103 美味しい物は、糖と脂肪で出来ているのです
「ほらっ! リナ行くわよ!」
とラナ、モニカに両脇を掴まれ、ズルズルと引きずるように扉に……。
遠慮も配慮も、なくなったよね~~。
「りバ……ばやく、モグモグ」
「モニカ……あなたは、食べながら話さないの!!」
モグモグと口を動かすモニカに、ラナが注意する。モニカの口の中は、焼きリンゴで一杯だった。
「だって、残したら……モグモグ……食べられちゃう……モグモグ」
「「「………………」」」
……ここに、モニカの食べ物を取る、チャレンジャーはいないと思うけど?
だって……ナニをされるかわからんし。
「まぁ……どうせ、今さら行ったって、シュゼル殿下には何か言われると思うけど……?」
両脇をガッチリ掴まれたまま、莉奈は言った。
「何かって? なんで、遅れたんだ……ってか?」
エギエディルス皇子が、そんな莉奈を見ながら、複雑そうな表情で訊いた。罪人みたいに、引きずられているからだろう。
「それはホラ、エドのせいだって言うけど」
「…………」
……言うのかよ。
「エドも私も、甘~い匂いさせて行ったら……シュゼル殿下がなんて言うかな……?」
甘味に目覚めた、アノお方が……何も言わないなんて事、あるのかな?
「あ~~~そっち……な」
エギエディルス皇子は、納得したらしい。
ただでさえ、甘味、お菓子に敏感なのに、二人揃って甘い匂いなんてさせて行ったら、何を言われる事やら。
ましてや、自分の分はありません……なんて、ねぇ?
「……なら、どうするのよ?」
モグモグタイムは終わったのか、モニカが訊いた。唇がバターで、テカテカしているのは、黙っておいてあげよう。
「どうせ、遅れるんだから……。シュゼル殿下には、焼きリンゴを。フェリクス陛下には、なんかガッツリした物を作って行こっか」
莉奈は、2人の拘束をスルリとほどくと、厨房に向かった。
「あっ……なら、俺、からあげ食べたい!!」
莉奈の後ろに、可愛らしくチョコチョコと付いて来た、エギエディルス皇子が手を挙げた。この間食べた からあげが、余程気に入ったらしい。
「ハイハイ、からあげね?」
莉奈は、クスリと笑った。やっぱり、子供は皆好きなんだな……と。
「ハーイ! 私も食べたいで~す!」
モニカも真似をして、手を挙げた。
振り返ってみれば、皆も同意見なのか、目で無言で訴えている。
「別に、いいけど……」
と莉奈が言えば、
「「「やったぁ~~~!!」」」
と手を挙げハイタッチ。皆が嬉しそうに喜んでいた。
だが……莉奈が、ボソリと言葉を続ける。
「……太るよ?」
「「「………………え?」」」
皆の弾ける様な笑顔が一斉に、固まった。
「焼きリンゴには、バターと砂糖をたっぷり入れて焼いてるし。からあげなんて、油がたっぷり入った鍋に入れて揚げるんだもん……ふ・と・る・よ?」
莉奈は、もう一度言った。
太るモト、元凶と云ってもいい、"糖" "脂肪" を、たっぷり摂ればそりゃ太るよね?
なんだったら、生き証人が目の前にいる訳だし。わかるでしょ?
まぁ、太る程の量は口にしてはないけど、一応言ってはおく。
「「「……………………」」」
信じたくないのか、信じられないのか、皆が押し黙った。
それはもう、引くぐらい静かに……。




