163 真珠姫
……え? 妃?
……どゆこと?
莉奈は「ん゛ん~」と理解が出来ず首を捻りに捻りまくっていた。
「白いの……勘違いするな」
フェリクス王はそんな莉奈に笑いつつ、竜達の短絡過ぎる考えに呆れていた。
何故かたわらに女を連れて来ただけで、"嫁" だ "妃" だとなるのかと。
「勘違い……?」
「そうだ」
「あなたが、女性をここへ連れて来るなんて、天変地異の前触れか、妃の紹介以外に何があるのです?」
薄笑いを浮かべた様な白い竜が聞き返す。王なら幼少の頃からすでに婚約者がいるのが普通だが、王どころか宰相にもいない。
その王が女性を連れて来て、自分の竜に紹介した。ならば必然的に特別な人なのでは? と考えるのが流れというもの。
「何もねぇよ……っていうか天変地異って何なんだよ?」
白の竜にまでヒドイ謂われように、フェリクス王は渋面だった。
「そのままですよ」
と白の竜が言えば、後ろに集まっていた竜達も、小さく首を縦に振っていた。そんな様子に、フェリクス王は舌打ちをする。
「……そんな事より」
「そんな事より……!? お前、ホント……」
エギエディルス皇子は頭を抱えた。自分の事でもあるのに気にもせず、どこまでもマイペース過ぎる莉奈に、返す言葉がない。
「白いのとか黒いのとか……竜に名前はないの?」
と不思議そうに訊けば、漆黒の竜こと王竜がフンと鼻で笑った。
「我は飼い犬ではないのだ、名などいらぬ」
え? 偉そうに言ってますけど……。
日本では、"クロ" も "シロ" も犬や猫に付ける名前なんですけど?
と喉から出かかった言葉を、ゴクリと戻した。"知らぬが仏" かもしれないと感じたからだ。
「名前がないと不便では?」
呼ぶ時はどうするのかな? と思う。
「……黒いの」
「人の王」
フェリクス王と竜の王は、ほぼ同時に莉奈に返した。
……もしもし? どうなのよ、それ?
莉奈は呆れていた。
本人達がイイのならいいけど、ペットではなくても名前くらい付けたって良いと思うのだけど。人間だってあるのだし。
「……白の竜なんて、鱗が光に反射して七色に見えてキレイなんだもん、名前はともかく【真珠姫】とか付けたら絶対可愛いのに……」
とブツブツ莉奈はボヤいた。白の竜の鱗は純白ではなく、光が当たるとホタテの貝殻の内側みたいに、キラキラと色んな色を見せてくれていた。
なのに、"白いの" とかモノじゃないんだからと思う。
「む……娘よ!! 今なんと言いました!?」
その瞬間バッと白の竜が、ものスゴい勢いで見てきた。莉奈のボヤきを聞いていたみたいだった。
「え? あっすみません、余計な……」
「今なんと言ったか訊いているのです!!」
いらぬ事を言ったかな……と慌てて謝ろうとしたのだが、食い気味に白の竜が訊いてきた。顔が近過ぎてふぅふぅと生暖かい鼻息が当たる。
「真珠……姫?」
の事かな……と首を傾げれば、白の竜の表情にパッと花が開いた。
顔の周りには、花がいっぱい咲いて見える気がするから不思議だ。
――――ピュルル~~。
白の竜が、口笛の様な小さな声で可愛く鳴いた。
「……大変気に入りました」
「へっ?……ありがとうございます?」
なんだか分からないが、白の竜は【真珠姫】という呼び名をものすごく気に入った様だった。シュゼル皇子の竜に、勝手に名前を付けてしまったが、当人が気に入ってくれたのならいいか……と莉奈は苦笑いする。
「「「「「…………っ!!」」」」」
遠巻きに見ていた軍部の人ならず、これにはさすがのフェリクス王も、目を見張っていた。
何故ならば、名を嫌う竜に呼び名を付け、さらに歓喜の声を上げさせたのだ。莉奈はまったく気付いてはいないが、やっている、させている行動すべてが異例中の異例なのだ。
その場にいた近衛兵や軍部の人達は、莉奈に自然と頭が下がり、尊敬の念さえ抱いていた。
何の身分もない少女に、皆は何故か膝を折りたくなる心情にさえ、かられていたのであった。
書籍化出来たのも皆様のお陰です。ありがとうございます。
ヽ(・∀・)ノ♪




