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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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383 ガーリックライス



「え? 今、食べないの?」

 莉奈が出来上がったガーリック炒飯を、お皿に盛り魔法鞄マジックバッグにしまったので、誰かが驚いていた。

 ここで食べないのか、それとも後で食べるのか。

「これだけじゃもの足りないから、鶏肉を焼こうかと」

 莉奈がそう言えば、返答の代わりに生唾を飲む音がした。



 莉奈は冷蔵庫から鶏もも肉を2枚貰うと、少し厚みのある部分に切れ目を入れ始めた。

「鶏肉の厚みを均一にするのか」

「うん……というか、薄くしたい」

 リック料理長が昼食の準備をしながら、莉奈をチラチラと見ていた。

 勉強家な彼は、莉奈の些細な事も見逃さないようにしている。

「リックさん。見ているのはいいけど、大した事しないよ?」

「大した事をしていないと思っているの、リナだけだし」

「えぇ〜? でも薄く広げてただ焼くだけだよ?」

 なんなら、味付けも塩胡椒のシンプルなモノである。

 見られているのが恥ずかしいくらいに何もしない。



「見ておいて損はない」

 リック料理長が真剣な目をしていた。

 うん? 真面目過ぎませんか?



「えっと、塩胡椒した鶏もも肉の皮を下にして、そのまま熱したフライパンに入れる。で、フライパンよりサイズの小さいフタで押し付けて焼く」

 莉奈は鍋のフタを鶏肉に押し付けて焼き始めた。

 家でやる時は木ベラで力強く押し付けて焼いていたから、脂がコンロや壁に飛ぶから掃除が面倒くさかった。

 おまけに腕や顔にも飛んで来て熱かったんだけど、フタでやると軽減されていい。



「押し付けるのか」

「皮をカリッカリにしたいからね」

 要は鶏皮が浮かない様に押し付けているのだ。

 押し付けていると、鶏肉が何すんだと言ってるみたいにキュウキュウと音が鳴る。

 しばらくして、香ばしい匂いがしてたら少し皮を見て、キツネ色というよりタヌキ色になっていたらひっくり返す。

「イイ感じ」

 莉奈は思わず声が漏れた。

 見るからにカリッ……いや、パリパリしてそうな良い色になっている。

「そっちは押し付けないのかい?」

「うん。せっかくの皮が潰れちゃうから」

 リック料理長が鼻をスンスンさせていた。

 鶏肉の皮が焼ける匂いって、香ばしくて堪らないよね。

 皮目を押し付けている間に、反対側もほとんど火が通るから、軽く焼く程度で大丈夫。

 反対側は押し付けない。押し付けるとせっかくパリッとさせた皮目が台無しになってしまうのだ。



「さっ、後は一口大に切って、さっきのガーリックライスに載せれば完成」

 焼き上がったカリッカリの鶏肉を、包丁でザクザク切って、先程 魔法鞄マジックバッグにしまったガーリックライスにドカンと載せた。

 贅沢なガーリックライスに仕上がったのである。

 香味野菜を載せてもイイけど、今日はコレで完成だ。



「一口ずつもないけど、残りはどうぞ」

 2皿のガーリックライスを皆に提供し、莉奈は早い昼食にする事にした。

 お米自体はあるからいくらでも作れるが、ガーリックライスの為にわざわざ炊くかは別の話だ。しかも、昼食はすでに完成しかかっている。

 料理人は自分達だけのために作るか、悩ましいところだろう。



「アレ? こんな所にテーブルとイスがある」

 いつも通り、スライムのゴミ箱の上で食べようと考えていたら、窓際の隅に小さいテーブルとイスが2脚置いてあったのだ。

「お前がいつもゴミ箱の上なんかで食うから、用意したんだよ」

 マテウス副料理長が苦笑いしていた。

 真隣に食堂があるのに、何故かココで食べる莉奈のために用意したらしかった。

 誰かが来て、変な注目を浴びたくないのと、寂しいのだと皆はなんとなく気付いていた。だからといって、ゴミ箱はいかがかと思い用意したのだ。

「あら、まぁ、それはスミマセン。お手数をおかけしますします」

 頭をヘコヘコと下げて、そのテーブルに向かう莉奈に皆は吹き出していた。

 "します"が1つ多いし、莉奈の言動が可笑し過ぎる。



「いただきます」

 莉奈は両手を合わせた。

 ガーリックライスのニンニクの香り。焼き立てで香ばしい鶏肉の匂い。もう、すでに堪らない。

 ついでに用意した玄米茶で、まずは口を潤す。

「はぁ」

 懐かしさで心が沁みわたる。

 そこからの、カリッカリの鶏肉を一切れ。

 押し付けて焼いたから、皮がお煎餅みたいにパリッパリだ。香ばしさと、食感が堪らん。



「うっま!! 鶏皮、うっま」

「あんなに押し付けて焼いたらどうなるかと思ってたけど、鶏皮がパリパリして美味し〜い!!」

「白飯より、俺、このガーリックライスがイイ!! ニンニクとバターが堪らん旨さだな」

「お米が旨味を吸ってるから、すっごい美味しい」

「鶏皮があまり好きじゃなかったけど、これは美味しいな」

 小皿に取り分け、料理人達が珍しく仲良く味見をしていた。

 やはり、慣れないただの白飯より、味が付いた方がとっつき易いみたいだ。

 この調子でお米に慣れれば、おかずに白飯を合わせる食べ方も大丈夫そうだ。



「鶏肉を焼いたそのフライパンで、ご飯を炒めても美味しいよ?」

 と莉奈は言いながら、作る順番を逆にすれば良かったと少し後悔する。

 鶏肉を焼いたあのフライパンで玉ねぎとニンニクと卵で炒飯を作れば、鶏肉の旨味がご飯に移り、鶏肉が入ってなくても充分美味しい。

「あ、マー油だな?」

「惜しい、鶏油ちーゆだよ」

 リック料理長が、ピンときた様だ。

 以前、莉奈が鶏肉料理を作った時に、鶏油ちーゆを取っとく様に言ったのを覚えていたらしい。

 マー油はラードでニンニクや香味野菜を揚げた、香味油の事である。

 ちょっと話した事なのに、リック料理長は良く覚えているなと莉奈は感心していた。

「そっか、そうだったな。ん? と、言う事は鶏油ちーゆを入れて炒めてもいいのか」

「だね」

 軽く説明すれば、リック料理長は思い出した様子で大きく頷いていた。



「そういえば、結局、サケティーニは飲めたの?」

 あれから皆が、どうやって分けたか莉奈は知らない。

「それが、まだ、飲んでないんだよ」

 作ったはイイが、どう分けるか決めかねていた様である。

 リック料理長達は、苦笑いしていた。



「ふぅん?」

 くじ引きにするかジャンケンにするか、それとも皆で仲良くホーニン酒だけをシンプルに味わうか、そこから決めていないと笑っていた。

 莉奈は皆の話を、ガーリックライスをモグモグと頬張りながら聞いていた。

 確かに、色んな味は試したいところだよね。

 からあげだって、塩、醤油、ニンニク、ダシ……等と組み合わせ次第で色んな味になるし、どれか一つだなんてちょっと悩む。

 

 



 













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