193 莉奈、竜騎士団入団?
「……番が逃げるとか……笑える」
腰に手をあてているフェリクス王は、下を向きまだ肩を震わせていた。
莉奈の番が一目散に逃げたのが、面白くて可笑しいらしい。
「陛下が余計な一言をおっしゃるからでしょうが!!」
一応抗議はしておく。決して自分のせいではない。
「お前……なんつータイミングで腹の虫を鳴かすんだよ」
エギエディルス皇子が、腹を抱えていた。
あのタイミングはないわ~と兄王と2人で爆笑している。
「勝手に鳴ったんだから仕方がないでしょ!!」
自分だって別に、好きで鳴らした訳ではない。
気付いたら鳴っていたのだから仕方がないのだ。勝手に鳴ったものをどうやって止めるのか、逆に訊きたい。
「大体なんで、私が竜を食べるみたいな話が浸透してるのかな!?」
王だけでなく、王竜にも抗議する。この間、あれだけ弁解して理解しあった話ではなかったのか。
「人の口に戸を立てられん様に……竜の口にも戸は立てられん」
王竜は実に愉快そうに笑っている。
要はあの場にいた竜達が、噂話として広めた……という事か。筆頭はこの王竜に違いない。
「立てろよ!!」
と、莉奈が再度抗議をすれば―――
「「無理だな」」
と、人と竜の王達がさらに笑った。
止める気はまったくないらしい。もう最悪だ。
◇◇◇
「リナ!! お前ならやってくれると信じていたぞ!!」
莉奈が、ウンザリした様子で白竜宮に戻ろうとしたら、いつの間にか来ていたゲオルグ師団長がいた。あの咆哮で集まっていたのか、気付けば辺りは人だかりである。
莉奈の両手を掴み、これでもかって程喜びブンブンと振ってくれた。
「はぁ……」
何をやってくれると信じていたのかが、良く分からない。
……っていうか。もしかしなくても、腹の虫をこの人達に聞かれていたのでは? という方が恥ずかしい。
「これで晴れて、お前も竜騎士団の一員だな!!」
そう嬉しそうに言ったかと思えば、莉奈を抱き上げ自分の肩に乗せた。
その姿を見た近衛師団兵達から、途端にわぁーっと地響きの様な大歓声が上がる。
……は?
もう、莉奈には思考が追い付かなかった。
彼が何を言っているのか、何故歓声が上がっているのか、何故肩に乗せられたのか、さっぱり分からなかった。
唖然呆然としている間に、完全にお披露目状態になってしまっている。
「あぁ。そうなっちまうのか」
フェリクス王は、面倒くさそうに頭をガシガシ掻いていた。
近衛師団かどうかはともかく、竜に選ばれた時点で竜騎士団の一員になった……ともいえてしまうからだ。
王自身が陰ながら支える支えない以前に、莉奈は知らない内に自分で自分の地位を、すっかり確立させてしまっていた。
もはや、自分や弟達が少し甘やかした所で、誰も文句は言わないだろう。
フェリクス王は、バカバカしくさえ思えてきた。
この女は……自分達の庇護など必要なかったのでは……と。
竜のいる広場では、史上初の女性の竜騎士団員に、ちょっとしたお祭り騒ぎである。
「……家に帰りたい」
莉奈は口を半開きにし、魂を何処かへ飛ばしていた。
何がそんなにめでたいのか、そして何故こうなったのか、考えたくもなかったのだ。現実逃避を決め込んだのである。
「絶っっ対。俺も番を見つけてやる!!」
そんな様子に、さらに闘志を燃やし始めたのか、エギエディルス皇子は拳を力強く握っていた。




