145 鳥の魔物
「それはともかく!! 魔物倒して来たから見せてやるよ!!」
エギエディルス皇子は興奮した様に早口で言うと、莉奈の手首を掴んで食堂へと連れていく。自分が頑張って倒した戦利品を、早く見せたくて仕方がない様だった。
皆はそんな姉弟の様に仲睦まじい2人の姿を、微笑ましく見ていた。
「……まぁ……見ろよリナ?」
一緒に討伐に行っていた近衛師団兵が、空気を読んでガタガタと食堂のテーブルやイスを端に寄せ始める。あっという間に莉奈とエギエディルス皇子の前には、ポッカリと20畳程の空間が出来た。
それを確認すると、エギエディルス皇子は魔法鞄に手を入れた。
―――ドシーン!!
エギエディルス皇子の魔法鞄から、するりと魔物が出てきた。その瞬間、重さからなのか床が地震の様に揺れた。
……え。
……えぇぇぇ~~!?
莉奈は、驚き過ぎて声が出なかった。
どうやら人は驚き過ぎると、口から声など出ないらしい。目と口を開くだけで、言葉が喉からまったく出ない。
「……ナ……ニコレ」
数秒後、莉奈はやっと声が出た言葉がそれ。
目の前にはエギエディルス皇子が出した、バカでかい鳥があったのだ。表現があっているかは分からないが……ゾウより大きい鶏。首の太いダチョウ? そんな感じである。
「……なんだこれ」
言い方が変わっただけで、同じ言葉しか口を紡げない。見たこともない "ソレ" に、何と言っていいかが分からないのだ。
「すげぇだろ? "ロックバード" っていう魔物なんだぜ?」
エギエディルス皇子は、少しだけ誇らしげに胸を張った。ネコが獲物を捕まえて、飼い主に見せるアレに似ている。
ひょっとしたら言葉にはしないが、莉奈に褒めてもらいたいのかもしれない。
「……エドが……倒したの?」
鳥の化け物……ロックバードをマジマジ見ながら莉奈は言う。半開きの口、嘴の隙間から長い舌が出ていて、目も開いたままだから死んでいるのだろう。少しずつ近寄りながらも、あまりの大きさに驚いていた。
「当たり前だろ? まっ少し手伝ってはもらったけど、止めは俺だぜ?」
フフンと至極ご満悦の様子だ。思わず近衛師団兵を見れば、その通りとばかりに、首を縦に振っていた。
という事は……エギエディルス皇子の言っている事は、嘘ではないのだろう。元よりエギエディルス皇子が、嘘をつくとは思わないけど思わず確認してしまった。
「……エド……スゴいね? ケガはない?」
莉奈は優しく、エギエディルス皇子の頭を撫でた。これだけ大きい魔物と戦ったのだから大丈夫かな……と。
「こんな雑魚に、ケガなんて負う訳がないだろ?」
呆れた様に言いながらも、なんだか表情は満足そうだ。
「エドは強いんだね」
莉奈は、感心した様にニコリと笑った。ちょっとだけ自慢気に言うエギエディルス皇子が可愛い……と思った。
「フェル兄には、到底敵わないけどな」
と苦笑いする。
魔王と比べたらイカンでしょ?
と、口からポロっと出そうだった。
「場数が違うでしょ? それに、勝負するモノでもないし……エドはスゴいよ」
莉奈は、エギエディルス皇子の頭を優しく撫でながら言った。
魔王と比べるのがオカシイ。それに誰が上で誰が下なんて、莉奈にしたらどうでもいい事だ。エギエディルス皇子が倒した、その事実だけで充分だ。
「……そ……うかよ!」
エギエディルス皇子は、莉奈に褒められて恥ずかしいのか、そっぽを向いていた。莉奈はソレが可愛らしくて、小さく笑っていた。




