第91話・宿屋会議
アースラと一緒にウーマに乗ってリーヤへと帰って来たフルレは、ウーマを返しに行ったアースラと別れて急いで宿へ戻っていた。するとその途中、偶然にもフルレを捜していたシャロとシエラに遭遇した。
「フルレさん! どこへ行ってたんですか!」
「本当だよ、ずっと心配して捜してたんだからね」
「リア、シエラ、心配をかけてすまなかったのだ」
「いえ、何事も無かったのなら良かったですよ」
「私もフルレちゃんが不安になるようなことを言ってごめんね」
「いいのだ、リアとシエラが言っていたことは間違っていないのだ」
「お前ら、こんな往来で喋ってないで早く宿へ行け」
「師匠!? いつ帰って来たんですか?」
「ついさっきだ」
「用事はもう終わったの?」
「とりあえずな、それよりもさっさと宿へ行くぞ」
こうして全員で宿へ戻ったあと、アースラはフルレと出会ってからの経緯をシャロとシエラに話して聞かせた。
「てなわけで、俺が仕事帰りに偶然フルレと遭遇して、それで一緒に帰って来たってわけだ」
「なるほど、そうだったんですね。でも偶然とはいえ、師匠がフルレさんと会えて良かったですよ」
「だね、フルレちゃんに何かあったらどうしようって思ってたから」
「おいおい、フルレは魔界の大悪魔だぞ、一人で居たって危ないことはねえだろ」
あっけらかんとした感じでそう言うと、シャロとシエラはほぼ同時に溜息を吐いた。
「ベル君、そういうことじゃないんだよ」
「そうですよ、今回だって師匠が居なかったらあの子は助からなかったって聞きましたし」
「そうなのだ、ベルが来てくれて本当に助かったのだ」
「まあそれはいいとしてだ、とりあえずアイツをどうするのかそれを決めねえとな」
アースラはフルレが使っているベッドに視線を向け、そこに寝かされているファジーロッパーを見た。
「フルレちゃんはあの子と一緒に居たいんだよね?」
「そうなのだ」
「でもモンスターと一緒に居るのは正直難しいと思いますけど、師匠はどう思ってるんですか?」
「俺はそいつを置いて行くべきだとフルレには言った」
「それじゃあシエラさんはどうですか?」
「私は一緒に居てもいいんじゃないかなって思ってるよ。魔王が居た10年前こそモンスターは怖いだけの存在だったけど、ここ3年くらいの間でモンスターを飼い馴らして使役する人たちも出て来たくらいだから、私たちがあの子を連れててもそこまで怖がられることはないんじゃないかな? あとはあの子が人に迷惑をかけないように、私たちが気をつければいいだけだと思うし」
「なるほど、それもそうですね」
「てことで、私はあの子を連れて行ってもいいと思ってる」
「私もです」
「ベルよ、どうしても駄目なのか?」
二人の意見と答えを聞いたアースラはフルレのそんな質問を聞いて両目を閉じ、しばらくしてその目をスッと開いた。
「……とりあえずこの件はもう一度考えておくから、この話はここまでだ、それでいいか?」
アースラがそう言うと、三人はそれぞれに返事をしながら頷いた。
「よっし、それじゃあまずはシャロとシエラの二人で飯を食って来い」
「えっ? 師匠とフルレさんはどうするんですか?」
「全員で飯を食いに行ったら、誰があそこで寝てる奴の面倒を見るんだ?」
「あ、そうですよね、それじゃあなるべく早く戻って来ます」
「ああ」
こうしてシャロとシエラは猫飯亭に向かい、そのあと入れ替わりでアースラとフルレが食事を摂りに行った。




