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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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131 近衛師団師団長ゲオルグ




 ――――コンコン。



 莉奈が、そろそろ執務室から退出しようと、立ち上がった丁度その時、誰かが来た様だった。

「近衛師団師団長、ゲオルグ=ガーネット馳せ参じました!!」

 扉の外で、野太い声が聞こえた。

 警護兵ではなく、本人が直接、声を出した様だ。



 近衛師団!!



 莉奈は、内心興奮していた。

 警備兵達を見ていただけでも、怖いよりカッコいいとテンションが上がっていたのに……。近衛師団長だ、それが生で見れるなんて眼福ものでしかない。



 フェリクス王が執事のイベールに目配せすれば、無言で了承したと、扉を開けた。

「御兄弟、団欒の処、失礼致します」

 執務室に数歩入ると、ゲオルグ師団長は頭を深々と下げ、フェリクス王の言葉を待つ。



 うっわ……背高っ。



 莉奈は、一瞬ポカーンとしてしまった。

 第一印象はまずそれ。フェリクス王も、背は高いが、たぶんそれを上回るほどだ。200㎝はある。

 次にゴリゴリではないが、やはりイイ体躯をしていると思った。

 引き締まった筋肉が、服の上からでも見てとれる。さすが軍人。

 年は……40前後? 顔は失礼だが、普通。フェリクス王達と比べれば、誰でも普通だけどね。

 


「……兄弟、団欒でもねぇが……」

 顔を上げろと許可を出し、フェリクス王は、チラリと莉奈を見た後、シュゼル皇子も見た。

 莉奈と末弟はともかく、シュゼル皇子は、勝手に居着いていただけで、団欒していた覚えはないからだろう。

「失礼とは存じますが、そちらのお嬢さんが、異世界から来てしまったお嬢さんですか?」

 莉奈の存在に気付いたゲオルグ師団長は、確認も兼ねて訊いてきた。そう、時空間の歪みによって、異世界に来てしまった事になっている。

 だが、王の身辺に、異世界から来た娘とはいえ、見知らぬ女がいれば、色々と気になるのは当然だ。

「……あぁ」

 と莉奈を見たので

「リナ=ノハラと申します。以後、リナとお呼び下さい、ガーネット様」

 立ち上がり深々と頭を下げた。

 ちなみに、エギエディルス皇子が私を召喚したって事を知っているのは、ここにいる人達を除けば、魔法省長官のタール、ラナ女官長とモニカくらいだ。

 皇子と一緒に喚んだ魔導師達は、知っていて当然だから、頭数には入れないが。

 なぜ、召喚した事を公にしないか……というと、他国に知られると面倒だから……だそう。

 【聖女】を召喚しようとした……っていう事実が問題だとか。



 本当に、聖女を喚ぼうとしたのか? って話になると困るらしい。

 もしかして、本当は【勇者】を喚ぼうとしてたのでは? と要らぬ勘繰りをされては面倒。


 何故なら、魔物を殲滅出来るかもしれない勇者は、軍事利用も出来るからだ。本来、軍事利用が目的で、勇者を喚ぼうとして失敗。

 それをカモフラージュするために、聖女を喚んだ事にしていたのでは……と。


 事実無根だとしても、召喚儀式をしたのは事実だし、本当に聖女を喚ぼうとしていた事、それを証明する術が何一つとない。


 まぁ、フェリクス王がいる限り、そんな懸念もなさそうだけど。

 だって、勇者より遥かに強そうだし。だから、エギエディルス皇子も【勇者】ではなく【聖女】を、喚ぼうとしてた訳だから。

 余計な詮索はされない様に、火種は作らないに越した事はない。



「ハハハ……"様" は結構だ。リナ嬢」

 とその風体に似合うくらい、豪快に笑うゲオルグ師団長。



 ……リナ嬢!?



「いえ、ただのリナでお願いします」

 嬢なんか付けられても、背筋がゾゾッとするだけだし。

 そんな風に呼ばれた事がないので、ハッキリ言って、気持ちが悪い。

「では、リナ殿」

「呼び捨てで……」

 殿も、気持ちが悪い。

「ハハハ!……では、私の事も是非 "ゲオルグ" とお呼び下さい」

 ……なんでだよ。

「呼びませんよ。ゲオルグさんは、敬語も結構です」

 自分も呼び捨てでイイと言う、ゲオルグ師団長を一蹴した。

 なぜ、初めて会ったお偉いさんを、呼び捨てに出来ると思うかな?

 なおも、呼び捨てでイイという師団長に、さん付けで妥協してもらう。

「……ハハハ……謙虚なお嬢さんだ」

「…………はぁ」

 莉奈は気のない返事をした。

 謙虚とか、そういう話ではないと、思うんですけど。

「いやぁ、しかし……あなたのおかげで、食事が美味しい美味しい、皆リナに足を向けて寝れないと、感謝しているよ」

「さようでございますか」

 自分がこの世界の食事に、満足出来ずに勝手に始めたのだから、気にする必要はないのだけど……。

「部下が、この間食べたチーズオムレツが、至極旨かったと、自慢気に話すものだから、気になって気になって……」

 莉奈を、チラチラと意味ありげに見る。

 師団兵は警護兵と、兼任している人が多いとラナ女官長が言っていたから、たまたま部下が居合わせていたのだろう。

「……さようでございますか」

 訴えているだろう、ゲオルグ師団長をさらにスルーした。

「そうなんだよ……だから、気になって気になって!!」

 それを知ってか知らずか、強調してきたゲオルグ師団長。

 作れ、食わしてくれ……って、訴えてるに違いない。

「……さようでございますか」

 だけど……スルーする。

 だって、エギエディルス皇子のミックスジュースは作らなきゃだし、戻ったらカクテルも作らなきゃだし、これでも忙しいのだ。

「さようで、ございますんだよ!!」

 莉奈が、一向に "作りましょうか" と言ってくれないので、シビレを切らしたゲオルグ師団長は、莉奈の両肩をガシリと掴み、前後に揺らし始めた。

「あ~~」

 莉奈は、為すがままだった……というか、何も出来なかった。

 軍人であるゲオルグに、両肩をガッシリとホールドされ、揺らされ、逃げられる訳がない。



 これ、お子様にやったら絶対イカンやつ。



 脳ミソが揺れる~~~。




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