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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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256 大物が釣れた



 ―――小1時間後。




 莉奈は王宮の中庭にいた。

 ロの字型の【銀海宮】の中庭は、学校の校庭がスッポリ入るくらい大きい。ちょっとした池も造られてて、木々も花々もたくさん植えられている。

 四季があるこの国なら、その季節には色んな花を咲かせるに違いない。ちなみに、この王城は山の頂にあるから、高山植物らしきモノもある。

 ただでさえ、見た事のない花や木々ばかりだけど。高山植物は形も、変わっていて面白い。針の様な葉が生えている木もあれば、やたら大きな葉の木もある。実に多種多様である。



 そして、人工池の真ん中には橋で渡れる小島がある。寛げる様にテーブルやイスも設置してあり、憩いの場となっている様だ。

 この人工池。良く見るとプクプクいってる箇所があるから、ここにも温泉か水が湧いているのかもしれない。

 山の頂ってものスゴく寒いイメージがあるのだけど、地熱があるのか超快適。天然の床暖房みたいだ。

 世間では8月 "夏" らしいけど、ここは魔石がある。それらを上手く利用して、いつも25℃前後で保たれているとか。

 だから、夏は涼しく冬は暖かい。ラナ女官長達に、快適の訳を聞いてはいたけど、生活しているといよいよ実感するよね。

 




 ―――で、莉奈はそこで何をしているか?




 "焼き鳥" を焼いていた。

 フェリクス王に何を作るかを考えていたら、軍部の倉庫にバーベキューセットがあるよ? と教えてくれたからだ。

 魔物の討伐に出掛ける時に、持って行く事もあるそうだ。それが、倉庫にあると聞いたので1セット貰ったのである。

 鶏肉は豊富にあるから、それらを串に刺して貰い、ここ中庭で焼いていた。厨房でも良かったのだけど、絶対に味見させろとか言うに決まっている。

 だから、作り方を教えて準備して、静かで誰も来ない中庭に来た。煙も出るから丁度いいしね。




「うっま~っ!」

 さっそくとばかりに、莉奈はたった今、焼き上がった鶏モモ肉の串を口に頬張った。

 醤油がないから、レモンかライム。それと塩か、塩にガーリックや香草、唐辛子を混ぜた簡単なモノしかないけど。炭火で焼いた鶏肉は、炭の香ばしい匂いがする。

 オーブンで焼くのとは全然違って、炭のおかげでプックリと焼けた鶏肉は、ジューシーでものスゴく美味しい。

 家族がここにいたら、両親はキンキンに冷えたビールをくれと言うだろう。弟だったらコーラかな?

 味見は作り手の特権だよね。まぁ、別名つまみ食いとも言うけれど。





 ◇◇◇

 




「お前は、ここで何をしてやがる」

 中庭で焼き鳥を焼いていたら、もれなくフェリクス王が釣れた。

 いくら敷地が広いとはいえ、ロの字の真ん中で焼き鳥を焼いていれば、煙突効果でもあるのか煙は王宮全体に広がっていたらしい。

 通りかかった者達が、口々に何だ何だと騒げば、当然トップのお耳に入る訳だ。

 お腹も減る頃の時間に漂う、肉が香ばしく焼ける堪らない香り。花の匂いは蜂や蝶を呼ぶみたいだけど、鶏肉の焼ける匂いは国王陛下を呼ぶ事となった。


「焼き鳥」

 莉奈はモグモグと、今度はカリッと焼いた鶏の皮を食べていた。

 国王陛下が来ようがナンのその。もう、慣れちゃったよ。



「なんで、ココで焼いてんだよ」

 元気になったのか、隣にエギエディルス皇子がいた。

 莉奈の突拍子のない事はいつも通りだとしても、想像もつかなくて呆れつつも笑っていた。厨房で焼けよと。

「ケムイから」

 次はちょうど焼けた砂肝を口に入れ、コリコリと心地好い音を立てていた。

 うん。砂肝はコリコリして美味しいよね。

「陛下の御前だというのに、無礼ですよ、リナ」

 相変わらず冷淡な執事長、イベールも半歩後ろにいた。

 無表情だけど、怒ってるより呆れている様な気がする。莉奈に怒る事は、すでに諦めているのかもしれない。

「焼き鳥は焼けたその瞬間から、ご馳走なんですよ?」

 モグモグと砂肝を全部口に含み、用意しておいたおしぼりで手を拭いた。

 直接、焼き鳥の串を触るから汚れるしね。

「フェリクス陛下。エキサイト殿下……そして、イベールさん。すぐ、ご用意出来ますのでお座り下さい」

 莉奈は、側にあるテーブルにおしぼりを用意しつつ、お三方をイスに促した。

 これは3人のために作っていたから、丁度いい。持って行く手間も省けた。

「エキサ……フェル兄やイベールはまんまなのに……」

 エギエディルス皇子は、どうしていつも自分だけ違う呼び名なのかと、妙な不満を漏らす。



「では、フェスティバル陛下。イボンヌさんもお座り下さいませ」

「まさかの、そっち!?」

 自分に合わせるとは思わなかったエギエディルス皇子は、目を丸くし突っ込んだ。

 こう言われたら当然、自分をエギエディルスと呼ぶのではないか? と思ったのだ。

「フェス……随分と賑やかだな、オイ」

「私は性別を越えました。リナ、懲罰ものですよ?」

 エギエディルス皇子に言われ、ならばと冗談混じりに言ってみれば、フェリクス王はくつくつと笑い、イベールはピクリとこめかみが動いた。

 エギエディルス皇子は何だかんだと、楽しそうに笑っているけど。

 でも3人とも、色々と言いながらもしっかり着席したのだから、食べる気は満々なのだろう。

 目の前にあるこの鶏肉が、チリチリと焼ける匂いは堪らないよね。





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