169 ポテトチップスといえば?
「うっま――っい!!」
早速出された、ククベリーのミルクジュースを飲んだエギエディルス皇子は、やっと息を吹き返した様だった。喉も渇いていたのか、気持ちが良いくらいにゴクゴク飲んでいる。
「俺には、ただの水かよ」
フェリクス王が不服そうにグラスを指で弾いた。弟にはジュースが出てきて、自分には水という扱いが気に入らないらしい。
「レモン水でもお作りしましょうか?」
本気で不服の声を上げている訳ではなさそうだが、イマイチ不満なのは確かみたいだ。その姿が、なんだか可愛いと思うのは私だけだろうか。
「好きじゃねぇ」
肘をついて眉をひそめた。どうやらレモン水は嫌いらしい。
「なら、冷たい紅茶でよろしければ、お出し出来ますが?」
エギエディルス皇子に魔法で作って貰った氷で冷やした、アイスティーが魔法鞄に常備してある。ジョギングの後にでも飲もうかと、用意してあったのだ。
「ストレート」
「承知致しました」
莉奈は苦笑いしつつ、アイスティーを出してあげた。もちろんストレートティー。濃いめのアールグレイだ。
「……ウマイな」
普段はほとんど温かい紅茶しか出てこない。それをイベールや自分で冷やして飲む事はあるが、莉奈の注いだアイスティーは別格だった。フェリクス王はこのアイスティーをお気に召した様である。
「よろしければ……こちらも御賞味下さい」
莉奈は続けて、先程作ったポテトチップスを取り出した。身体を動かした後なら、塩気も欲するハズ。
味は薄塩と塩胡椒、そして粉チーズとバジルを合わせた3種類である。
「なんだよソレ!!」
完全復活したエギエディルス皇子が、パタパタと兄の向かいに座った。新しい食べ物に興味津々だ。
「ポテトチップス」
「ポテト? 甘いのか?」
見ただけでは、塩辛いのか甘いのかも分からないエギエディルス皇子は、わくわくしながら訊いてきた。
「甘くはないよ。黒い粒が掛かってる方は、胡椒だから少し辛い。後はただの塩とチーズ」
「ちぇ~~。甘くないのかよ」
お菓子=甘いと思っていたのか、少し残念そうなエギエディルス皇子。そんな彼には小さく笑ってしまった。
「甘くはないけど、美味しいよ?」
莉奈はエギエディルス皇子の隣に座ると、塩胡椒味をつまんで食べた。
―――パリパリパリ。
胡椒がピリッとして、美味しい。炭酸が欲しくなる味だ。エギエディルス皇子は、甘いお菓子が欲しかったのだが、ポテトチップスを渋々ながら口に運んだ。
「……んん? 何この食感!! すげぇパリパリしてウマイ!」
予想を裏切る美味しさに、エギエディルス皇子は御満悦だった。うす塩味を次から次へと口に運んでいる。
「塩辛いお菓子ですから、陛下も是非」
と莉奈は薦めた。もちろん、ピリッとする胡椒味を。王は酷く興味なさそうに仕方なく、ポテトチップスを1枚口に運んだ。
「……っ」
興味がなかっただけに、驚いているのが目に見てとれた。塩辛いお菓子なんて初めてなのかもしれない。
「どうですか?」
2枚目を手に取るのだから、気に入ってくれたとは思う。だが、やっぱり言葉で聞きたい。
「……エールに合いそうだな」
「チーズの方ならワインでも合うと思いますよ?」
塩気はやはり飲み物、お酒を欲する様だ。
「そうか」
フェリクス王はうっすら口元を綻ばせると、胡椒味のポテトチップスとチーズ味のポテトチップスがのったお皿を、スッと自分の魔法鞄に入れた。
「なっ……! フェル兄、なんでお菓子を鞄にしまうんだよ!!」
それを見たエギエディルス皇子が、椅子から立ち上がって猛抗議した。まだ自分がうす塩味しか食べてないのに、鞄にしまわれたからだ。
「これは菓子じゃねぇ……ツマミだ」
「ツマミじゃねぇ! お菓子!!」
「黙って塩味食ってろ」
「んなの……横暴だ――――っ!!」
エギエディルス皇子が叫んだ。なんだかしらないが、兄弟による妙な小競り合いが起き始め、莉奈は仲が良いなと笑っていた。




