344 カレーって何?
「えっ〜と。香辛料のたくさん入ったスープ?」
なんて説明をすれば良いんだ? そもそもカレーって何でカレーって言うんだろう。
何味なのかって言われたら、カレーはカレー味だし。大体この国に来てから、近い味は食べた事がないし。
莉奈は首を捻りに捻っていた。
「作って頂けますか?」
莉奈が説明に困っていると、タール長官がニコリと笑った。
香辛料を使って作るカレーに、タール長官も興味をもったみたいだ。
「え? いや……」
「いや?」
今日は忙しいので、やんわり断ろうとしたら、シュゼル皇子とタール長官の視線に捕まった。
でも今日は無理だから、しっかりと断らねば。
「きょ、今日はホラ! 夕食はピザなので、カレーは無理かなぁと」
「では、明日で」
「……はい」
あれ? オカシイな。断ろうとしたのに、明日のメニューが決まってしまった。
香辛料からなんて久々だから、美味しいと言われるモノが出来るか自信がない。だから、断りたかったけど仕方がない。
ん? まてよ。
【調合】の技能があるなら、カレー粉も調合出来るのか?
莉奈はそんな事を考えながら、後で香辛料を貰う約束をして薬品室を出た。
そう言えばこの国のお菓子、エショデだかフワスも小麦粉から作る訳だし、塩気を少なめにすればカレーに合いそうだなと、莉奈は思った。
まぁやたら、固いのが難点だけど。
莉奈が戻って来れば、ココで料理以外に、何を作るのだろうと皆はチラチラ見ていた。
「キラービーもどきの蜂の巣ですか」
莉奈が魔法鞄から取り出した物を見たシュゼル皇子が言った。
ただの蜂ではなくて、キラービーもどきだと分かっているから、【鑑定】を掛けて視たに違いない。
「随分と立派ですね」
作業台に載った蜂の巣を、マジマジと見たシュゼル皇子が感心した様に言った。
横幅が1mはあるので、蜂の巣としてはかなりの大きさだからだろう。
「ですよね。私も木にあったのを見た時、ゾッとしました」
だって、これだけの大きさなのだから、蜂は何千匹といたに違いない。
「でも、竜を倒すリナですから朝飯前でしたか」
「……違います」
隣にいたタール長官にまで揶揄われた莉奈は、モヤモヤしつつ否定した。
大体、竜なんか倒していないし。何この情報の速さ。
絶対、竜だけじゃなくて人も、面白可笑しく噂を広めているに違いない。
「そうそう、真珠姫と言えば、あの子の部屋では大変お騒がせ致しましたね? ステキな部屋になったと真珠姫も大層喜んでいました」
「あ、いえ。なんか……すみません」
蜂の巣から、スプーンでローヤルゼリーをほじくり出していた莉奈は、申し訳なさそうに謝罪した。
せっかく、シュゼル皇子が飾った部屋を、跡形もなく改装してしまったのだから。
「何がいけなかったんでしょうねぇ。真珠姫に言われた通りに飾ったつもりなんですけど」
え、あ、うん? アレで? と莉奈は作り笑いしか出なかった。
シュゼル皇子は全く分からないのか、小首を可愛らしく傾げているけどね。
ある意味、ワクワクする様な楽しくなる部屋ではあったと思う。だって、入学式だもん。
とにかく、真珠姫に却下された事はショックではないらしい。跡形もなくなった事も怒られなくて良かった。莉奈はホッと胸を撫で下ろしていたのだった。
◇◇◇
話しながらローヤルゼリーを瓶に移していたら、ジャムくらいの小瓶があっという間に満杯だ。
しかも、まだ蜂の巣にはギッシリ残っている。
ポーションの使える量にもよるけど、簡単に作れるのなら、王城に勤めている女性達の分は作れるかもしれない。
まぁ、小瓶程度で良ければだけどね。
「ソレをポーションと混ぜるんでしたよね?」
「そうですね」
タール長官が莉奈の持つ小瓶を見ていた。
莉奈はそう答えながら、作業に邪魔な蜂の巣は魔法鞄にしまった。
「え〜と。温めたいのですけど……ん? コンロですか?」
ローヤルゼリーを温めたいと思い、何か道具はないかと訊いたら、小さなコンロを差し出された。
「はい、魔導コンロです」
魔法省の人が手渡しながら、使い方を軽く説明してくれた。
卓上用より小さくて、手のひらサイズのコンロ。
パッと見は厨房にある様なコンロだ。要するにIHクッキングヒーターの極小版。ただ、莉奈の世界とは違うから、赤い火の魔石が台に付いているし、ヒーターの部分は魔法陣の様な紋様が描いてある。
この火の魔石が、宝石みたいに輝いて高級感を漂わせていた。まぁ、実際、魔石も魔導具も宝石みたいに高いけどね。
「直火より湯煎ですよね?」
「ありが……」
「どうかしましたか?」
空気を読めるタール長官が、小瓶より一回り大きいビーカーにお湯を入れて用意してくれた……のだが、その用意の仕方に莉奈は魅入ってしまった。
「お湯も魔法で出せるんですね」
そうなのだ。
タール長官はすぐに使える様にと、魔法で出してくれたのだ。
莉奈は勝手に、魔法では水しか出せないと思い込んでいたため、驚いてしまったのである。
「火と水の魔法を使う高度な技ですが "魔導師" であるリナも、使える可能性はありますよ?」
シュゼル皇子がほのほのとしていた。
「え? あ! そうでした。私も魔法を使えるんでしたっけ」
エギエディルス皇子に先生役を頼んだまではイイが、全然教えてもらってない。
むしろ、魔法を使える事すら忘れていた。
【鑑定】や【検索】以外、ほとんど使ってないなと、今さらながらに思う莉奈だった。
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