128 王様と王様
「……なんか、許可出たし……それ、飲んでみなよ」
兄2人の、妙なやりとりに苦笑いしつつ、エギエディルス皇子が改めて勧めた。
エギエディルス皇子も、長兄の反応が見てみたい様だ。
「王の俺が、許可が必要とか……笑える」
カクテルを手に取りながらも、呆れた様に笑っていた。
実際、国王陛下が否と言えば、従うのだろうが、それをしないのがフェリクス王なのだろう。
見た目とは大分違って、まったくと言っていい程、独裁制ではない。だから、市民に畏れられつつも、好かれているのだと思った。
「…………っ!」
"マティーニ" をゆっくりと一口 口に入れると、フェリクス王は目を少し見開いた。
カクテルとは何かも聞かされずに、口にしてみたのだが……。
想像していた物とは、全然違い、味わい深く美味しかったからだ。
莉奈が、短期間で酒を造れる訳がない。
だが、既存の酒をそのまま出すハズもない。
ならば、どう出る? と面白くはあったが、たいして期待もしてはいなかった。
なのに……だ。想像以上に美味しく、驚いていた。
「……旨い?」
エギエディルス皇子が、面白そうに訊いた。
兄王が小さく驚いた後、二口目を口に入れたからだ。
「……旨い…………酒を、混ぜたのか」
とグラスを傾け、光に照らしながら深く感心していた。
酒同士を混ぜて飲もうなんて、まったく考えた事もなかった。
だから莉奈が出した酒も、精々ノイリー酒みたいな、ハーブとかを入れたフレーバーだと高を括っていた。
だが、そんな安易な物ではなかった。
莉奈をバカにし過ぎていた。感服せざる得ない。
「何を混ぜてるか、わかる?」
先程みたいに、エギエディルス皇子が訊いた。
試している訳ではないのだが、兄が驚いていて楽しいみたいだ。
「……少し……待て」
フェリクス王はグラスを傾け色を見た後、今度は舌に転がす様に、ゆっくりゆっくりと味わっていた。
「ベースはジン……ドライ・ジンだな」
後は何が混ぜてある……と、さらに真剣に口の中で味わう。
今まで飲んだお酒を、思い出し考えているのだろう。
「……後……ス……」
何か記憶の端から呼び起こしたのか、小さく呟いた。
「……ス?」
エギエディルス皇子が、面白そうにその呟きを拾う。
「いや、そこまで甘くはない……ベルモット……ドライ・ベルモットか。」
もう一口、確かめる様に口に含むと、今度は確信に変わった様だった。
「陛下……正解です」
スゴいな……と莉奈は感心した。
たった2種類とはいえ、混ぜたお酒を初めて飲んで、膨大な種類があるお酒から、よく選んだな……と。
ただの、酒好きではないらしい。
「……ジンとベルモット……か。面白い」
フェリクス王はさらに口に入れると、初めて飲むカクテルを堪能していた。
「なぁなぁ、フェル兄?」
その様子を見た、エギエディルス皇子が、さらに面白そうに言う。
「なんだ? エディ」
初めてのカクテルに至極満足なのか、弟エギエディルス皇子に、優しい眼差しを向けた。
……エディ!?
……うっわ。
フェリクス王も、エドの事 "エディ" って呼ぶんだ!!
莉奈は、その優しい眼差しと、エギエディルス皇子を優しく呼ぶ、フェリクス王の声に萌えに萌えていた。




