157 エリート中のエリート
【竜騎士団】
少数精鋭ながら、世界最強の部隊である。
他国では魔物と呼ばれる【竜】を信頼関係という、稀な関係で結んでいる。契約こそはするが、主従関係ではなく信頼なのだ。
竜が騎士を選び、信頼した騎士のみを背中に乗せるため、竜に選ばれし者のみが、竜騎士団として配属される。
軍部の人・魔法省の一部の人が、王宮などを警護・警備兵として配属。その中の精鋭が【近衛師団】に所属。
さらにその中から竜に選ばれし者が【竜騎士団】とされる。
つまりはエリート中のエリート。
普段は近衛師団兵として配属されているが、王命を受けると竜騎士として動くのである。
ゲオルグ師団長は、近衛師団長でありながら竜騎士団の団長でもある訳で……いわば軍部最強のトップなのだ。
◇◇◇
朝食をモグモグと食べながら莉奈は、エギエディルス皇子に説明を受けて「ほぇ~」としていた。竜がいるだけでも興奮しているのに、話がスゴすぎて頭が追い付かないのだ。
そして "あの" ゲオルグ師団長が、軍部最強のトップなんて全然結び付かなかった。
「……お前……アホ面やめろよ」
口を半開きのままの莉奈に、エギエディルス皇子が言う。
「 "アホ" は余計だから……ちなみにエド、竜は?」
「いねぇよ!」
横をプイッと向くと、ふてくされた様に返してきた。
シュゼル皇子も信頼関係を結んだ "竜" が宿舎にいるのだそうだ。どんな竜なのか、スゴく興味がある。
兄2人が竜を持っていて、自分だけが持っていない。こういうのも、兄に対しての劣等感が湧くんだろうなと思う。
「竜って……何基準で人を選ぶの?」
それにはツッコまないで話を続けた。竜が選ぶのなら基準がありそうである。
容姿? 性格? 匂い? なんなのだろうか。
「……わかんねぇ」
「……わかんないのか」
「フェル兄は……竜が従わざるを得なかったんだと思うけど……1年通って気に入られたヤツもいるし……なんだろうな?」
エギエディルス皇子は、肘をついて考えていた。
彼いわく、竜を持ちたいのなら "ネグラ" に行けば、とりあえずはいるとか。ただ、いる場所のほとんどが崖、行けたとしても敵視される場合もあるので、命を落とす場合もある。
会えたとしても、会ったその場で契約を結ぶ事もあれば、何年越し……という事もある。竜の気持ちを惹き付けた者が、なるのかもしれない。
だが、竜と契約出来ればその騎士が亡くなるまで、添い遂げるのだそうだ。
竜が従わざるを得なかった事の方が、気になるんですけど?
まぁ……魔王様に従わないモノはいないのか。
莉奈は、驚くべきか怯えるべきか……それとも敬服すべきか悩んでいた。
「良かったわねリナ」
紅茶を淹れてくれたラナ女官長が、ニコリと笑った。竜に会いたくても会えないのがほとんど。ラナ自身も実際に見たのは遠くから1度だけだった。
「竜なんて……怖くないの?」
モニカが眉を顰めた。犬や猫ではないのだ、いくら誰かと契約している竜だとしても、襲われない保障は何もない。
「見た事がないから、怖がり様がない」
そのものを知らないのだから、何がどう怖いのかも分からないのだ。
「リナのそういうところ、スゴいわよね」
ラナ女官長が感心していた。何事にも臆さないその精神は、尊敬に値する。
「だってこの世で1番怖いのは "王" であって、竜じゃないでしょ?」
と莉奈は、断言した。
初めてフェリクス王に逢った時程、恐怖で鳥肌が立つ事はないだろう。
「「「…………」」」
その言葉には、エギエディルス皇子達は沈黙で返した。
是とも非とも言えない。一応立場もある3人に、それを答えられるだけの気概はなかった。




