153 私にも下さい
「「「大変申し訳ありませんでした!!」」」
もれなく全員謝罪した。
王、宰相の冷たい視線が怖かったのだ。
実際ただ見ていただけなのだろうけど、非が自分達にあるためそう見えてしまったのである。
「……はぁ……一体この国の体制はどうなっているのでしょうか? 少し厳しくしていかなくてはなりませんね?」
自分達をさておいて、完食してしまった臣下達にシュゼル皇子は、わざとらしく厳しい目を向けた。
「「「た……た、大変申し訳ありません!!」」」
平謝りするしかない料理人達。反論の余地はない様である。
味見をしたまでは良かったのだが、その後が大問題なのだ。プレゼンをするなら、試食は必須。それも王は差し置いてはいけないだろう。
「……まぁ、無いものは仕方がありませんよね。私のモノを調理して来ますので、国王陛下、宰相様はそのままでお待ち下さい」
莉奈は小さなため息を吐くと、王の許可もないのに勝手に立ち上がり、厨房へとテクテクと歩いて行った。
そう、実は莉奈、後で違う調理方法で食べようと、別に確保していたのである。
「「「…………へ?」」」
頭を下げていた皆は、現状をわきまえず思わず顔を上げた。
今、莉奈はなんと言ったのか?
「オイ!!」
皆の心の声を代弁した様に、莉奈の背中にエギエディルス皇子が声を放った。
「ん?」
「ん? じゃねぇよ! お前今なんて言ったよ!?」
「……何が?」
「ロックバード残ってんのかよ!?」
莉奈は確かに "私のモノを調理" と言った。この流れからして普段の鶏肉ではなく "ロックバード" の事だろう。
「残ってるよ?」
――――はぁ~~!?
両膝を折っている皆の心は、自然と一丸となっていた。
……残っているなら早く言え!!
莉奈が、しれっと悪びれもなく言った言葉に、叫びを上げた。なら皆が何故、顔面蒼白になる前に教えてくれなかったのか。料理人だけでなく、近衛兵、なんならここにいる全員が思っていたに違いない。
「なら、なんですぐ出さないんだよ!」
ウンウンと皆は正座のまま頷く。
「だって当然取っといてあると思ってたし、"コレ" は後で "からあげ" にしてエドと食べようと思ったんだもん」
と莉奈は不本意なのか、口を尖らせブツブツと言う。
「「「…………」」」
料理人達は唖然である。
まず、王、宰相の試食用を取っておかなかったのは、自分達の落ち度だから仕方がない。だとしても、すぐに助けてくれても良かったのではないか?
……そして自分達も "からあげ" にすれば良かった!……と。
エギエディルス皇子は、もう何も言う事はなかった。"自分のため" "からあげ" という魅惑的な言葉に、莉奈の後をピョコピョコとひよこの様に付いていく。
口元を緩ませない様に、一応は配慮はしたつもりだが……その浮き足でバレバレである。
「リナは……少しエコロジーを、甘やかし過ぎではありませんかね?」
「…………」
コイツはいつまで、末の弟をエコロジーと呼ぶのか、そして何をもって甘やかし過ぎと言うのか、フェリクス王は呆れていた。
そんな兄の冷めた目など気にしない、マイペースなシュゼル皇子は、エギエディルス皇子の席にあるドリンクを見つけた。
「……リ~~ナ」
興味しかないシュゼル皇子は、本能の赴くままに莉奈を呼ぶ。
「私にも、このワイングラスに入っている飲み物を下さい」
と、ミルクセーキやククベリーのジュースの入っているワイングラスを指差した。
何ですか? ではなく "下さい" と要求したシュゼル皇子に、莉奈は小窓から見て笑った。
"ナニ" かはとりあえずどうでもいい、とにもかくにも寄越せという事なのだろう。
「からあげと一緒にお持ち致しますね?」
と莉奈が言えば、シュゼル皇子は満足気に頷いた。
莉奈はそのシュゼル皇子の向かいで、心底ウンザリして横を向いているフェリクス王を見て、苦笑するのであった。




