124 これも食べるの?
「……冗談ですよ?」
と莉奈は、再び席についた。
せっかく作って持って来たのだから、帰る訳がない。
少し慌てるシュゼル皇子は、なんだか可愛い。
「…………リナ」
シュゼル皇子の吐く安堵のため息に、イベールの冷たい声が混じった。
この間、説教をしたばかりなのに、また王族をからかったからだ。
「……もぉ、リナ……牢屋に入れちゃいますよ?」
首をコテンと傾け、可愛らしく微笑むシュゼル皇子。
「………………」
可愛らしく、ものスゴい事をおっしゃる。
冗談とも本気ともとれる、その微笑みに、さすがの莉奈も固まった。
その言葉は、氷菓子を出さずに帰ろうとした事になのか、からかった事に対してなのか。
………前者に、1000点。
広量なのか、狭量なのか……。
「……どっちに対して、言っている?」
いつの間にか、食べ終えたフェリクス王は、長い脚を組みながら訊いた。
やはり莉奈と、同じ様な事を思った様だ。
"氷菓子" か "冗談" の事か。
本気ではないにしても、どちらに対して牢屋に入れると、言ってるのか。
「それは、当然シャ――」
「「…………シャ?」」
2人の兄弟の眉が、ピクリと動いたので、慌てて口をつぐんだシュゼル皇子。
だが、それを2人の兄弟が聞き逃す訳がない。
「……シャークリー男爵は、お元気ですか?」
……とぼけた。
「「しらねぇよ」」
フェリクス王、エギエディルス皇子が即ツッコんだ。
「……ぷっ」
……アハハ……コントやってる。
莉奈は思わず吹き出した。
大体……シャークリー男爵って、私が言ったヤツだし……。
面白過ぎるでしょ……この兄弟。
王族なんて、王座を巡って骨肉の争いがあって、仲が悪いのかと勝手に想像していた自分が、バカでしたよ。
「「「…………」」」
吹き出したら、3兄弟がこっちを見た。
慌てて口を押さえた……が、今さら感たっぷり。
「…………え? すみません?」
注目が居たたまれなくて、謝ってしまった。
……え?
私が悪いの? まぁ……原因は私かもだけど……?
イベールの、絶対零度の視線が突き刺さる。
その視線を無視して、何事もなかった様に、莉奈は、魔法鞄から持って来たシャーベットを取り出した。
ククベリーとレモンの2種類。もちろん、エギエディルス皇子の分も出す。自分のは後でゆっくり食べたいから、しまっておくけど。
「赤いのがククベリーのシャーベットで、黄色いのがレモンのシャーベットになります」
シュゼル皇子の前に置き、軽く説明をすると……。
「兄上に渡した……ジンライムのシャーベットは?」
キョトンと言われた。
当然の様にそれもあると、思っていたらしい。
「…………え?」
ジンライムのも食べるとは思わなかった。
「 "え" ではなく、それは?」
と、空になったフェリクス王の器を視線で促す。
「……お召し上がりに……?」
「なりますよ?」
と、莉奈の言葉を紡いだ。
「………………」
……え?
……マジで?
いやいや、持ってきてはいるけど……勝手な想像で、お酒は飲まないタイプかと思っていたよ。
「……リナ?」
少し驚いて固まっていると、シュゼル皇子から声が掛かった。
「……お酒……飲まれるのですね?」
「えぇ、嗜む程度ですが」
とニッコリ。
"嗜む" の程度がわからないけど……飲むのか。
「……ポーションしか飲まれないのかと、思ってました」
まだどこかに "ポーションドリンカー" シュゼルの異名が、頭の片隅にあったよ。
「……………………」
眉をピクリと動かすと、シュゼル皇子はグッと口をつぐんだ。
前歴があるため、咄嗟に反論が出来なかったのだ。
……ぷっ。
「……アハハ……言われてやんのシュゼ兄」
エギエディルス皇子が、腹を抱えて笑っていた。
自業自得過ぎて面白いらしい。
「……むぅ」
シュゼル皇子は、小さく頬を膨らませむくれた。
今までの行為が、こんな形で返ってくるとは、思わなかったのだ。
「……ポーションばかり飲んでた、ツケがきたな」
フェリクス王は、愉快そうに笑った。
あれだけ、言っても食事を摂らなかったバツだと。
「あっ……今度、ポーションのシャーベットでも、お作り致しましょうか?」
固まるのか、しらんけど。
「………………いりません……よ」
莉奈にまでそんな事を言われ、プイッと顔を背け、いよいよ拗ねた。
こう言ったら失礼だけど、拗ねた顔も可愛らしい。
「……アハハ……ポーションの……シャーベットとか……マジでありえねぇ」
横に座るエギエディルス皇子は、バカうけだった。
フェリクス王も、珍しくお腹を抱えて笑っていた。
……なんか、楽しくていいな。
莉奈は、楽しそうな王様達を見て、ほっこりしていた。
やっぱり、楽しく笑ってるのが一番だよね。




