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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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212/676

212 和解



【黒狼宮】は【白竜宮】とは違ってマッチョは見かけなかった。すれ違う人すれ違う人、皆スラリとしている。

 服装としては法衣ローブが多い。魔法を使う人は好んで法衣ローブを着るのだろうか。

 匂いは薬草の匂いなのか、時折葉っぱの匂いがした。それに混じってお香の様な匂いもする。白竜宮とは匂いからして全然違う。

 女性も割りといる。だが、ぽっちゃりはいない……育て甲斐がありますな。ふふっ。



「お前……ロクな事考えてないだろう?」

 莉奈がキョロキョロしながら、妙な笑みを浮かべていたからだ。

「え? 失礼じゃない? ズンドコ皇子」

「ズンドコ……もはや何一つ合わせる気がねぇとか」

 敬称がないのは今さらだが、頭文字すら合わせる気のない莉奈に、呆れを通り越して笑うしかない。どっちが失礼なんだ。

「ん? 今さらだけど、先触れ的なモノは必要だったかな?」

「すっげぇ、今さら」

「まっ。いっか」

 アポイントをとってはなかったけど、エギエディルス皇子が一緒にいるし、良しと判断した。ダメな時はダメで仕方がない。出直せばイイ。


「……」

 本当は良くはないんだぞ? とエギエディルス皇子は複雑な表情をした。異世界から飛ばされて来た彼女だからこそ、同情もあり皆が優しいのだ。

 ……が、莉奈に関してはそれだけではない気がする。

 莉奈はふと気付いたら、心の隙間にヒョイと入っていて、他人な気が全然しない。そう感じるのはたぶん自分だけではないハズ。

 

 異世界の人間が皆そうなのか、莉奈がそうなのか比べる事は出来ないが……。コイツが特別な様な気がしていた。

 エギエディルス皇子はそんな事を考えながら、楽しそうにしている莉奈を見て小さく笑っていたのであった。




 ◇◇◇




「不便はありませんか? リナ」

 魔法省長官の執務室に入ると、長官タールが優しい笑みを浮かべ出迎えてくれた。

 この世界に来てから、タール長官はものスゴく気遣ってくれる。自分の部下が仕出かした事だから、というのもあるのかもしれない。

「お気遣いありがとうございます。でも、タールさんをはじめ皆さんが、支えてくれてますので大丈夫です」

「なら、いいのですが。もし何かあったら、遠慮しないで言って下さいね? 1人で抱えない様に」

 タール長官は、そう言うと莉奈の頭を優しく撫でた。

 シュゼル皇子にも撫でられた事もあったけど、あれは背筋がゾワリとした。だけど、タール長官に優しく撫でられると、なんだかこそばゆい。



 それはそうと、先程から部屋の端に立つ人達が気になっていた。

 顔に見覚えがあるのだ。この人達……もしかしなくても、エギエディルス皇子と一緒に自分を【召喚】した人達だ。

「「「わ……私達も、お力になる事があれば言って下さい!!」」」

 どうしたらいいのか分からず思わずジッと、見てしまったので "魔導師" 達が先に口を開いた。

 どうした態度をとったら良いのか、そう感じているのは莉奈よりも "魔導師達" なのかもしれない。

「なら。マヨビームを開発して下さい」

「「「は?」」」

 自分達の犯した重罪に猛省し、償える事なら出来る限りの事はするつもりではいた……が。"マヨビーム" とはなんなのだろうか。

「お前……マジで一旦マヨネーズから離れろ」

 半ば真面目に言った莉奈に、エギエディルス皇子が呆れ返っていた。




 ◇◇◇




 莉奈のいう "マヨビーム" はともかくとして、マヨネーズがなんなのか説明をタール長官達は聞いた。そして、応接用のテーブルの上には今、マヨネーズの入った小皿が置いてある。

「これが、マヨネーズですか」

 マヨネーズを初めて見たタール長官が、興味深く小皿を見ていた。この薄黄色いクリームがマヨネーズかと。

「じゃがいもに付けて食べると、すげぇウマイ」

 エギエディルス皇子が、瞳をキラキラとさせていた。

 味を思い出したのだろう。余程気に入ったみたいだ。

「じゃがいもに付けて食べてみて下さい」

 タール長官がチラリと見たので、莉奈は茹でたじゃがいもをマヨネーズの横に出した。

「皆さんも、是非」

 魔導師5人にも勧めた。

 わだかまりが残るかな……と思っていたが、実際こうやって会ってみれば、憎めなかった。反省しているのは目にも明らかだったし、私のために何かしたいという気持ちも伝わっていた。

 それに、エギエディルス皇子を許しているのに、彼等を許さないなんてオカシイ話だしね。

「「「いっ……いいのですか!?」」」

 お伺いを立ててはいるが、表情は明らかに嬉しそうだ。

「どうぞ」

 そんな5人に莉奈は、笑顔が自然と漏れた。

 イヤミの1つでも言ってやろうと、以前の自分なら思っていたかもしれない。だけど、今の彼等の態度をみたら、そんな事をする気持ちにはなれなかった。

 それだけ、今過ごしているこの王宮が、充実しているからなのだろう。




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