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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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457 か弱き乙女とは?



「城壁の上も見晴らしがいいね」

 山の天辺にある城だけあって、どこからも大抵見晴らしが良い。

 良く見たら城壁の周り数十mは、魔物の侵入を防ぐため木が生えていなかった。城を建設した当初にしっかり整地した様だ。

 しかし、城壁は王城をほぼグルリと囲ってあるから、とにかく長い。

 そこを昼夜問わず警備兵達が、魔物が入らない様に目を光らせている。

 今は、フェリクス王がいるから暇そうだけど。戦う感覚を鈍らせないために、地方へ派遣される事も多々あるとか。

 それだけでなく、暇潰しに竜が相手をしてくれる事もあるらしい。

 竜の広場は、時には兵の鍛練の場として使われているみたいだ。



「ところで、あのデロっとしてる生き物は何?」

 城壁の近くに、一見水溜りみたいに見える透明な生き物がいた。

 初めは水溜りかと莉奈は思ったのだが、土が湿ってないから水溜りではないのだろう。

「"スライム"だな」

 ゲオルグ師団長が顎を撫でながら教えてくれた。

 そこにいるのは無色透明のブヨブヨとした魔物、スライムだった。

 フェリクス王の恐慌が効かないのか、聖樹の力がまだ及んでないのか、そもそもスライムには関係ないのか分からないが、スライムがいたのである。

「リナ? 何をニヤついているんだ?」

 初めて見たスライムに思わず口を綻ばせていると、それに気付いた警備兵が眉根を寄せていた。

 まさか、魔物を見て喜んでいるとは思わなかったらしい。




「え? 面白いなと?」

「面白いか?」

 ゲオルグ師団長達は首を傾げていた。

 小さい頃、家に玩具のスライムがあったが、色はともかく似ている。

 家にあったのは、確か緑色だった。だけど、莉奈が飽きて遊ばなくなると、父がパソコンのキーボードの埃取りに使っていた気がする。

 結局、ゴミとか混ざって薄汚れて捨てたんだっけ。

「スライムっていえば、家の窓際にあったサボテンの鉢は、元スライム入れだったような」

 莉奈の部屋の窓際に飾ってある小さなサボテン。

 その鉢が、以前スライムの玩具が入っていたバケツだった気がする。

 母がバケツは捨てないで、底に穴を開けてサボテンの鉢にしてくれた。それを今、玩具ではない魔物のスライムを見て思い出したのだ。


「は? リナ、お前。スライムをバケツで飼ってたのかよ??」

「怖っ!」

 莉奈はあまりの懐かしさに呟いていたらしく、皆が怪訝な表情で聞いていた。

 ゴミ箱やトイレに入っているのは、襲わない様に培養したスライムだ。

 だから、普通なら莉奈もそのスライムをバケツに入れていたのかと、思ってもいいのだが……何故か皆は、培養スライムだと微塵も考えなかった。

 むしろ、魔物を飼っていたのだと、勝手に勘違いしていた。

 莉奈の世界に魔物なんて、いないのにも関わらずである。

「え? いやいやいや、スライムなんか飼ってないから。玩具だよ玩具」

「はぁ!?」

「お、お前、スライムを玩具代わりにしてたのかよ!?」

「うっわ、スライムを玩具にする子供怖っ!!」

「……」

 なんで、スライムを玩具にしていた子供だと思われるかな?

 莉奈は困惑の表情を浮かべていた。

「違うってば。スライムが玩具じゃなくて、玩具のスライムなんだよ!!」

 説明したところで、玩具のスライムの存在など知らない皆は、さらに驚愕の表情を浮かべる。

「玩具の」

「スライム」

「魔物は玩具」

「最恐の子供だ」

 玩具"の"だと言ったにも関わらず、莉奈がスライムを玩具にしていたとすり替わっていた。

 莉奈はこの時、自分のいた世界にはスライムに"似せた玩具"があると、説明すれば良かったのだ。それを、後で気付いたのだが……読んで字の如く後の祭りだった。

 人の噂は、こうやって歪曲して広まるのだろう。

 莉奈は人って怖いなと、感じた今日この頃だった。




 ◇◇◇




「アレ、近くで見たいんだけど危ない?」

 莉奈は遠目でしか見れないスライムを指差した。

 スライムはゲームではもれなく雑魚キャラだけど、ここは現実世界だ。舐め腐って怪我でもしたら、皆に迷惑を掛けるだけである。

「危なくはないけど」

「魔物だから油断は禁物……まぁアレは色ナシだから、子供でも倒せるよ」

 誰となく訊いたら、近くの警備兵が詳しく教えてくれた。

「色ナシ?」

「あぁ、スライムは色んな種類がいるんだよ。例えば赤は溶解液を吐き出して攻撃してくるし、青は凍結液」

「黄色は酸。紫は毒だったっけか」

「色ナシはさほど害はない。体液を飛ばすか、顔に纏わり付いて窒息させに来るぐらいだな」

「あ、だけど、アレの体液はものすっげぇ臭ぇ」

 洗っても中々悪臭が落ちないのだと、皆は笑っていた。

 小さい頃に皆は遊んだ経験があるらしく、郊外育ちの男なら1度は引っかけられた事がある様である。



「ふぅん」

 見目はプルプルして可愛いが、やはり魔物。剥がせなければ窒息させられる事もあるのか。

 莉奈は必要あるか分からない知識を一つ手に入れた。



「戦いたいなら王城外に出してやろうか?」

「なんで戦う方向なんだよ」

 興味深げに見ていれば、ゲオルグ師団長がそんな事を言ったのだ。

 莉奈はどうして戦う話になるのか、問いただしたかった。

「「「だってお前"竜騎士"じゃん」」」

「違う!!」

 碧空の君という番を持った事で、莉奈の竜騎士団入団はすでに確定されていた様だった。

 だが、そんな地位ものになった覚えのない莉奈は断固拒否する。

 それではまるで、馬に乗れたから騎馬隊に入隊するのと同じではないか。

「私はか弱き乙女なんだよ」

 と少し怒って見せれば、皆は呆れた様子でこう返してきた。

「「「世間のか弱き乙女に謝れ!!」」」

 どう転んでも、莉奈はか弱き乙女だと認定してくれないみたいである。





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