表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/676

117 フェリクス王とマティーニ



 酒呑み達の熱い視線を感じながら、莉奈は、もくもくとカクテルを作っていた。

 とはいえ、このカクテル。ものスゴい簡単なのだ。

 材料はさっきも使ったジン……ドライ・ジンといわれるお酒。

 それとドライ・ベルモットというお酒。

 別名ノイリー酒。

 これはハーブとかを入れた白ワインで、フレーバーワインの一種。

 ……で、オリーブの実。



 ね? 材料は少ないし簡単そうでしょ?



 カクテルを作る、混ぜるのに使うシェーカーは勿論、ミキシンググラスもないので、大きいグラスで代用する事にした。

 ミキシンググラスは、んー……ビーカーを想像してもらえば近いかも。


「エドくんや、このグラスに少し氷を貰えんかのぉ?」

 と莉奈は、混ぜる用とは違う、大きいグラスを両手で差し出した。

 魔法で冷やしてもいいけど、魔法を使えない人のために極力魔法は使わない。氷はほら、王宮以外にもそのうち冷凍庫が出来るだろうし。時短って事で……。

「……ったく……俺は、氷売りじゃねぇんだけど?」

 とブツブツ言いながらも、グラスに1㎝くらいの粗めの氷を、こんもりと、入れてくれた。優しい子だね。

「すまないねぇ。エスペラント皇子」

「………お前は、ダレなんだよ」

 恭しく氷を受け取る莉奈に、エギエディルス皇子は、笑っていた。

 そして、違う領地から来ている料理人達は、そんなやり取りをしている莉奈を見て、只者ではないとさらに誤認識していた。



 氷を受け取った莉奈は、空の大きいグラスに氷を適量入れる。そして、ドライ・ジン、ドライ・ベルモットを、5対1の割合で入れマドラーで軽く混ぜた。

 割合は、4対1でもいい。好みだから。

  

 さて、ワイングラスにはオリーブを1個入れ、その上から混ぜたお酒を氷を入れない様に、気を付けて注ぐ。それで、出来上がり。

 欲をいえば、カクテルグラスかシャンパングラスの方が、断然華やかだけど、今回は……ワイングラスでいいかな。

 オリーブの実だって、本音を言えば、カクテルピンに刺して入れたいとこだけど、深いワイングラスではどのみち沈むし。

 "莉奈オリジナルカクテル" って事で……。



 だって、カクテルなんて、レシピがあってもない様な物だしね。

 ……どういう事かというと、そのカクテルの基本レシピはあるけど、店やバーテンダーによっても分量や配合が違うんだそう。

 店やその人の、特色、オリジナリティがあるのだ。

 だから、お父さんの好きなお店と、お母さんの好きなお店は違ったしね。

 


「……キレイだな……」

 皆に見せる様に振り返ると、ほぅ……とマテウスが呟いた。

 うっすらと黄色く色づいたお酒は、光を反射してキラキラと輝いている。下に沈んだオリーブの実が、妙に可愛らしさを演出していた。

 そう、カクテルは美しいのだ。色はキレイだし、飾り付けもすれば、華やかで気品さえある。だから、女性は好んで飲む。

 だけど、華やかに騙されると酔う。ジュースと割るからスゴい飲みやすいからだ。

 で、ついつい飲み過ぎると、強いお酒も使ってるから、変な男と飲んだりすれば……身の危険が……ね?

 一緒に飲む相手も注意しないとならない。


「これのどこが、フェル兄なんだ?」

 フェリクス王のためにある "お酒" というより、このキレイな透明感はシュゼル皇子の様な気がするのだろう。

「これね "マティーニ" って名前のカクテルなんだけど」

「……ん?」

「別名、"カクテルの王様" っていうんだよ」

 カクテルの中の最高傑作と称賛される、このマティーニ。

 別名、カクテルの王様。

 ね? フェリクス王のために、ある様な飲み物じゃない?

 

「「「……カクテルの……王様……」」」

 マティーニを見ながら、皆が呟いた。



 ――――ゴクリ。



 生唾を飲み込む、飲んべえ達。



 新しいお酒は、興味を惹いたようだ。



「……カクテルの王様か……お前……なんで、そんなに酒に詳しいんだよ?」

 未成年者のくせに。という表情をエギエディルス皇子はしていた。飲まないはずなのに、何故そんなに詳しいのか気になるのだろう。

 ……普通はそう思うよね?



「お父さんと……お母さん……お酒が好きだったんだよ」

 莉奈は、遠くはない昔を思い出しながら、微笑んでいた。

 誕生日には、毎年お父さんがお母さんをイメージして、オリジナルカクテルを作ってあげていた。

 だから、カクテルの事は少し覚えてる。

 これは、お母さんが父の日に、作ってあげていたお酒だ。



 いつも……ありがとう……って、想いを込めて。




「……リナ……」

 気付いたら、ラナ女官長の腕の中に引き込まれ包まれていた。

 そう……優しく優しく包まれていたのだ。

 泣きそうな表情(かお)を、していたからかもしれない。



「今の、あなたには……私達がいるから」

 ラナはそう言って、優しく優しく頭を、背中を撫でてくれていた。還れない莉奈を思って、辛いことを包み込んでくれている様だった。



 …………温かい。



 ……心が、温かい。



 ……ラナ……ありがとう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ