115 清涼のジンライムシャーベット
「エド、本当に魔法使うの上手いよね」
レモンシャーベットの素を、器用に冷やしていく、エギエディルス皇子に感心する。
自分も慣れないながらも、練習をする様になったから良くわかる。こういう細かい使い方は難しいのだ。
しかも、氷の魔法。水と風の魔法を調節して使う。まだ、全然使えないから、純粋にスゴいと思う。
「慣れじゃねぇか? っていうか……"紋章持ち" がこのくらい、使いこなせないなんて、恥でしかないし……」
エギエディルス皇子は、魔法を使いながら答えた。
そう、話しながらも実は難しい。集中が途切れるからだ。
「……"紋章持ち" って……?」
紋章なんて初めて聞く。王族だから……って言われた方がまだわかる。何か特別なモノなのだろうか?
「あー……王家が継ぐ、特有の称号?」
説明が難しいのか、詳しく話せないのか、ざっくりと言った。
「ふ~ん……血で継ぐ、みたいな感じ?」
だから、詰め寄ってまでは訊かない。言いたくなければ、別にそれでも構わない。知らなければ知らないでも、構わないからだ。
「……まっ、そんなとこ……お前には……そのうち、話してやるよ」
要は、ここでは話せない。そういう事なのか、簡単には説明が出来ない……といった所かな。
……にしても、話してくれるのか。いいのかな?
「あ、エド。このぐらいでいいよ」
フォークでザクザク混ぜれば、粗めのかき氷くらいになった。このくらいが、丁度いい。
「……魔法さえ、どうにかなれば、スゴい簡単に出来るな」
莉奈達の出来上がりを見ていたリック達が、自分達も同じ感じに出来上がったので手を止めていた。
作り方は簡単だ。アイスクリーム程の体力も消耗はしない。
氷の魔法さえ使えれば、30分もかからない。まぁ、その "氷魔法" を使う事が、そう簡単には出来ないのだけど……。
「リックさん達には、後はこのククベリーのジャムを使って、シャーベットを作って貰いたいんだけど……」
莉奈は、魔法鞄から、この間作っておいたククベリーのジャムを取り出した。
簡単に分量を教えて、同じ様に凍らしてもらう事にした。
レモンシャーベットで要領は得たのか、口頭の説明ですぐ理解したようだった。
本当にスゴい人達だ。1回見ただけ、教えただけでほとんどの物がすぐ作れる。尊敬するよ本当。
「……さて……と。後は、陛下にジンのシャーベットを作りますか」
さらに気合いを入れた莉奈。
甘くはないけど、気に入ってくれるかは別だ。あの国王様に"旨い"と言わせたい。
「ジンって……あの "お酒" のジンか?」
副料理長のマテウスが、ビックリした様に訊いてきた。
そもそも、お酒をシャーベットに……なんて発想がないのかも。
「そうだよ? ライムを入れた、ジンライムシャーベット」
莉奈は、魔法鞄からお酒のジンと、柑橘のライムを取り出した。さっき食料庫とかから持ってきた物だ。
「お酒のシャーベット……」
皆、さらに興味津々なのか、酒呑み組が気になるのか、熱気を背中に感じる。
「作り方は難しくないよ。ジンと水を好みの分量入れて、ライムの果汁を少し、後は香り付け程度に摺った皮。んで、さっきみたいに混ぜて凍らして出来上がり」
材料を混ぜていると、ほのかにお酒の香りと、ライムの爽やかな香りが厨房に広がる。
お酒好きなお父さんに作ってあげたのだけど、結局お母さんが気に入って食べていたのを思い出す。
……なんか……懐かしいな……。
想い出に浸っていると、
「……確かに……簡単だな」
料理長のリックが、前のめりに見ていた。余程気になるらしい。
「お酒が弱い人は、ジンを少なめにして砂糖を入れて作れば、そんなに酔わないんじゃない?」
食べた事がないので、想像でしかないけど……。
「なら、私のは、お酒多めで……」
と背後から、もじもじとした聞き覚えのある声が……。
……モニカだ……。
「………………」
莉奈は、目が自然と細くなっていた。
……なんで、お酒多めの話になるのかな……?
多めにしたら、ほぼ酒だろうよ!
大体、お酒、多めにし過ぎたら凍らないし……。
っていうか、甘い物もお酒もいける口かよ。
莉奈は、ツッコミどころ満載のモニカに脱力していた。




