31 牛乳たっぷりリナお姉さんのクリームシチュー
「さ~てと、これでよ~し!」
ホワイトソースを入れ、かるく塩でととのえれば完成だ。胡椒もあったが、たぶん高級品だろうと想像できたので入れなかった。
だって、食べるの一般庶民だし……いらんでしょ?
「……で……出来たのですか?」
莉奈が、味見用に小皿によそってると、リック料理長が訊いてきた。さっき鶏コンソメを味見していたから、これも美味しいだろう…と想像している様で期待の眼差しだ。
あれ? なんだろう……?
犬がご飯の時に、上目使いで見てくる "アレ" に見えてくる。
モニカの目は、ギラついてて犬より……ハイエナ……。
すごい……怖い。
「えっと……味をととのえたら、完成……です?」
視線がゾッとしなくもないが、莉奈は味見をしてみた。
うん。完璧!!
胡椒なんか入れなくても、イイ味だ。
個人的には、肉を入れたい処だけど仕方ない。
「エド的にはどっちが好き?」
莉奈は、味見代表にエギエディルス皇子を選んだ。
本来なら "毒味" もせず口に入れさせるなど、ありえない行為だが……まぁ、作るのを目の前で見てた訳だし、なんだったら自分が先に口にしたからいいだろう。
「……イイのか?」
周りを配慮してなのか、あまりにも周りがギラついてるからなのか、莉奈に断りをいれる。視線にゾッとしてるみたいだ。
「イイに決まってるでしょ?……塩、足りるかな?」
何、皇子が遠慮しちゃうの! と、莉奈はぐいっと皿をエギエディルス皇子に差し出した。皇子なんだから、ドシンとせい!!
そして、料理人達はそんな羨ましそうな、恨めしいカオしないの!!
「……っ!……なんだコレ、すげぇ旨い!!」
エギエディルス皇子は、初めて食べるクリームシチューに驚き歓喜の声を上げた。余程美味しかったのか、跳びはねそうな勢いだ。
エギエディルス皇子の嬉しそうな表情に、莉奈も思わず笑みがこぼれる。
…………ゴクッ。
その瞬間、どこからともなく生唾を飲む音が聞こえたが、無視する事にした。たぶん、見たら負けだ。そんな気がする。
「エドは、どっちが好き?」
改めて訊いてみた。表情的にはコッチかな…とは思っている。
「コッチ!!」
あはは……やっぱりそうだ。仔犬みたいですごい可愛い。
皇子じゃなきゃ、頭を撫でくり回すのに……。
「んじゃ、エドにはコッチを、よそってあげるね」
と莉奈はスープ用の皿を用意しようとして固まった。
…………はいぃ!?
なんだかしらないけど、いつの間にか、さも当然の様にスープ用の皿を持った料理人達が、エギエディルス皇子の後に並んでいたからだ。
マジか!!
お前ら全員食う気か!!
んで、私は配給しなきゃイカンのか!!
ええっ!? コレ、配分間違ったりしたら……後ろの人までに無くなるパターンじゃ……。
怖い~。足りなかったら、どうなるんですか~?
「…………っ」
エギエディルス皇子も、行列に気づいたのかガッツリ引いている。
引くよね~? そして、怖いよね~?
エギエディルス皇子は、顔を正面に戻し見なかった事にしていた。
「………………はぁ~っ」
盛大なため息がでた。こうなったらよそわない訳にはいかない。
莉奈は、カオがひきつるのを感じながら、仕方なく配給係になるのであった。




