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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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120 【門の紋章】



 フェリクス王の執務室……これで2回目になる訳だけど……。

 なんだろ、やっぱり近付くにつれて、妙な緊張感が走る。この、独特のヒヤリとした空気が、そうさせるのだろうか。

 


「あ~……しんどい……地味に、階段が足腰にくる」

 莉奈は、執務室に向かう階段を上りつつ、ボヤいた。

 そう、フェリクス王の執務室……【銀海宮】と呼ばれる本宮、この王宮にあるのだけど……5階建ての天辺、いわゆる最上階にある訳で……。

 エレベーターは勿論ないし、エスカレーターもある訳がない。

 だから、自らの足で上るしかない。



 ……魔法でどうにかしろよ。



 瞬間移動(テレポート)させろ~~!!



「……ババァかよ」

 一緒に上るエギエディルス皇子が、笑っていた。

 足腰にくる、なんて言いながら階段を上る人を、初めて見たのだ。

 しかも、老人ならいざ知らず、まだ全然若いハズなのに。

「魔法で、パパッとならないの?」

 こういう時こそ、魔法の出番でしょうよ。

「ならない事もねぇけど……」

 呆れながら、ポツポツと説明し始めた。

「……ないけど……?」

「セキュリティ上、一部の人間しか許可が下りてない」

「あ~~、そういう感じ」

 確かに、誰彼構わずホイホイ瞬間移動(テレポート)して来れたら、警護、警備が大変だよね。衛兵の意味がなくなるって云うか。

 残念だけど、仕方がない。王宮には護らなければいけない人や、物が沢山あるからね。

「一応教えとくけど……許可が下りたからってそんな簡単に、瞬間移動できねぇからな?」

「魔力的な関係?」

 それとも、なんか取得しなければいけない、魔法があるのか。


「【門の紋章】」

「……え?」

「さっき話した……俺達の持つ【門の紋章】の力が関係してる」

 エギエディルス皇子は、辺りをチラリと見渡すと、足を止めた。

 あまり、知られたくない話なのかも知れない。

「 "門" と云う名が付いてる通り、ゲートを創れるのが……この【門の紋章】なんだよ」

 そういうと、エギエディルス皇子は、両手を開いて見せてくれた。

 両手に魔力を込めたのか、何もなかった掌には、うっすらと紋章が光って映った。

 見たことのない形の紋章は、翼の様な形をしていた気がするが、絵とも文字ともまったく違う。何か不思議な模様だった。それは、とても神々しく光り、タトゥーの様に見えた。

 掌の魔力を弱めたのか、しばらくして "それ" は消えたが、掌に映つる【門の紋章】は、右の掌と左の掌では、微妙に違っていた様な気がした。


「この【紋章】の力がなければ、ゲートは開けられない」

「…………」

 ゲート……門……だから、私を【召喚】出来たのか。

 莉奈は、やっと何か腑に落ちた。

 そういう事なのか……と。

「……リナ……お前を喚ぶ事も…………還す事も……【門の紋章】を持つ俺達だけが……出来るんだ」

「………………」

 莉奈は、押し黙った。

 "俺達だけ" が出来るとは言ったが、戻す事は出来ないのかも知れない。

 随一の賢者、シュゼル皇子が戻せないのだから……

 ……実際、無理なのだろう。


「……リナ……お前は必ず……幸せにするから」

 もう一度、言ってくれた。

 でも……やっぱり……戻すとは……言わなかった。

 それがエギエディルス皇子の誠実さであり、優しさなのだろう。嘘をつかれるより、断然良かった。

「……うん、一緒に幸せになろうね」

 莉奈は、優しく微笑んだ。

 戻れなくても……泣き喚いたりしない。彼の言葉を信じてるから。

 戻れなくてもいい……エドがいてくれれば……。

「……一緒……に?」

「……うん、一緒に」

 1人で幸せになっても仕方がない。

 エギエディルス皇子と、皆と、一緒に幸せになってこそ、意味がある。

「……一緒に、幸せになろうね……エド」

 莉奈は、まだ幼さが残る、エギエディルス皇子の手を握った。

「……あぁ……一緒に……幸せになろうな……リナ」

 エギエディルス皇子は、強く握り返すと、泣き笑いの様な笑顔を見せた。

「……うん!!」

 喚んでくれて……ありがとう。

 私の(いのち)を救ってくれてありがとう。


 


「………だから……」

「……だから……?」

「……背中押して~~!!」

 莉奈は、階段を上るのに疲れたので、叫んだ。

 今は、そんな事より、このツラい現実をどうにかしてほしい。

 1部屋の天井が高いせいか、1階1階の階段の段数が半端ないのだ。家の階段とは全然違う。マジでキツイ。

「……お前……なぁ………」

 と呆れつつも、目元をゴシゴシ擦り、莉奈の背中を押してやる。



 ……ありがとう……リナ。



 その背中に、エギエディルス皇子は、小さく小さく呟いた。

 元の世界に戻せない……と、言ったにも近い自分の言葉に、何一つ恨み言を返さず、責める事もない。


 そんな莉奈の優しさに、エギエディルス皇子は……

 "必ず幸せに、してやるからな"……と1人心に強く誓ったのだった。





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