279 莉奈の武器?
「さて。せっかく頑張って当てた事だし、良かったら何か武器を造ってあげましょうか?」
「本当に!?」
既存の物より自分の手に馴染む武器の方がイイだろうと、アーシェスは考えたのだ。
莉奈はさらにキラッキラと瞳を輝かせた。
貰えるだけでも幸せなのに、自分専用の武器なんて嬉しくて仕方がない。
「お前なら、こういう武器がイイんじゃねぇの?」
フェリクス王は口端を上げ、棚にぶら下がっている武器をチラリと見た。
莉奈は王が見た先に視線を動かして見ると、それは長さ30cm程の麺棒2本を、端と端を細い鎖で繋げてある武器だった。
それを見た莉奈は、無言で王を睨んだ。
「くくっ」
その表情を見て、くつくつ笑うフェリクス王。
どうやら莉奈がこの武器が何か分かった上に、想像した通りの反応をしたので面白かった様だ。
「リナ。それが何だか分かってるの?」
アーシェスは目を見張った。
莉奈の表情は分かっている反応だった。ソレまで何なのかを理解出来るとは思わなかったのだ。
「ヌンチャクでしょ?」
莉奈は不機嫌そうに答えた。
先程までの浮かれ気分が台無しになったからだ。フェリクス王はいつまでもニヤニヤとしているし。
「はぁ~。あなた本当に良く分かるわね。コレ異国の武器だから、分かる人がスゴく少ないのに」
アーシェスは感嘆した様な声を出していた。
多種多様に揃えて置いてあるが、マニアックな物なのか、コレを見てすぐに "ヌンチャク" だと答える人は稀だったのだ。
2本の棒を振り回すくらいは分かっても、名称までは分からないのが普通だった。
「ぁ~」
「あ~なんだよ?」
そういえばマニアックな武器だなと、心で呟いたつもりだったのにフェリクス王がシッカリ拾ってくれた。
「父が昔、振り回していたのを思い出したんですよ」
莉奈は懐かしいな……と思い出し小さく笑った。
年末の大掃除の時、押し入れの奥の方から出てきたのが、この "ヌンチャク" だった。真ん中は鎖ではなく紐だったけど。
父が昔、カンフー映画が流行った際に麺棒を2本買って作った代物だった。
『どうだ? 莉奈、お父さんカッコイイだろう?』
『おぉっ!!』
『ほりゃ! ほりゃ!』
どうやって使うのか訊いたら、ヒュンヒュンと小気味イイ音を鳴らし得意気に回して見せた父。
莉奈が褒めれば、さらに嬉しそうにブンブン振り回した。そして、調子に乗りまくった結果。その勢いのまま麺棒を股間にガツンと……。
「ぼぇ」と変な声を1つ上げ、見た事もない表情で悶絶した父。それを見てお腹を抱え笑う母。無言で父の腰を叩く弟。
そしてそれを見た私は、あぁ今日も平和だな……としみじみ感じていたのを思い出す。
「「……」」
父の顛末を話せば、痛みが良く理解出来るのか渋面に変わったフェリクス王とアーシェス。
「まぁ。これで男の股間を叩くと面白い、という事がよく分かりましたけど」
「違うな」
「違うわね」
フェリクス王とアーシェスは堪らずツッコミを入れていた。
そんな2人の横で、莉奈はヌンチャクを持つ素振りをし、"何か" を力強く叩く仕草をしている。
「「……」」
その仕草は "何か" にクリーンヒットを与えている気がし、2人の背筋はゾッとしていた。
莉奈は使い方こそ良く分かってはいないが、相手に致命傷を与える道具だと思っているらしい。
アーシェスはただならぬ雰囲気を察し、莉奈の視界からゆっくりとヌンチャクを排除した。
この子にヌンチャクを持たせたら、世の男の股間が危ない。そんな気がしてならなかったのだ。




