134 却下
ちょっと待った……はいいが、その次の言葉を発しないゲオルグ師団長。"愛の告白" でもないのに、何故にそんなに "食べたい" が言えないのか。
「男なら、ハッキリせい!!」
莉奈は、イイ加減ハッキリしない、ゲオルグ師団長に言った。
それでも、この王宮を護る近衛師団の隊長か!!
「チーズオムレツが、食べたいであります!!」
「だが、断る!!」
ピシリと、敬礼して言ったゲオルグ師団長に、莉奈は、即刻却下。
忙しいのに、ハッキリ言わない男のためになんか、作ってやるものか。
「「えぇぇ~~~!?」」
ゲオルグ師団長の驚き悲しそうな声に混じり、ナゼか、ものスゴく驚いたエギエディルス皇子の声が……。
たぶん、言ったら作ってあげるものだと、思っていたのだろう。
フェリクス王は、そう来るとは思わなかったのか、横を向いて笑いを堪えていた。
「……では、失礼して……」
ゲオルグ師団長を退かして、扉を開けようとする莉奈に、ゲオルグ師団長がさらに慌てた。
「ハッキリ言えって言ったから、言ったのに!?」
ものスゴく、納得がいかない様だった。
「作るとは、言っていないでしょう?」
言ったら作るなんて、誰が言いましたかね?
ハッキリ言わないから、ハッキリしたかっただけですが……何か?
「……言って…………は……ない」
莉奈が、なんと言っていたかを、頭の中で反芻しながら呟いた。
そう……ハッキリ言えとは言ったが……言ったら作るとは、一言も言ってはなかったのだ。
「リナ……なんだか可哀想ですから、作ってあげたらいかがですか?」
シュゼル皇子が、ゲオルグ師団長の味方に、なってあげた様だった。さっきから必死で、可哀想になったのかもしれない。
ゲオルグ師団長は、瞳をキラリと輝かせていた。強い後押しがきた……と。
「では……シュゼル殿下のカクテルは後――」
「ゲオルグ、諦めなさい」
後回しにと莉奈が言い切る前に、シュゼル皇子が被せてきた。
最後まで言わせもしなかった。
「………………え」
あまりの早変わりに、ゲオルグ師団長は時を止めていた。
たった今、強力な味方が出来たのは……幻の様だった。
「リナも忙しいのですよ。男らしく諦めなさい」
「うぇぇっ!?」
シュゼル皇子の言葉に、ゲオルグ師団長は今度は変な声を上げた。先程、一瞬チラリと聞いた言葉はなんだったのか。耳も目も疑っていた。思考が追い付いていなかった。
「シュゼ兄……ひでぇ」
エギエディルス皇子は、兄のあまりの変わり様に呆気に取られた。
作ってあげろと言った口で、諦めろと言う……それも、1分も経たない内に。
「リナ、エギエディルスは後回しで――」
「シュゼ兄は、ひどくない!!」
エギエディルス皇子は、慌てて言い直した。
余計な一言で、要らぬとばっちりはゴメンだと。どうやら、こちらも後回しはイヤな様である。
「…………お前等」
フェリクス王は、部下にまったく譲る気もない弟2人に、呆れていた。ナゼ、そこまで食べる事に、執着する様になってしまったのか。
確かに、莉奈が作る飯は旨い……が、自分達はいつでも食えるだろう……と。
「不敬を承知で申しあげるならば、殿下お2人はいつでも作って貰えるのですし、今回ばかりはこのゲオルグに、お譲り戴きたい!!」
諦められないのか、2人の皇子の扱いが納得いかないのか、ゲオルグ師団長は不敬を承知で、声を上げた。
「「却下!!」」
2人の皇子は、即刻却下を出した。
「…………………………う゛」
ゲオルグ師団長は、二の句を飲み込んだ。
2人の皇子に、否と言われてしまえば、もはやそれを打破出来る手立てが、ゲオルグ師団長にはなかった。




