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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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225 リナお姉さんのしゅわしゅわメレンゲクッキーと、さくさくラング・ド・シャ



 揉め事の多くなる食堂から出た莉奈達は、客間にいた。

 そこで母の様に優しいラナ女官長が、こぽこぽと心地好い音を立て紅茶をカップに注いでくれている。

 モニカは、ケンカに参加した罰として、ここには同行していない。涙目で訴えていたが、致し方ない。

 まぁ。便宜上あそこで渡せなかっただけだから、後で少しあげるけどね。お世話になっているから。



「ありがとうラナ。んじゃ、5人でゆっくりクッキーでも食べよう」

 莉奈がそういうと、紅茶を淹れてくれたラナ女官長も、テーブルに着いた。

 莉奈、エギエディルス皇子、ラナに加えて、リック料理長とマテウス副料理長を合わせた5人である。

 ちなみに、執事長様はテーブルの片付けがあると、同席していない。まぁ、初めから同席する気があったとは思わないけど。テーブルの修繕費は、今までの功績と相殺してくれる……との事だった。

 良いのか悪いのか……。要は次はない……という事だろう。



「しかし……リナに呼ばれた時は……一瞬頭カチ割られるのかと思ったよ」

 リック料理長が、心底ホッとしたようにため息を吐いた。

 エギエディルス皇子と食堂から出て行く時、莉奈に "リックさん" と呼ばれ心臓が止まるかと思ったのだ。

「俺も」

 マテウス副料理長も同様に、深い深いため息を1つ。

 あの割れたテーブル、あの状況で、ちょっと来てと呼ばれれば、誰でもそうなるだろう。

「人様の頭をカチ割る訳ないでしょ!?」

 あれは冗談である。莉奈は本気で怯える2人に呆れた。

 そんな事をしたら、ただの殺人である。

「「……」」

「ちょっとそこ!! 黙らない!!」

 返答がなく、虚空を向いたので、強めにツッ込んでおく。

 私をなんだと思っているのかな!?

「「「アハハ」」」

 部屋には、皆の楽しそうな笑い声が響くのだった。




 ◇◇◇




「こっちがメレンゲクッキー。そっちがラング・ド・シャね」

 莉奈はテーブルの上に、カタンとクッキーがのったお皿を置いた。

 もちろん、全部は出さない。だって、リック料理長とマテウス副料理長には、先程クッキーは渡してはあるし。シュゼル皇子の分も取っとかなきゃだし、エギエディルス皇子にはたくさんあげたいしね。

「すっげぇ。イイ匂い」

 エギエディルス皇子が、スンスンと匂いを嗅いでいた。

 クッキーをテーブルに出せば、皆が先程初めて嗅いだ香ばしくて甘い甘美の香りがした。

「フレンチトーストも甘い匂いはしたが……クッキーは格段に甘いイイ匂いが」

「堪りませんね。厨房に残されたアイツ等は地獄でしょうけど」

 リック料理長、マテウス副料理長が、厨房にいた連中を思い出し苦笑いしていた。

 厨房にはもうクッキーはないが、残り香が漂っているのだ。口に出来ないのに、この甘美たる匂いを、ずっと嗅いでいるなんて最悪でしかない。



「……んっ!?」

 まずはと、エギエディルス皇子がメレンゲクッキーを口にして、目を見張っていた。

 砂糖を使っているから、甘くて美味しいのはもちろんだが……。

 周りは見た目通りサクッとしているのに、噛むとしゅわしゅわと解れて消えていったのだ。初めての食感である。

「何……この食感!」

「サクッとしたかと思えば、口の中でしゅわしゅわっと消えていく!!」

「しかも、すごい軽い!!」

 ラナ、リック、マテウスが、次々と口にし、初めての食感に驚きを隠せないでいた。

「「「美味しくて……面白い!!」」」

 皆が、顔を見合わせ瞳を瞬かせていた。

 そうなのだ。このメレンゲクッキー、スゴく軽い食感で周りはサクッ、口に含むとしゅわしゅわと消えていく不思議なお菓子。

 空気を含んだメレンゲだからこその、面白い食感だった。


「ラング・ド・シャは?」

 莉奈は、久々のクッキーに舌鼓を打っていた。

 焼き立てのクッキーなんか、滅多に食べられない。家でも、他のお菓子やご飯に埋もれて、作ってなかったから余計だ。



 ――サクッ。



 皆の口から、小気味良い音がした。

「ん!? 何だコレ!! 甘くてサクッとして旨い!!」

 エギエディルス皇子は、サクリとラング・ド・シャを口で割ると、口を押さえて味や食感を楽しんでいた。

「お……美味しい!!」

「食感が堪らないな!」

「同じメレンゲ菓子なのに、こうも違うのかよ!」

 ラナ、リック、マテウスは一様に驚きを隠せないでいた。

 先程のしゅわしゅわなメレンゲクッキーとはまったく違い、サクッサクッと歯に心地好い食感が伝わる。

 味はもちろん美味しいが、口に広がる食感が堪らなく気持ち良かったのだ。



「エドはどっちが好き?」

「……どっち」

 莉奈が、どちらが好みか訊いてみれば、エギエディルス皇子は、こっちはしゅわしゅわが良いとか、あっちはサクッとして良いとか真剣に悩んでいた。



 ―――くすっ。



 莉奈は思わず笑ってしまった。

 その悩む姿が、以前どのマティーニがいいか訊いた時の、兄王フェリクスにソックリだったからだ。

 


 

 アハハ。兄弟揃って可愛い。



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