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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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155 へい! おまち!!



「大変長らくお待たせ致しました」

 莉奈はその間も正座をし、魂が抜けてしまっている様な皆を横目に、王達のいるテーブルの上に出来立てアツアツの"からあげ"を置いた。

 皆には悪いが、まだしばらくは、そのままでいてもらう。"からあげ" を食べて、さっさとお引き取り願うのが手っ取り早いと、判断したからだ。


「……見た目は……普通のからあげと変わりないのですね? 匂いもスゴくイイ匂いですし」

 からあげを見たシュゼル皇子は、感慨深げに見ていた。これが "アノ " ロックバードなのか……と。

「……あ~調理前の肉を、先にお見せするべきでしたね」

 莉奈は謝罪した。まぁ、見せたところで違いなんて分からないだろうけど。

 だって、普通に考えたら皇子は調理前の生肉を見ない。そして切り分けられたら鶏肉と大差ないし、比べない限りは分からないのだ。切る前なら大きさが段違いだけど。

「構いませんよ……それより頂きましょうか」

 とシュゼル皇子がニコリと微笑めば、莉奈もナゼか平然と着席し「いただきます」……とからあげにフォークを刺した。



 ……はぁ!? リナ!?



 ……お前はナゼ、当然の様に王族に混じっているんだ!?



 皆は驚愕し口をあんぐりと開けていた。メンタル以前の問題、非常識極まりない行為。だが……ナゼかそれを王達は許可している。

 ……という事は、莉奈の行動を "非常識" と考えている我々の方が"非常識"になる訳で……。


 もはや莉奈に関しては、自分達の常識を当てはめるのはやめよう……と改めて思う皆なのであった。




 ◇◇◇




「んんっ!?」

 シュゼル皇子はからあげにカブリつくと、目を見張った。程よいニンニク風味のロックバードのからあげは、鶏肉より肉の味が濃厚で想像以上に美味だったからだ。

「はふっ。塩ニンニク……すげぇ旨い!!」

 エギエディルス皇子は同じ様に、からあげを口に頬張ると途端に頬が緩んだ。

 莉奈が肉にすりおろしたニンニクを、揉み込んでから揚げていたのは見ていたが、こんなに美味しくなるとは思わなかったのだ。

「…………っ!」

 莉奈の隣に座るフェリクス王も一口カブリつくと、皆に気付かれないくらい小さく驚いていた。

 まずは鼻に抜けるニンニクのイイ香りが、そして以前食べた鶏肉のからあげとは違う肉の弾力性。最後に噛み締めれば噛み締めるほど、肉の旨味がジュースとして出てくるのだ。

 あの魔物……ロックバードが旨いなんて驚愕ものである。


「いかがですか?」

 莉奈は訊いてみた。莉奈的にからあげは大正解だと思う。衣のカリカリと心地イイ弾力のお肉。なにより美味しい肉汁が外に流れ出ないから、旨味が逃げず口一杯に広がる。最高である。

 ニンニク醤油、マヨネーズ、酢胡椒……あ~色々試したい。

「はぁ~~……大変美味しいですね。肉の味が濃くジューシーで……これがあの、ロックバードと思うとなんとも複雑ではありますが」

 しみじみと言ったシュゼル皇子。嘴やその鋭い爪で攻撃してくる、凶暴なロックバードがこんなにも美味しいとは。

「あつっ!……こんな……美味しい肉……はふっ……捨ててたんだぜ?」

 ガツガツと食べながら、エギエディルス皇子は言った。

 莉奈は良く食べるな……と感心していた。兄2人と違って先程、ソテーとチーズオムレツを食べている。なのに兄に負けじと頬張っていたのだ。

「そうですね? 勿体ない事をしていましたね」

「だろ!!」

 シュゼル皇子は、あまりにも嬉しそうに弟が話すものだから、食べ物を口に含みながら話すものではない……とは言えなかった。

 弟がなんだか、自分の功績の様に嬉々としていたからだ。自分が狩ってきたロックバードが、こんなにも美味しいので嬉しいのかもしれない。

「……リナ」

 かたんとフォークを置いたフェリクス王が、隣に座る莉奈に声を掛けた。

「なんでしょう?」

「お前の【鑑定】は何が視えている?」

 最大の疑問を投げ掛けた。

 【鑑定】は人各々で違う。基本はその物の名称が分かるのみ、後はオプションなのだ。それも付かない人がほとんど。ならば、莉奈には何が視えているのか。

「……え~と……そのモノが食べれるか食べれないか……ですかね?」

 ちなみに目の前にある水の入った、このグラスを【鑑定】すると……



 【タンブラー】

 シュトラス産の硝子で造られたグラス


 〈用途〉

 主に水などの飲み物を注ぐ容器


 〈その他〉

 食用ではない



 毎回思うけど "食用ではない" ……いるのかなこの一言?

 ……食べれないのは分かってるつーの!!

 【鑑定】をするたびに、バカにされてる感が半端ないんですけど?



 莉奈は、思わずグラスを睨みつけていた。

「……ちなみにですが……そのグラスはどの様に?」

 シュゼル皇子が、グラスを睨んでいる莉奈に訊ねた。鑑定で何がどう視えているのか、知りたいのだろう。

 "言いたくね~" とは言えないので、諦めた様にボソボソと鑑定で見えた事を教える。もちろん……"食用ではない" 事も。

「……えっと……食べられないと分かっているモノでも、そう表記されるのですか?」

 少し驚いた後は、笑いを堪えている様な表情をしている。

「そう……ですね」

 コンチキショウ……と内心自分の鑑定にどついておく。

「……お前……【鑑定】も面白いな」

 とフェリクス王は、ニヤリと口端を上げた。



 ……だ~か~ら~言いたくなかったんだよ!!



「そんな事をおっしゃるのなら、陛下にカクテルはあげません」

 莉奈は、頬を膨らませてプイッと横を向いた。大体鑑定 "も" ってなんだよ!? "も" って!

 バカにされたし~!! 異世界のバカヤロウ!!


「…………っ」

 その発言に、フェリクス王は少し驚きククッと笑っていた。

 自分にそう返せるコイツは、やはり面白いと改めて気に入った様だった。

「では、兄上の分は私が頂きましょうか?」

 とすかさずシュゼル皇子が、満面の笑みで言った。彼もまた、莉奈がする兄や弟、自分に対する不敬も "面白い" が先立って、許してしまっていた。

「なぜそうなる?」

「だって……余るではありませんか」

 兄が睨もうがなんのその、ほのほのと微笑み返すシュゼル皇子。

 ただ水を飲んでいるだけなのに、なぜかその姿は優雅である。

「ちなみに "からあげ" にエールは最高ですよ?」

 最近知ったのだが、"エール" というお酒が酒倉にあった。日本でいうビールの事だった。炭酸は弱めみたいだが味は同じ……なら、ハイボールに並んで揚げ物最強のコンビだ。

「……持ってこい」

 正座をしている皆をチラリと見ると、フェリクス王が言った。

「兄上……」

「……どうぞ?」

 シュゼル皇子が咎める前に、フェリクス王の前にエールの入ったタンブラーをドスンと置いてあげた。そうくるだろうと読んで、キンキンに冷えたエールを魔法鞄(マジックバッグ)に入れておいたのだ。

 まぁ、王は未成年の莉奈に言った訳ではなく、正座をしている誰かしらにだったのだが。用意してあるから出してみた。


 フェリクス王は、すぐに出てくると思ってなかったのか、驚いていた。うん! してやったり感がスゴく気持ちいい。

 さっきまでカクテルは飲んでたし、今さら酒はダメもないよね?

 テーブルには "ビールにからあげ" があり、なんだかこの一角だけ見れば居酒屋的な感じである。

「リ~ナ~」

 ささっと莉奈が出したため、シュゼル皇子が咎めた。

「あっ、シュゼル殿下にはミルクセーキをどうぞ?」

 と目の前にドスンとトドメに出してみる。

「……仕方ありませんね」

 それをチラリと見ると、それはそれは素晴らしく眩しい、満面の笑みを返してくれた。



「「「「「…………」」」」」

 この国は王族までもが……莉奈に餌付……いや、丸め込まれている。

 未だ正座を余儀なくされている皆は、莉奈の周りに見えるハズのない後光が見えた気がした。気のせいかとゴシゴシ目を擦ったものの、ナゼか光っている様に見え自然と頭が下がるのであった。







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