339 朝からバーニャカウダ
カカ王を魔法鞄にしまって、一息吐いた莉奈。朝から疲れた様な声を出していた。
「なんかもう、目が覚めちゃったし、いつもお世話になっている厨房の皆になんか作ろう」
パチンと頬を叩き、自分に喝を入れた。
色んな諸事情で眠気も吹っ飛んだし、気分も一新させるついでに何か作ろうかなと。
「マジで!?」
「俺、酒、酒がイイ!!」
「朝から何言ってんのよ。そこはお菓子一択でしょう?」
「甘いモノなんかいらねぇよ」
「肉ーーっ!!」
作ると言った途端にコレだ。
何を作るかは、作る人間が決める権利があると思いますけど?
莉奈は呆れながらも作業に移る。
朝食だから、ガッツリではなくサッパリしたモノが良いかなと、メニューを考えていたらハッと気付いた。
「あ、作るって言えば、エドにバーニャカウダを作る約束してたんだった。それでいっか」
ピザと一緒に昨日作る予定だったのに、すっかり忘れていた。
エギエディルス皇子は、真珠姫の様に文句を言いに来たりしないし。
「バーニャカウダ」
マテウス副料理長達が呟いた。
そういえば、そうだったなと。
「ところで、アンチョビってあったけどオイルサーディンは?」
「オイルサーディンもあるよ」
「どっちも酒の肴に食ってる」
あるのはありがたいけど、どっちも酒の肴かい。
莉奈が訊いたら、料理人が倉庫から瓶詰めのアンチョビとオイルサーディンを持って来てくれた。
オイルサーディンも瓶入りだ。日本では缶詰もあるけど、缶だと庶民的に感じるのは何故だろう。
こうやって瓶に入っていると、一気に高級感が出るから不思議だ。
「アンチョビが苦手な人もいるし、アンチョビ入りとオイルサーディン入り、どちらも入れない3種類を作ろうかな」
アンチョビは発酵食品だから、独特のクセがある。
オイルサーディンも似たようなモノだから苦手な人もいるだろうと、魚類をアリとナシで用意しておこうと莉奈は考えた。
「どうすればイイんだ?」
マテウス副料理長が訊いた。
ちなみに、リック料理長は今日は遅番らしい。
「とりあえず、リリアン達はニンジンとかブロッコリーとか、野菜を一口大に切って茹でといてくれるかな」
「分かった」
「パンもついでに切っておいて」
「はいよ」
そう言うと、リリアン達見習い組が率先して準備し始めた。
「バーニャカウダは超簡単。皮を剥いて半分に切ったニンニクを小鍋に入れて、そこにオリーブオイルを注ぐ。それから火を点けてニンニクを焦がさない様に柔らかく火を通したら」
「通したら?」
「鍋を火から下ろして、そこにアンチョビかオイルサーディン、オレガノと塩、胡椒を加えてニンニクごと適当に潰す」
「ふんふん」
「で、出来上がり」
「「「え? 出来上がり?」」」
「うん、出来上がり」
莉奈が出来上がりと言うものだから、本当にコレで完成なのかという表情をされた。
作り方は他にも色々あるけど、バーニャカウダは野菜を茹でるのが面倒なだけで、簡単に出来るのだ。
「バーニャカウダって、ざっくり言うとニンニクソースなんだよ」
「へぇ。あっ、だから温野菜を作らせたのか」
「そうだよ。晩ご飯に出す予定のピザソースに足しても美味しいから、いっぱい作っといて」
「はいよ」
だって、ピザにチョイ足しするとニンニクがガツンときて、スゴく美味しい。
ニンニクの香りは食欲もそそるしね。
「アンチョビとかが苦手な人は、少し冷めた後にマヨネーズを加えて混ぜても美味しいよ」
「マヨネーズ」
途端にマヨラーの目が光った。
最近では、パンにマヨネーズをたっぷりのせて焼く人も出て来たらしく、マヨネーズの消費量が半端ないらしい。
ハイカロリーの物って、本当に美味しいよね。
「朝からニンニク臭くなるけど、試しに食べてみれば?」
あまり量を食べると、一日中口がニンニク臭くなるし、胃が弱っている時や空きっ腹にはエグいけど。
まぁ、そこは自己判断でと莉奈は勧めた。
「そういうリナは、何を作るんだ?」
皆に味見を勧めながら、また手を動かす莉奈にマテウス副料理長が訊く。
「違うバージョンのバーニャカウダを作ろうかと」
「ひょっとしなくても、色々あるのか?」
「だね。基本は最初に作ったモノだけど」
「「「へぇ〜」」」
一つのモノで何でもアレンジする莉奈には、本当に感心しっぱなしだなと皆は思うのだった。
「作り方も色々あるよ」
そう言って莉奈は、ニンニクとアンチョビを微塵切りにする。
先程はニンニクを半分に切ったけど、微塵切りにしてからでも勿論イイ。
「フライパンにオリーブオイルをたっぷり入れて、微塵切りにしたニンニクを入れる。で、火にかける」
「あー! 知ってる。先に油を温めちゃうと、ニンニクが焦げちゃうからでしょ?」
朝から元気にリリアンが右手を挙げた。
すでに味見をしているのか左手には、バーニャカウダが付いたジャガイモを持っているし、リスみたいに口が膨らんでいる。
「バーニャカウダ美味しい?」
「チョー美味しい!! ニンニクがガツンときて、あんまり好きじゃなかったジャガイモがすごい美味しい」
そう言ってリリアンは、ジャガイモをさらに頬張っていた。
「それは良かった。こっちは、オリーブオイルにニンニクの香りがついたら、アンチョビかオイルサーディンを入れて、少し炒めたところに生クリームを投入」
「え? 生クリームなんか入れるの?」
「そう。で、塩胡椒で軽く味を調えて、水に溶かした片栗粉を入れてトロミをつけたら完成!!」
莉奈は味見をしようと、皆の前にフライパンごと差し出した。
トロミがつくのであればコーンスターチでも小麦粉でも、別に構わない。近くに片栗粉があったから、片栗粉にしただけだ。
「ん、美味しい!!」
「ニンニクの香りがふんわりで、さっきのより私は好きかな」
「俺はさっきのだな。ニンニクはやっぱりガツンと欲しい」
味見をした料理人達から、楽しそうな話が聞こえる。
確かに身体がニンニクを求めている時は、生クリーム入りは物足りなく感じるかもしれない。
「コレはこれでウマイな。ニンニク風味のホワイトソースって感じだな」
マテウス副料理長は、ただ味見するだけではなく、味を細かく分析している様だ。
味を確かめながら、アレンジ方法でも考えているのだろう。
マテウス副料理長もリック料理長みたいに真面目だから、スープみたいにすぐに色々とアレンジして、レパートリーが増えるに違いない。
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