表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

170/676

170 芋虫



 莉奈達が王宮に戻ってから、小1時間後――――。



 ゲオルグ師団長率いる竜騎士団が帰還した。王命がなければ近衛師団兵な訳で、ものスゴくややこしい。


 そんな事を考えながら、フェリクス王達に呼ばれた莉奈は、慌ただしく王宮の裏庭に向かっていた。

 裏庭とはいえ、手を抜いたりする事がないらしい。いつ見ても手入れが行き届いてあり、草花がキレイで雑草がまったくない。

 この間、ここで拾った藁的な草は、鳥でも運んで来たのかもしれない。


 莉奈が裏庭に着くと、フェリクス王も含め全員が待っていた。

「…………」

 王より後に到着とか……いくらチタン合金のメンタルの莉奈でも、複雑な心境であった。いや……別に待ち合わせしていた訳ではないし、なんだったら何時に来いと言われていた訳でもない。

 だけど、自分以外が揃っていて、後から来た自分を全員が見る。この視線がなんだか痛い。



「お待たせ致しまして、大変申し訳ありません」

 一応王達が見えた辺りから小走りに向かうと、深々と頭を下げた。正直走りたくはなかったけど、皆が一斉に "来たな" って表情で自分を見ているのに、ゆったり歩いて行ったら……お前何様だよ? となるに違いない。

 そんな事をしても許されるのは、ここにいる人達より身分の高い者だけ……要はいないという事だ。


「こちらこそ、お忙しいのにお呼びだてして」

 シュゼル皇子がほのほのとしている横で、王がアイツが忙しい訳ないだろう? って表情かおをしている。



 ム・カ・つ・く!! あのニヤついた顔を殴りたい。



「ロックバードの件ですよね?」

 殴りたい気持ちを微塵も出さずに、莉奈は笑顔で訊いた。ゲオルグ師団長もいるのだから、そういう事なのだろうと察する。

「あなたの【鑑定】を信じていない訳ではありませんが、確認も兼ねてお願いします」

 シュゼル皇子は軽く頭を下げてきた。市民にも普及していくのだ、何度も確認するのは当たり前。莉奈は改めてお願いする、シュゼル皇子には頭が下がった。

「ゲオルグ」

 シュゼル皇子がそう声を掛けると、ゲオルグ師団長は頷き、魔法鞄マジックバッグからロックバードをドスンと取り出した。相変わらずデカイ鳥である。



 皆の注目する中、ロックバードを【鑑定】すると、やはりモモ肉・ムネ肉のみ食べられる様だった。これで、安心してこの国の人達に普及、配給出来るだろう。



「ものはついでだから、これも【鑑定】してくれ」

 と言うとゲオルグ師団長は、魔法鞄マジックバッグから新たな魔物をドスンと取り出した。



 ……え?



 ……ええ――っ!?



 ――――うっわ……キモッ!!



 キモイんですけど――!?



 莉奈は思いっきり顔をしかめた。そして、自然と腕を擦っていた。鳥肌が立つとは、まさにこの事だった。鳥肌なんて人生に1度あったかなかったかくらいだ。本当にゾワリと、立つものなんだなと感心する。

 


 何が気持ち悪いかって?

 だってこれ……芋虫でしょ!! イ・モ・ム・シ!!



 胴回りは2・3メートルあるだろう、イ・モ・ム・シ!!


 大きなゲオルグ師団長でさえ、丸飲みするだろう大きさの芋虫だ。なんでこんな物捕ってくるのかな? 何に使えるのよ【芋虫】の魔物なんか。莉奈は口にこそ出さないが、ブツブツと心の中で文句を垂れていた。

 

 芋虫と違うと云えば、体には数本の触手。その先には太く尖った爪が生えている。この触手で地をガッシリ掴んだりして、歩く? 這うのかもしれない。

 よく見るとうっすら開いた口には、小さい歯がいっぱい生えていた。人間と違い2・3列に生えているのだ。そして、その口周りには無数の触手。

 草食系では無さそうである。とにかく気持ちが悪いの一言に尽きる。


「鑑定するのは構いませんけど……【食用】と出たら "コレ" 食べるんですか?」

 と全員をまんべんなく見てみる。この芋虫を鑑定する意味を知りたい。食用と出たら出たでどうするのかな? 私は絶っっっ対に食べないからね?

「……いやいやいや」

 ゲオルグ師団長が、手を力強く左右に振っていた。そういうつもりで【鑑定】をしてもらおうとしていた訳ではない様だ。そして、食べる事を想像して気持ちが悪くなったのか、ブルリとその大きな身体を震わせた。

 近衛師団の人達も見たら、首を大きくブンブンと横に振り、鳥肌でも立ったのか腕を擦っていた。皆、食べる気ではないらしい。



「この魔物……爪とかに毒があるのだが、詳しく鑑定する機会がないから、今後の参考に出来ればと……」

 莉奈が怪訝そうに見たものだから、ゲオルグ師団長は慌てて否定し本来の目的を教えてくれた。

 鑑定士が少ないので、イチイチ鑑定には回さない。鑑定士も鑑定する以外の仕事も持っていて暇ではないからだ。

 だから、過去の軍部の人達が調査したり経験した記述を、そのまま信じる余地しかないのが現状みたいだ。



「ふ~ん?」

 食べたければ食べればいいんじゃないかな? と思いつつ莉奈はこの芋虫を鑑定して視る事にした。




 【キャリオン・クローラー】

 湿気のある処を好む性質の魔物。

 触手に生えた爪は、岩場をも突き刺し天井や壁をもよじ登る。


 〈用途〉

 口周りの触手、触手の先に生えた爪には、強い神経毒がある。

 武器に塗布すれば麻痺毒としても使用可。服毒すれば強い麻痺毒により死に至る事もある。


 〈その他〉

 食用ではない……が心臓は食用可。

 血はポーションと混ぜると解毒薬として使用可能。




「…………」

 莉奈は絶句した。まさかの【食用可】。



 ……え? キモッ! 食べられるの!?



 誰がなんの為に食べるんだよ!!



 ……芋虫……超怖――――いっ!!




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ