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第40話・似た者同士の旧友

 勝敗が決したあと、裏の仕事の件をシャロに話すわけにはいかない手前、便利屋として一緒に働きたいというシエラの願いを聞き入れるかどうか、それを決めるために勝負をしたのだとアースラは説明をした。


「なるほど、とりあえず勝負をした理由は分かりましたけど、便利屋の仕事を一緒にするだけならあんな勝負をする必要はなかったんじゃないですか?」

「馬鹿言ってんじゃねえよ、便利屋の仕事は命懸けの依頼も多いんだから、あの勝負は必要だったんだよ。それにこれ以上面倒を見る必要がある奴が増えたら俺が大変だからな」

「うぐっ、頑張ります……」


 相変わらずの物言いに対し、シャロはガックリと両肩を落とした。


「ベル君、もっとシャロちゃんに優しくしてあげてって言ったじゃない」

「俺に優しさを求めるのは無駄だってことくらいシャロはもう理解してるよ、そうだろシャロ」

「はい、十分に理解してます」

「おいシャロ、そこは『そんなことはありません、師匠はとっても優しい人です』って言うところだろうが」

「そんな洒落にもならない大嘘を私が言えると思いますか?」

「お前が嘘をつけるたちじゃないことは知ってるが、洒落にもならない大嘘とか言うな、いくら俺でも傷つくだろうが」

「それも嘘ですよね?」

「まあな」

「ふふっ、二人はとっても仲良しさんだね」

「んなことねえよ、おっし、それじゃあとりあえず決着もついたし、修行の続きを始めっか――と言いたいところだが、今日のところはシエラに色々と教えてもらえ」

「えっ、私がシャロちゃんに教えるの?」

「俺の手伝いをしたいって言ったのはシエラだからな、これも手伝いの範疇はんちゅう内ってこった」


 アースラはニヤリと笑みを浮かべながらシエラを見た。


「あー、さっきの仕返しってわけ? まったくもう、そういう意地悪なところは変わらないよね」

「人の根っこ部分なんてそうそう変わるもんじゃねえよ」

「……そうだね、私のこの気持ちもずっと変わらなかったから」

「何のことだ?」

「ううん、なんでもない。それじゃあシャロちゃん、今日はベル君の代わりに私が稽古をつけるってことで大丈夫かな?」

「はいっ! よろしくお願いします!」

「おいシャロ、ずいぶん嬉しそうじゃねえか」

「だってシエラさんは師匠より優しいですし、教え方も上手ですから」

「ほー、シャロ、俺との師弟関係を解消してシエラの弟子になってもいいんだぞ?」

「じょ、冗談ですよ、師匠だって優しいですし、教え方も上手ですから拗ねないでくださいよ」

「バーカ、ガキじゃねえんだからこんなことで拗ねるわけねえだろうが。それじゃあ俺は先に町へ戻って猫飯亭に行くから、二人は頑張って教え教えられをして来い」


 いつもとは違った感じのぶっきら棒な態度でそう言うと、アースラは踵を返してリーヤへ戻り始めた。


「あっ、さっきの当てつけに美味しい料理を一人で食べるつもりなんでしょ! ズルい! 私もお腹空いたから一緒に食べたい!」

「私もです師匠」

「お前ら揃いも揃って食いしん坊か? ったく、食ったらちゃんと修行しろよ」

「「はーい」」


 明るく揃った返事を聞いて小さな溜息を出しつつ、アースラは二人を連れてリーヤへ戻って行った。

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