112 シャーベット? ジェラート?
朝食を食べ終えると、莉奈は、渋々厨房に向かった。
昨日は、色々とあった訳だから……。
朝から疲れてぐったり……今日は部屋でゴロゴロしていたかった。
だけど、気づいたら、シャーベットを作る約束まで、させられてしまっていた。作らない訳にはいかない。
あの微笑みはマジで、有無を言わせない魔力を感じる。
「……リナ、おは……なんかぐったりしてるね?」
挨拶をしようとしていた、料理長のリックが、莉奈の表情を見て言った。端から見ても、ぐったり具合がわかるらしい。
「昨日、イベールさんに……説教というスパイスを頂きました」
「「「あ~~~」」」
その瞬間、皆が皆、憐れむ様な目を向けてきた。
気持ちを察してくれた様だ。
だが同時に、莉奈は何を、やらかしたのだろうと苦笑いもしていた。何もしていないのに、説教をされるハズもないのだし。
「…………」
お前、何をやらかしたんだよ? という視線を全身で受けつつ、莉奈は食料庫に向かった。シャーベットにする果物を探しに。
「何をシャーベットにしようかな~」
とりあえずレモンが目についたから、1つはレモンにする。だけど、レモン味だけではつまらないから、何かもう1種類……とキョロキョロ。
「あっ、そうだ。ククベリー」
ラナ達が採りつくしたであろうククベリーが、まだ何十キロとあるのを思い出した。肉に添えるソースに使うにしたって、余るだろうし。酸味のある果物の方がシャーベットには合う。
「なぁ、氷菓子なのはわかるけど、結局シャーベットってなんだ?」
一緒に食料庫に来ていた、エギエディルス皇子が訊いてきた。
莉奈が、イベールに説教されているあたりから、ウンザリしていたのか、昨日した説明が、全然耳に入っていなかった様だ。
「ん~……果汁を凍らせた物?」
あれ……それもなんか違うか?
なんて説明すればいいのだろう? 莉奈は、首を捻った。
「……ソルベみたいな物か?」
「何……ソルベって?」
"ジェラート" は知っているけど "ソルベ" は知らない。
「果物の果汁を水に薄めて、凍らせた物」
エギエディルス皇子は、簡単に説明をした。どうやら氷の魔法で凍らせて砕いた氷菓子らしい。
「あ~んじゃソレ?」
見た事がないから詳しくはわからないけど、説明を聞いた限りだと、たぶん謂わんとしている事は同じだろう。
そして、思うけど、エギエディルス皇子の説明って、いつもわかりやすい。賢い子供だよ本当。
ん? でも、そもそもジェラートってなんだ?
ジェラートもシャーベットも、言い方が違うだけで "氷菓子" って意味だったよね……。
……んん?
え~~と、確か……細かくいうと……。
乳脂肪が多いと……アイスクリーム。
それより少ないとアイスミルク。
さらに少ないとラクトアイスだっけ?
だから、シャーベットはラクトアイスになるわけで。
ジェラートはアイスミルク。
………………。
……ムズカシイよ!!
なんで名称変わるんだよ!!
全部アイスでいいじゃん、もう!!
莉奈は、眉間にシワを寄せた。
そんな事、細かく考えた事なんてないし!!
考えた所で正解にたどり着かないし!!
………あぁ~~ググりたい!!
誰か~~スマホプリーズ!!
この世界の人に訊いた所で、正解がわかるわけもなく……。
莉奈は、なんだかモヤモヤした気持ちになるだけだった。
よし、どうせ何を言った所で、誰もわからないのだ。
牛乳をたっぷり入れて作った物を、アイスクリーム。
濃厚だけど、牛乳少なめな物をジェラート。
果汁だけで作ったさっぱりした物を、シャーベットと言っちゃおう。
だって、私以外知らないんだし、いいよね?
私が、法律だ!! みたいな?
……いいよね~~?
……いいよね~~!?
心の中で叫んだものの、なんだかモヤモヤしたものが残るだけだった。
お家帰りた~~い!!
莉奈は、作った後に【鑑定】すれば、詳しくわかるかも……という事を考えてはいなかった。




