260 飲酒運転?
しばらくして、焼き鳥を一通り食べた3人は、実に満足した様子だった。
フェリクス王は鶏の皮と、ロックバードのネギマ。
エギエディルスは、鶏の皮とヤゲン軟骨。
イベールは、つくねと砂肝が好きみたいだ。
鶏の皮はちなみに、もちもちとカリカリと2種類用意したのだけど、2人ともカリッカリッにした方が好みらしい。
エギエディルス皇子が、鶏の皮の毛穴のブツブツ、ブニブニした食感が好きじゃないのは知っていたから、1つは串に伸ばしてカリッカリッに焼いたんだよね。
そしたら、旨すぎる!! っておかわりを何度もしてくれた。
カリッカリッした鶏の皮は、ものスゴく香ばしくて美味しい。家族も皆、大好物だった。
フライパンで焼く時は、小さなフタやヘラで押して焼いたり、余分な脂を取ったりで面倒だけど、焼き鳥は下に脂が勝手に落ちるから楽チンだ。
レバーが意外に大丈夫だったのには、驚いたけど……。エギエディルス皇子は気持ち悪い……って超不評なのは致し方がないとはいえ、フェリクス王とイベールは平気そうだった。
新鮮な鶏のレバーだったから、臭みが少なかったし炭で焼いたから、香ばしかったのが良かったのかも。醤油ダレだったら、なお良かったに違いない。
今度はアスパラガスとかトマトとか、野菜も使った焼き鳥もやろうと思う莉奈だった。
◇◇◇
エギエディルス皇子は食べ終わると、番の所にご機嫌な様子で向かって行った。竜がもう少し、ここの環境に慣れたら会わせてくれると言ってくれた。
イベールは、お酒を飲んでも無表情で変わりなく、職務に戻ろうとしている。
そして……フェリクス王は酔い醒ましに、王竜に乗って魔物討伐に行く様な雰囲気だったので……莉奈は全力で止めた。
「飲酒運転はダメです!!」
酔い醒ましに魔物討伐なんて、信じられない!!
普通は、お風呂に入ったり寝たりじゃないの!?
そもそも、馬と同じで飲酒運転じゃない? アレ、でも竜は自動運転になるのか?
そんな事を考えながら、気付いた時には自然と身体が動き、思わず止めていた。
「……くっくっ。飲酒……運転」
まさか、止められるとは微塵も思わなかったフェリクス王は、腹を抱えて笑っていた。
危険と止められた事はあるが、飲酒運転と止められるとは予想外だ。乗馬や馬車に関しては、飲酒運転を取り締まる法はある。だが、竜にまでそれを引用するとは、思わなかったのである。
まだ、残っていたイベールでさえも、少し驚いた素振りが見えた。彼は危険だと、止めるつもりだったのだ。なのに、莉奈がそんな風に止めたので、驚いた様子であった。
「大人しく部屋で休んで下さい」
部屋に戻る様に促した。どうせ、今日は仕事をしないからガッツリ飲んだに違いないからだ。
「膝枕でもしてくれるのかよ?」
くつくつと面白そうに、フェリクス王が莉奈を見た。
「……っ! する訳がないでしょう!!」
思わず想像してしまった莉奈は、頬が火照るのを感じていた。
絶対にからかわれていると分かっているが、シレッとどうぞと言える程、冷静ではいられなかった。
「1人じゃ寝られねぇんだけど?」
莉奈の耳元に近付き、さらにからかうフェリクス王。
莉奈が顔を真っ赤にさせ始めたので、いよいよ面白くなった様である。
「なら、そこにいるイベールさんでも、抱き締めて寝て下さいっっ!!」
半歩下がると莉奈は、息が掛かった耳を慌てて塞ぎ、叫ぶように言った。
心臓が破裂しそうなくらい、ドキドキしていたのだ。フェリクス王の低い声も、お父さんとは違う香りも、なんだか胸が跳ね上げていた。
「……ハハハ……だとよ、イベール? 寝るか?」
莉奈の暴言も面白いらしい。愉快そうに、傍に控えていたイベールに問う。
「必要とあれば」
イベールは動揺もなく、無表情だった。
「怖ぇよ」
真面目過ぎるその妙な返答に、フェリクス王の方が呆れていた。
冗談なのか忠義心なのか分からない。




