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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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38 ふわふわフレンチトースト

閲覧ありがとうございます。


部屋が暖かいと、冷たい物が恋しくなります。

ぬくぬくしながらのアイスクリーム最高です。



 莉奈が、ハチミツ、メイプルシロップをかけたフレンチトーストを妄想していると、リックも焼き上がったのか皿に盛っていた。

「こんな感じで、どうかな?」

「完璧です」

 やはり長年料理に、携わっているだけの事はある。たいした説明をしていないのに、感覚的にわかるみたいだ。

「じゃあ、この焼き上がったフレンチトーストは、シュゼル殿下とエドにあげるね」

 と、莉奈は焼き上げたフレンチトーストを、どこに置けばいいのかキョロキョロする。たぶんだけど、自分がいつも持ってきてくれるみたいに、魔法鞄(マジックバック)に入れてくのかなと思ったのだ。

「マジか!!」

 貰えると思わなかったのか、ビックリしながらも頬が緩んでいる。

「だって、腐っても皇子だしね~」

 莉奈は、可愛いなと思わずこっちも頬が緩む。

「 "腐っても" は余計だよ!!」

 と、口では文句を言いつつ、実に嬉しそうだ。


「ハイ!! 私も欲しいです!!」

 まだ、焼いてないパンが残っている。それがわかっているのか、モニカが元気よく手を挙げた。



 もう、遠慮なしだなモニカさんや……。



「ハイ!! 僕も欲しいです!!」

 数に限りがある。言った者勝ちだ……とでも思ったのか、勇気ある若い料理人がモニカに追随する。

「ふざけんな。俺だって欲しいし!!」

 自分より若い料理人が言った事で、皆の心がヒートアップし始める。

「あんたは、さっき多めに食べたんだから黙りなさいよ!!」

「はぁ!? たまたまだろう!?」

「大体、甘い物と言えば女子!!女の私達にこそ貰う権利があると思います!」

「てめえバカか!?……なら、シュゼル殿下やエギエディルス殿下は女子か?女子なのか?」

「黙んなさいよ!! 可愛い女に譲ってこそナンボでしょ!?」

「はぁぁぁっ!? 可愛い女なんて、どこにいるんだよ! 連れてこいよ!」

「「「……っ!! なんですってぇ~~!!」」」



「「「「………………」」」」

 莉奈、エギエディルス皇子、リック夫妻は唖然 茫然だった。

 たかが甘味1つで、ここまで揉めるとは思わなかったのだ。

 そこに、譲り合いなんて物は全くない。

 仮にも、ここに "皇子" がいらっしゃる訳なのだが、前も後どころか何も見えてないのかもしれない。


 例えばだが……ここでエギエディルス皇子が「黙れ」と黙らせる事は簡単だろう。だが、貰える彼が言った所で "火に油" どころか "火にガソリン" だ、莉奈はゾッとしていた。



 誰が、止めるのコレ……?

 えっ? まさか、原因作った私ですか?

 ……殉職しちゃいますけど……?



 【聖女じゃなかったので…………】

 御愛読ありがとうございました。



 …………ってなるだろうが!!

 だれかーーー!!



 と、莉奈が心の中で叫んだその時……神が降りた。



「うるさいですね。なんの……騒ぎですか?」

 冷血無慈悲な冷たい声が、厨房にピシリとはしった。

 そう、ピシリ……と。

「「「「「………………」」」」」

 その瞬間あれだけ、騒ぎに騒ぎまくっていた全員が押し黙った……たった一言で。



 ……あー。神は神でも "氷の神"

 


 これだけの騒ぎを見ても、表情を何一つ変えない。あれだけの熱気が凍り付くって……。

 なんか、イヤな予感しかしないんですけど?







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