250 ゲオルグより強い人
「リナもグルだったとは……」
軍部、白竜宮の食堂側の窓から、ゲオルグ師団長が覗いていた。
シュゼル皇子の笑顔に捕まってしまった莉奈は、あれから説明をするハメになったのだ。
生キャラメルをクリーム状にし、アイスクリームにかけると美味しいと……。そう言えば、当然ヨロシクと言われる訳で、今ここにいる。
そして、今はゲオルグに捕まっていた。何故、お前がタール長官と組んで、毒の芋虫を自分に食わせたのだと。
「ゲオルグさん」
「……なんだ?」
「あの状況で、私に否と言えると思います?」
「言える」
ゲオルグは断言する。他ならぬ莉奈なのだからと。
―――何でだよ!!
莉奈はムスッとした。
私を何だと思っているのかな?
イヤ、少し? ちょっと? 楽しんでいたかもしれないけど!!
「お詫びに何かお作りしましょうか?」
莉奈は言い訳を諦めた。
アイスクリームにかける生キャラメルは後で作るとして、楽しんだのも確かだ。どの道、フェリクス王のために、何かは作らなければいけなかったからね。
「フフフ……その言葉を待っていた」
ゲオルグは意地悪そうな笑みを浮かべた。
莉奈が悪いなんて端から思っていない。ただ、莉奈ならそう言ってくれるに違いないと踏んだのだ。
「……」
ハメられた……と莉奈は思った。
「何が食べたいんですか?」
作ると決めた以上はしっかり作りたい。そう思って、一応食べたい物があるのか訊いてみた。
何でもいいが1番困るしね。
「コレで何かを作ってくれ」
そう言って、ゲオルグは窓に付いてある配膳用の棚に、ドスンとビンを置いた。
無色透明の何かが入ったビン。まぁ、大体は察する。
だって、ゲオルグがただの水を持って来て、これで何かを作れなんて言うハズもない。蛇口に触れれば水が出る世界だからね。
「なんていうお酒なんですか?」
「ホワイト・ラム」
そう言って、ゲオルグは嬉しそうにニカッと笑った。
ほら、やっぱりお酒だ。
「カクテルを作れって事ですね?」
この様子からして、絶対に料理に使えって事ではないだろう。
「あっちで待っている」
言うか言わないか、食堂に向かって行くとイスにドカリと座った。
作れません、と言う返事は待っていないらしい。未成年に何を渡して作らせるんだろうと、少しだけ呆れる莉奈だった。
◇◇◇
「で、何を作るんだ?」
白竜宮の料理人達が、目が獣の様に莉奈を見てギラついた。
やり取りを見聞きしていれば、莉奈が何を作る気なのか分かる。しかし、なんのカクテルなのか迄は分からないのだ。
興味しかない料理人達は、作業を止めて集まり始めていた。
「さて、何にしようかね~」
ついでに、フェリクス王の分も作ってしまおうと考える。
酒も用意しとけって言っていたからね。丁度いい。
しかし、酒はホワイト・ラム以外にも色々と種類があるのだから、少しばかり原料の "サトウキビ" を、砂糖の方に多めに回してもバチは当たらないと思う。
そうすれば、砂糖の原価も安くなるのに……と思わなくもない。
だけど、国のトップを筆頭に酒好きの集まり。原料を甘い砂糖に回す気はないのだろう。
シュゼル皇子が庶民だったのなら、何がなんでも砂糖に回させるように取り計らうだろうけど……あの人、この国の宰相様。
お金はあるから、そちらに回せなんて言わなくても、いくらでも手に入る立場である。それに、お酒好きときてる。
ダメだこりゃ……と思う莉奈だった。
ちなみに後で聞いて分かったのだが、ラム酒の原材料はサトウキビではあるが、砂糖を作った後の"残りカス" で作るんだそうだ。
それは"廃糖蜜" または"絞り汁"と呼ばれ、砂糖を精製した後のモノなので一切無駄がないのだとか。
エコロジーといえば聞こえが良いが、莉奈に言わせれば、結果お酒に繋がる事に変わりはなかったのであった。
◇◇◇
「……」
莉奈はカクテルを作ろうと、振り返り唖然とした。
カクテルを作ると聞いた料理人達は、作業台にズラリと材料を並べていた。
十数種類のお酒。果物、氷、そして様々の形のグラス。
どうぞといわんばかりである。莉奈が唖然としている中、まだまだ準備をしていた。
誰が皆の分まで作るなんて言ったかな?
「足りない?」
料理人がにこやかに言った。
「足りすぎだよ」
逆に引くぐらいタップリと用意されている。
特に、お酒は色々とである。ウイスキー、ブランデー、ウォッカ……実に多種多様だ。
莉奈はお酒を見ながら考える。絶対に辛口のカクテルにした方がいい。フェリクス王の好みだからだ。
この際、ゲオルグ師団長の好みなんてしったこっちゃない。
ゲオルグ師団長が持って来たのは "ホワイト・ラム" 。
それで、なるべく簡単で辛口のカクテルをレシピから探す。
「ゲオルグさ~ん」
「なんだ?」
「奥さん可愛い?」
タール長官の妹と結婚したと聞いていた。どんな人かな? と聞いてみた。
「世界一可愛い」
ゲオルグは恥ずかしい素振りもなく、満面の笑みで答えた。
出来ちゃった結婚だったけど、ラブラブみたいである。莉奈は思わず笑ってしまった。こんなに愛されているのなら、襲った……いや食べた……じゃない、アタックした甲斐があるというものだ。
軍部の仲間達からは、ヒュウヒュウとひやかしの声が聞こえていた。
「奥さんはお酒は?」
「俺より強い」
ゲオルグはアハハと苦笑いしていた。
酒豪の彼が強いと断言するのだから、相当なモノである。
――――化け物だ。
ゲオルグは化け物と結婚したに違いない、と莉奈はゾッとした。
この国に、酒豪やザルではない普通の人は、いないのだろうか?
莉奈は数える程しか下戸がいない事に、呆れると同時に感服していたのであった。
◇いつもお読み頂き、ありがとうございます。
ブクマ、評価、大変励みになっております。
o(*゜∀゜*)oガンバル~♪




