122 御機嫌いかがですか?
……ニコニコニコ。
まだ、シャーベットを出してもいないのに……シュゼル皇子は満面の笑みである。
持って来てはいるけど、万が一出来ていなかったり、違う用事で来ていただけだったら……どうなっているんだろう。
考えたくもない……な。
「………あの、フェリクス陛下も、こちらにどうぞ?」
莉奈は、執務机から一向に動かないフェリクス王に、声を掛けた。フェリクス王のための氷菓子も作って来たからね。
しかし……氷菓子に全く興味がないので無関心。
チラリと一瞥した後に、再び書類に目を通し始めた。
……まさかの無視!!
「「…………」」
エギエディルス皇子と莉奈は、顔を見合わせ小さく笑った。
自分は食べない甘味だから、どうでもいいのだろう。
お酒のシャーベットを味わっても、同じ事を言うのかな……と。
「……フェル兄、絶対興味出るから来てみなよ」
全く腰を上げない兄王に、エギエディルス皇子は笑う。
同じ兄でも、こうも違う態度に笑うしかなかった。
「……チッ……」
ものスゴく不満げに舌打ちをした。
末の弟に言われてやっと、仕方なさげにその重い腰を上げたのだ。
……こっわ……マジで不機嫌だよ。
原因というか、元凶らしきお人は、ほのほのしてますけど……。
「早くこいつの口に、氷菓子を突っ込んで追い出せ」
やっぱり……シュゼル皇子が元凶らしい。
いつから一緒にいたのかは知らないけど、理由がくだらなすぎて失笑もでない。
ドカリと上座に座ったフェリクス王は、ほのほのと微笑むシュゼル皇子をひと睨み。
「ふふっ……シャーベットですよ?」
「…………黙れ」
思いっきり渋面顔になると、吐き捨てる様に言った。
心底出ていけ……と思っているに違いない。
莉奈は、魔法鞄からジンライムのシャーベットを取り出すと……
「……心中……お察し致します」
……言わなくてもいい一言を添えて……コトリと、ジンライムのシャーベットを、フェリクス王の前に置いた。
透明なガラスの小さな器に入った、薄黄緑色のジンライムのシャーベットは、光にあたって宝石の様にキラキラして見える。
「………くっ………察するの……かよ……」
フェリクス王は、莉奈のその物言いに小さく笑った。
まさか、そんな返しが莉奈から、返ってくるとは思わなかった様だ。
「…………リナ」
シュゼル皇子は、優しく優しく微笑むと名を呼んだ。
どういう意味ですか……と。
「はい、なんでしょう。この国随一の賢者であり、王の右腕、シュゼル宰相様」
だから、ニコリと優しく微笑み返しをしてみた。
宰相様が、陛下の邪魔をしてはいけないだろう……と。
「……………………」
シュゼル皇子は、微笑みながら、時が一瞬止まっていた。
莉奈が、自分に対してそう応えるとは、思わなかった様である。
氷の執事イベール様も、一瞬時を止めていた程だ。
……くくっ……。
至極満足そうな、笑いが1つ。
「…………兄上。」
あくまでも優しく睨む。迫力は微塵もない。
逆に、色気さえ感じるから不思議だ。
「お前に、そんな返しが出来る女がいたとはな」
とさらに笑った。
不敬過ぎる莉奈の言動は、兄フェリクス王には心地いいらしい。
裏がある態度も、おべっかばかり使うヤツ等も、辟易しているからだろう。
「…………」
それにはシュゼル皇子も、ただ困った様に笑う事しか、出来なかった。




