表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

389/676

389 カレーといえば"タコミン"



 厨房に戻ると、食堂の片隅でラナ女官長と侍女のモニカがまったりしている姿が見えた。

 今日は早番なのか半休なのか、仕事には戻らない様だ。



「あ、リナ。プリンすごく美味しかったわよ」

「カボチャもプリンになるのね。皮まで美味しかった」

 ラナ女官長とモニカが嬉しそうにお礼と感想を言ってくれた。

 気に入ってくれた様で何よりだ。

 もしかしなくても、お礼を言うために2人は律儀にも待っていてくれたのかなと、莉奈は思った。



「リナー。あの玉ねぎどうすりゃイイ?」

 ラナ女官長と話をしていると、厨房から声が掛かった。

「あ、忘れるところだった」

 やる事がたくさんあると、何か忘れるよね。

 莉奈は言われて、カレーの事を思い出したのだった。

「なんで忘れるかな〜」

 その返答には、皆は笑っていた。



「えっと、何をするんだっけ?」

 飴色になった玉ねぎの前で、莉奈は大きく首を傾げた。

 一旦休憩したり違う事をすると、作業がどこまでだったかスッポリ頭から抜ける。

 その様子に、リック料理長が隣で笑っていた。

「カレーとやらを作るんだろう?」

「いや、まぁ、そうなんだけど、香辛料スパイスは何を入れるんだっけ? タバ、タバ……」

「タバ?」

「あ、違う。カレーは"タコミン"。ターメリック、コリアンダー……クミンで、タコミンだ」

「ぷっ! タコ……ミン」

「カレーはタコミンって、なんだよ」

「どんな覚え方だよ」

 近くで聞いていた料理人が、笑ったり思わずツッコミを入れていた。

 相変わらず、莉奈は面白い事を言うと。

 でも、"タコミン"なんて今言われたら、きっとカレーを作るたびに思い出しそうだ。



「あ」

「「「あ?」」」

 今度は何なのだと、皆は莉奈の言動から目が離せなかった。

「その前にトマトを入れて炒めるんだった」

 香辛料スパイス魔法鞄マジックバッグから取り出そうとした莉奈は、肝心なモノを入れていない事に気付いた。

 玉ねぎやニンニクを炒めただけではダメだったのだ。

「え? トマトも入れんの?」

「丸ごと? それとも切るの?」

 何にどう使うかも大量か少量かは知らないが、入れるのなら手伝おうかと料理人達が訊いた。

「ザックリ切る」

 どうせ炒めれば潰れて、跡形もなくなるし。

 一口大くらいのザックリとでイイと、皆に説明する。

「いくつ切る?」

 まぁ、次の疑問はそうくるよね。

 莉奈は、玉ねぎをいくつ切って貰ったかな? と思い出しながら口にした。

「えっと、玉ねぎと同じ数?」

「「「え??」」」

「玉ねぎと同じ数」

「「「……えぇーーーーっ!?」」」

 一瞬、思考停止した料理人達が、数の多さに再び悲鳴を上げた。

 玉ねぎ地獄から解放されたと思ったら、次はトマト地獄だった。スライスと炒めるコンボではないだけ、ありがたいのかもしれないが、大変な作業だなと空笑いが漏れていた。



「美味しい物は、手間暇が掛かるんだよ」

 と莉奈が笑えば、料理人達は諦めた様に肩をガックリと落としたのであった。




 ◇◇◇




「お腹がぷくぷくしてきた皆さんは〜、今日も元気に味見する〜、ポチャポチャ〜ぷくぷくぷく〜ランランラン」




「「「…………」」」




 大鍋にある飴色玉ねぎに、ザックリ切ったトマトを投入した莉奈は、大きな木ベラを使って楽しそうに炒めていた。

 その自作らしい歌がまた、料理人達の心に響い……たりはせず、刺さった。いや、抉りに抉った。

 皆の太ましくなってきたお腹に、互いの顔を見合わせる事はなく腹を見て、お前もかと悲しい笑いが漏れる。

 基本的に、莉奈は食べたい食べ物を、食べたい時に好きな様に作っている。となれば、ガッツリ系ハイカロリーが多い訳で……。

 リック料理長を筆頭に、順調にお腹周りが太ましく育っていた。



「耳が痛い」

「やる気が出ない」

「お腹が痛い」

「「「リナ〜、ヤメて〜!!」」」



 莉奈の自作曲はものスゴく不評を買ったのは、言うまでもなかった。




 しかし、カレーの素であるこの炒める作業。玉ねぎ炒めもツライけど、トマトを入れてからもツライ。

 トマトの水分が飛んで、ペースト状になるまで炒めるのだけど……人力はかなりエグいなと莉奈はボヤいていた。

「腕が地味に疲れる」

 だがこれは、ある意味ダイエットにイイかも。

 なんて、莉奈が呟けば……太ましく育っている女子達が、こぞって交代をかって出た。

 おかげで、莉奈に順番が回る事はなくなった。




「リナ〜、こんな感じでどう?」

 料理人に呼ばれて見に行けば、トマトの水分はかなりなくなり、ねっとりペースト状になっていた。

「うん、イイ感じ」

 なら、次の作業に移ろうと鼻と口をスカーフで隠す様にして、頭の後ろで縛った。

「え?」

「何してるの?」

「悪リナだ」

 途端に料理人達から、不審な表情でチラチラと見られた。

 また、何かやらかすつもりなのかと、構えている料理人もいる。全くもって失礼である。



 莉奈は、そんな料理人達を横目に、ターメリック、コリアンダー、クミンの3種類の香辛料スパイスプラス、塩をドバドバと投入する。

「ブヘッ!!」

「ゴホッゴホッ」

 気になって見に来た料理人達が、もれなく咽せた。

 それもそうだ。何キロとある香辛料スパイスを大量投入すれば、粉は舞い上がる訳で、粘膜を刺激しまくりだ。

 だから莉奈は、出来るだけ入らない様にスカーフで塞いだのである。

「粉を入れるなら先に言ってよぉ〜」

 一番間近で見ていたリリアンが涙目になっていた。

 確かにカレーに香辛料スパイスは大量に入れるから、ものスゴく舞い上がる。吸い込み過ぎれば、呼吸困難にもなるから気を付けた方が良いよね。

「粉を入れたよ〜」

「「「まさかの事後報告!!」」」

 料理人達は、ツッコミを入れながら莉奈から離れて行った。




「しかし、スゴい匂いだね。なんか、こう不思議な?」

 リック料理長が鼻をスンスンとさせながら、莉奈の様子を見に来た。

 カレーの匂いって堪らないよね?

 例え様のない独特なスパイシーな香り。店先や近隣の住宅から香ってくると、何故か無性に食べたくなる不思議な香りだ。

 その香辛料スパイスを、これだけ大量に炒めれば、厨房のみならず食堂や王宮にカレーの匂いが充満している事だろう。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ