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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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362 出禁



「あ、精米してある白米もあった」

 銀海宮の食糧庫にも置いてあると聞いた莉奈は、戻って来て早速食糧庫を確認したのだ。

 フェリクス王に貰った麻袋には、籾摺りと精米する前の米が入っていたが、ここにはしっかりと精米してある白米があった。

 あっちの世界程、真っ白ではないがこれで充分である。

 どうやら、莉奈に見せるために、脱穀前の籾殻が付いた米をくれた様だった。



「わっ、玄米まである」

 白米の麻袋とは少し色の違う麻袋を開けたら、精米する前の玄米まであった。

 莉奈が何をもって"米" と言っていたのか分からず、どちらも用意してくれたみたいである。

 粒としては、カリフォルニア米に似ていて、日本のお米より気持ち小さめ。タイ米みたいに長細くはない。

 粘りや香りは炊いて見ないと分からないが、明日はカレーの予定だからグッドタイミングである。




「玄米があるって事は、糠漬けが作れるじゃん」

 なんて嬉しいイレギュラー。

 莉奈は、ものスゴくワクワクしていた。

 さすがにお米を貰った後で、糠まで欲しいと言うのは気が引けるけど、玄米があるんだから自分で作ればイイかな。

 手作業での精米は、超が付くほど面倒くさいけど、玄米を精米すれば糠は出来るからね。

 糠床に入れる出汁昆布や鰹節はないけど、まぁどうにかなるでしょう。



「そっか、パエリアという手もある。玄米茶……玄米茶も作ろう」

 後は何を作ろうか。

 もはや、莉奈はワクワクし過ぎて独り言三昧だった。



「お前、ちょっと怖いぞ?」

 独り言を言っていたら、マテウス副料理長が背後に立っていた。

 ニヤニヤしながら米を見る莉奈に、マテウス副料理長は完全に引いていた。

「え? マテウスさん、サボり?」

「サボりじゃないよ。食糧庫からブツブツ言う声が聞こえたから、様子を見に来たんだよ」

 莉奈がいるのは知っていたが、中からブツブツと呟く不気味な声に、皆が怖がっているという。



「それ、鳥の餌だろ?」

「鳥の餌とか言うな」

 玄米の麻袋を覗き込んだマテウス副料理長に、莉奈は一言文句を返した。

 悲しい事に、お米は家畜の餌として使われている事が多いようだ。

「ククベリーとかお米とか、リナは鳥の餌が好き」

 グフッと侍女サリーがその後ろで笑っていた。

 鳥の餌が好きな訳じゃない。たまたま、鳥も食べているだけだ。莉奈はムスッとして、反論をしてみた。

「サリーはサボってないで仕事しなよ」

「休みだし」

 グフグフッと跳ね返されてしまった。

 クソッ。そうだった。

 なんで休みなのに、メイド服なんて着ているんだよ。紛らわしい。




「は? 休み? なんでメイド服なんか着てんだよ」

 マテウス副料理長が、サリーを見てビックリしていた。

 それもそうだろう。休みに仕事着を着ている人なんて……リック料理長かサリーくらいなものだ。

 まぁ、リック料理長は休みも仕事しちゃってんだけど。

「私服選びが面倒くさい」

 サリーが理由を言えば、マテウス副料理長は今度は呆れていた。

 女性から人気のあるマテウス副料理長は、私服は人一倍気にしているからだ。



「……お前……そんなんだから、結婚出来ないーー」

「あっ、それは女性蔑視発言だね?」

「イヤいやイヤ」

 マテウス副料理長は、慌てて手や首をブンブンと横に振った。

 今の発言のどこに、女性蔑視発言の要素があるのだと。

 だが、発言相手が悪かった。

「皆ーーっ!! 聞いてよ!! マテウスさんが、服のセンスのない女はクソだって!!」

 サリーはヨヨヨとハンカチで涙を拭って見せながら、食糧庫から走り出て行ったのだ。

「「「はぁぁぁァァーーッ!?」」」

 それを聞いた女性達は途端に声を上げ、サリーの後に出て来たマテウス副料理長を一斉に睨んだ。

 そんな事を言ったなんて、信じられないと手が止まったのだ。

「イヤいやイヤいやイヤ、そ、そんな事は一言も言ってないし!! 誤解だ、誤解!!」

 転がる様に食糧庫から出て来たマテウス副料理長は、脂汗を掻きながら全力で否定していた。

 女性達の白い目が、彼の身体を突き刺していた。




 本当にえげつないな。サリー。




 莉奈は憐みながら、お米を手に流し台に向かっていた。

 あれは女性蔑視的な発言には、全く聞こえなかった。だって、男にも言える事だからね。

 結婚出来る出来ないはともかく、年がら年中メイド服っていうのは如何と思うけど。



「リナーーッ。助けてくれよぉ」

 マテウス副料理長が半泣きしながら、莉奈に助けを求めて来た。

 女性だけじゃなくて、男性からも白い目で見られているみたいだ。なんだか、可哀想だなと莉奈は助け舟を出そうとした時、口からポロッと出た。

「休日にもメイド服着るのはイイけど、ソレちゃんと洗ってるの?」

 莉奈は思わず訊いてしまったのだ。

 洗い替えがあるにしても、毎日着ているんじゃ間に合わない時もあるんじゃないかな?

 そう思って訊いてみたら、キョトンとした顔でこう言われた。

「洗う訳ないじゃん」

「「「は?」」」

「"浄化魔法" があるんだから、洗う必要なんてないでしょう?」

 さも当然の様に、サリーから返事が返ってきたのだ。

 皆、唖然である。

 と言う事は、支給されてから1度も洗ってないと言う事だ。




「え? そうなの?」

 莉奈は魔法に詳しくないので、一瞬そういうモノかと思わず納得してしまった。

 莉奈は自分の服はもちろん、シーツとかも自分で洗った事がない。

 ラナ女官長達がやってくれるからだ。

 莉奈がなるほどと頷いていると、悲鳴に近い声が次々と上がり始めた。

「違う違う違う!!」

「確かに浄化魔法は、除菌的な事をするけど!! 油汚れや染みとか泥汚れまで落とすのは、浄化は浄化でもさらに上の高位魔法なんだよ!!」

「そこまで落せる高度な浄化魔法、サリーは出来なかったでしょう!?」

「いやぁあ!! じゃあ、あなたソレずっと洗ってなかったの!?」

「良くみたらなんだか分からないモノが、服にプツプツいっぱいくっ付いてるじゃない!!」

「うっわ、お前、何年洗ってないんだよ!?」

「記憶にない」


 


「「「出て行ってくれ!!」」」




 マテウス副料理長を揶揄うつもりが、逆にアウェーになってしまったサリーは、全員から「洗え」と厨房から追い出されたのだった。

 当たり前である。ここは衛生管理をしっかりしないといけない場所だ。

 そこに、いくら浄化魔法を使ったとはいえ、1度も洗った事のない服を着た人がいるのだからね。大問題である。

 しかし、浄化魔法にも低中高とレベルがあるんだなと、莉奈は感心していた。

 莉奈自身は使った事はないけど、身の周りに当然の様にあるから、あまり深く考えていなかったのだ。

 なら、汚物も砂の様にする魔法のトイレは、浄化は浄化でも最高位魔法なのだろう。

 魔石も高い。それに入れる魔法も希有。どうりで一般市民に中々浸透しない訳だ。




 莉奈がそんな事を考えている中。

「アイツは、出禁にしよう」

 満場一致でサリーの厨房への出禁が決まったのであった。


 


















 いつもお読み頂きありがとうございます。

 ありがとう╰(*´︶`*)╯♡ありがとう

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