126 なんだろうな~。
「……あっ……そうだ」
アイスクリームを取りだそうとして、大事な物を出していない事に気付いた。
「フェリクス陛下、カクテル飲まれますか?」
本来の目的は、コッチだった。
なんのために作って来たのか、忘れるところだったよ。
「……あ゛ぁ? カクテル?」
わかる訳もなく……シュゼル皇子にお疲れのフェリクス王が、少しウンザリ気味に言った。
「……まずは、御賞味してみて下さい」
アハハ……疲れてる。
先に言ってはつまらないので、飲んでから説明はする事にする。
莉奈は、魔法鞄から、例のカクテル "マティーニ" を取り出した。
キンキンに冷えた、マティーニだ。絶対、お気に召すハズ。
「オリーブの実が入って、可愛らしいですね」
シュゼル皇子が、グラスの底に沈んでいるオリーブを見て言った。
「カクテルは見た目も、楽しめる物なんです」
華やかなパーティに、彩りを与えるお酒だ。
もちろん、飲んでも美味しい。
「……いいですね」
シュゼル皇子は、その見た目の華やかさに心を奪われた様だ。
「…………っ!」
フェリクス王は、ワイングラスに入った液体を見た瞬間、眉がピクリと動いた。淡い黄色の飲み物、ワイングラス、その組合せでピンときたのだ。
「…………酒……か」
甘味ではないとわかり、口端が緩む。
「お酒はお酒でも、タダのお酒ではありませんよ?」
と、わざと勿体ぶってみる。
タダの酒なんて、飲み飽きてるだろうしね。
「…………ほぉ」
フェリクス王は目を細め、そのカクテルを手に取ろうとした……その瞬間……。
「……職務中に……ダメですよ?」
シュゼル皇子が、カクテルを取らせまいと間に手を入れた。
「……シュゼル」
「ジンライムのシャーベットは食べたでしょう?」
とにこやかに咎める。
あれはお酒が入っているかなんて、知らなかったから止めなかった。だが、これは……別。
「てめぇの、アイスクリームも出させねぇぞ」
と睨むフェリクス王。
「それは、リナが決める事ですよ? 陛下」
と微笑むシュゼル皇子。
アイスクリームを持っているのは、莉奈だ。
フェリクス王が制止しようと、しまいと、出すのを決めるは莉奈である。
「……リナ」
とフェリクス王が出さない様に、チラリと見れば
「……リナ」
と出してくれる様に呼ぶ、シュゼル皇子の優しい声が……。
……うっわ~~。
自分達で決めればいいのに、丸投げしてきたし!!
「では、ケンカ両成敗って事で、アイスクリームもカクテルもなかった事に……」
莉奈は、呆れ笑いつつカクテルに手を伸ばした。
面倒くさい。くだらない事でケンカするなよ。
「……ナゼですか?」
「………………チッ」
シュゼル皇子は微笑みながら異議を唱え、フェリクス王は舌打ちしながら、莉奈の手を取らせまいと掴んだ。
「……あの~~?」
2人とも……必死ですね?
そして……何気にエギエディルス皇子とは、全然違って、握られた手が……ものスゴくドキドキするんですけど。
顔が紅くならない様に、コッチはコッチで必死だった。
「下げる必要はねぇだろう」
「アイスクリームは、お酒ではないのだから、関係ないでしょう?」
王様に宰相様……マジで必死ですね?
酒と甘味に、必死なこの国の2トップに、苦笑いしかでない莉奈だった。




