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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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411 いない所でディスられる



 あれから、炭酸水をたっぷりと貰った莉奈は、夕食に炭酸水を使ったカクテルとジュースを出す約束をして食堂を後にした。

 権力争いで啀み合う王族はいそうだけど、平民みたいなしょうもないケンカをする王族って……。

 でも、それだけ仲が良いって証拠だし楽しいからイイかな。

 莉奈はフェリクス王とシュゼル皇子こと宰相のやり取りを思い出し、笑っていたのだった。





 ◇◇◇





 食事の終わった食堂では、執事長イベール以外が一旦下げられていた。

 侍女達は、我々に聞かせたくない話があると、容易に理解した。ある程度片付けていて、後はティーセットがあるだけ。残りは執事長イベールが片付ける事となり、侍女達は頭を下げ他の業務に戻って行ったのであった。



 侍女達を下げたのはシュゼル皇子である。

 そのシュゼル皇子に、フェリクス王が視線で促した。




「"ホットエナジー''」

 話の前後を飛ばし、シュゼル皇子はのんびりとした口調でその単語だけを口にした。

 フェリクス王は初めて聞く言葉に、軽く眉根を寄せた。

「基礎代謝機能を上げ、身体の中から温める飲み物らしいですよ?」

「それが何だよ」

 長弟の見えない話に、ますますフェリクス王は眉根を寄せていた。

 唐突過ぎて、シュゼル皇子が何を言いたいのか理解出来ないのだ。

「それを飲むと極寒の地でも、しばらく普段通りに活動出来るとか」

「……」

 話の意図が見えないフェリクス王は目を眇め、シュゼル皇子に主旨を話せとさらに促した。



「兄上が用意したこの"炭酸水"から、それが出来るみたいですね」

 そう言ってシュゼル皇子は、一つだけテーブルに出していた炭酸水を面白そうに見ていた。

「「あ゛?」」

 シュゼル皇子がほのほのと突拍子もない話をすれば、兄王と弟がどういう事だとシュゼル皇子を見た。





 【天然の炭酸水】

 ヴァルタール皇国の王城の一角で汲んだ湧き水。

 炭酸ガスを含む強炭酸水。 



 〈用途〉

 岩石に閉じ込められた炭酸ガスの層を通り抜けて出来た湧き水。

 飲むと血流が良くなり、代謝がアップする効果に期待出来る。

 これにカイエンペッパーとポーションを特別な配合で混ぜれば、ホットエナジーが出来る。



 〈その他〉

 飲料水である。





「「……」」

 シュゼル皇子が【鑑定】結果を口頭で説明すれば、フェリクス王とエギエディルス皇子は目を見張っていた。

 この炭酸水と何かを配合すると、そんな効果があると想像していなかったし、手にした莉奈も言っていなかったからだ。



「リナは、魔法を使う事を無意識に制御していますからね。この炭酸水も軽く【鑑定】で視ただけで、おそらく効力など知らないのでしょう」

 莉奈は簡単な【鑑定】を掛けただけだと、シュゼル皇子は経験上分かっていたのである。

「制御か」

 フェリクス王は誰にも聞こえないくらいに小さく呟いていた。

 それは、家族の事が原因だと理解していた。吹っ切れたと口や行動に起こしていても、心の傷はそんな簡単に消えるモノではない。

 使えたらと思う心が、莉奈が魔法を使うたびに無意識に影響を与え、制御しているのだろう。

 あんな事故に遭えば、躊躇って当たり前である。

 弟のエギエディルスより年上とはいえ、身寄りもなくよく今まで壊れなかったなと、フェリクス王はため息を吐いた。




 家族の事故。

 そして、異世界への転移。




 普通なら、もう心が折れ壊れてしまってもいい出来事である。





「"ホットエナジー"があるなら、逆の"クーラーエナジー"もありそうですね」

 フェリクス王がそんな事を考えていた頃、炭酸水を見ていたシュゼル皇子は、楽しそうに言った。

「確かに」

 そうだなと思ったエギエディルス皇子が、顎に手を置き頷いていた。

 大抵のモノには、そのモノに対して対義するモノがある。

 なら、この炭酸水から作れるというホットエナジーとやらも、反対の使い方をするクーラーエナジーがありそうだ。



「エディ」

「あ?」

「リナをしっかり見張ってろ」

 フェリクス王が微苦笑しながら、そんな事を言うものだから、エギエディルス皇子は一瞬驚き笑い返した。

「やらかすからか?」

 莉奈は、【鑑定】を使わずとも【調合】の技能スキルがある。

 オマケに怖いもの知らずな性格のせいか馬鹿なのか、何も考えずに行動を起こす事もしばしば。

 なので、やらかさない様に見張れと言っているのかと思ったのだ。

「それはとりあえずいい。問題はリナの今の価値だ」

「価値?」

「料理に関して言えば、早々に国全土に広めてしまえば、リナの価値は低くなる。だが……」

「【鑑定】と【調合】、それとリナの持つ知識に価値がある……ですね?」

「あぁ」

 フェリクス王の言葉を、シュゼル皇子が繋いだ。

 この食生活が乏しい世界に、莉奈の持つ料理の知識は膨大で価値がある。だが、料理はやり方を教えてしまえば、ある程度なら習得可能だ。

 それ故に今は重宝されている莉奈も、皆が作れる様になれば商品価値は下がるだろう。

 問題は、他の技能スキルである。

 ただでさえ【鑑定】の魔法を持つ者は希少。なのに、莉奈は詳しく鑑定出来るどころか、独自の鑑定能力を持っている。

 オマケに、それをフルに活かせる【調合】まで持ち合わせているし、異世界の知識も踏まえ何かを生み出す可能性を秘めていた。



 他国からしたら、莉奈の能力は喉から手が出る程に欲しいだろう。

 聖女ではなかったが、色々と利用価値がある少女なのである。



 となれば、需要と供給が合致し、拉致される危険もあるのだ。




「見張っとく」

 "見張れ"ではなく"護れ"という事なのだろう。

 兄王の言い方にエギエディルス皇子は、思わず笑ってしまった。

 王城にいる限り心配はないが、何事にも100%はない。ならば、自分も出来る限り側にいようと心に留めておく。




竜殺し(ドラゴンキラー)は、ただでは拐われないと思いますが?」

 いや、むしろ返り討ちに遭いそうだと、執事長イベールが冷淡に言えば、確かにとフェリクス王達は笑うのであった。










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