132 どの口?
「……オイ!! リナを揺さぶり殺す気か!?」
本気でヤバくなってきた莉奈を見て、エギエディルス皇子が止めに入った。入ってくれた。
「え? おや、失礼」
エギエディルス皇子に、言われゲオルグ師団長は、やっとその手を離した。脳ミソを激しく揺らされた、莉奈の意識が、飛び始めていた事にやっと気付いた様だ。
「大丈夫か、リナ?」
もはや、泡を吹く一歩手前な莉奈の顔を、エギエディルス皇子が、心配そうに覗いた。
「…………ダイジョバナイ」
本気で、揺さぶられていないにしても、頭が首がグワングワンする。さすがは軍人。
本気で揺さぶられていたら、間違いなく首がもげていたに違いない。
「ハハハ……。リナは大袈裟だな」
と声高々に笑うゲオルグ師団長。
ダメだこりゃ。
……とりあえず、笑っとけばどうにかなる……って思っているタイプだ。体型の差、半端ないんですけど?
私の頭、あなたのお腹の位置にあるの、わかってます……?
それくらい差があるのに、揺さぶったらダメでしょうよ。
「大袈裟違う」
莉奈は断言した。
マジでクラクラしているし。された事がないから、わからないのでしょうけど。
「仕方がないな……ほら、ポーションだ」
ゲオルグ師団長は仕方なさげに、はぁ……とため息を吐くと、腰に提げた魔法鞄からポーションを取り出した。
……そういう問題ではない。
莉奈は反論を諦め、無言でそれを頂き自分の魔法鞄にしまった。
いちいち、ポーションで済まそうとするこの異世界。確かに便利だけど、それに染まるとシュゼル皇子の二の舞だ。
使わなくても平気なら、極力使いたくはない。頂ける物なら、慰謝……保険としてもらいますけど。
「飲まないのかい?」
とゲオルグ師団長。使わずにしまったから、疑問に思ったらしい。
「酷い様なら飲みますよ」
「リナは、我慢強いんだな」
ハハハ……と高笑いしていた。
すみません、我慢させる様な行動……しないで頂けるかな?
「いやぁ、しかし、チーズオムレツはどんな味がするのかね?」
余程食べたいのか、まだ言うゲオルグ師団長。
だが莉奈は、作りたい気分ではない。
「卵とチーズの味がする」
「それぐらいは、想像出来る!! そうではないんだ!!」
そっけなく言った莉奈に、訴えるゲオルグ師団長。あくまでも、作りましょうか……と言わせたいらしい。
なんで、作って欲しいと素直に言わないのかね? 作りたくはないけど。
「そうなんですか? では陛下、殿下、私はこれで失礼致します」
こっちからは絶対、作りましょうか……なんて言わないからね?
莉奈は、ゲオルグ師団長の言ってる事を、あたかも知りません、わかりません……という体にして執務室から出ようとした。
「うわっ、うわっ、うわっ!!」
ゲオルグ師団長は、慌てて莉奈の右手首を掴んだ。
「………………あの?」
と白々しくキョトンとして見せる。止めた理由はわかってますけどね。
「どうして、わかってくれないんだ!!」
となんだか、眉毛をハの字にして切実に訴えている。
面倒くさいなぁ、察してちゃんかよ。
莉奈は、いよいよ面倒臭がり始めていた。
フェリクス王達は、ハッキリ言わないゲオルグに呆れていた。
「ゲオルグ……食べたいのなら、ハッキリそう言わなければダメですよ?」
やり取りを、微笑ましく見ていたシュゼル皇子が、優しく諭した。
「お前……どの口で言っている?」
先程、自分も言わなかったクセに、何を言っているのだ……とフェリクス王。
「この口ですが?」
何か? とシュゼル皇子はニコリ。
「……………………」
フェリクス王は、当たり前の様に言う弟に、文句も何も返す気力が起きなかった。




