもジャンケンに参加して、両者とも勝ったらしかった。そりゃ楽しいでしょうよ……と莉奈は怨めしそうに睨む。

「熱々の内にどうぞ?」

 とモニカが紅茶を置き、イスを引いてくれた。

「……はぁ」

 ため息を、紅茶で洗い流す莉奈だった。







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