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第21話・暗闇に浮かぶ赤い瞳

「サイレント」


 二匹のゴブリンに気付かれないように移動をしたシャロはそこから沈黙魔法を放ち、それと同時に一気に森から抜け出してゴブリンとの距離を詰め、二匹の後頭部に指先を当てた。


「デス」


 魔法を受けたゴブリンはその瞬間に大きな口を開けて絶命し倒れたが、その断末魔の声は沈黙魔法の効果により出すことすら叶わなかった。


 ――これで中に仲間が居てもバレてないないはず。


 倒したゴブリンを見て右の拳を強く握り込むと、シャロは血生臭さが漂う洞窟の中へと足を踏み入れた。


「スターライトボール」


 左手に淡い星の光を放つ魔力の球体を作り出したシャロは、その明るすぎない光を前に出して周囲の観察を始めた。


 ――夜目が利くはずのゴブリンの住処に松明たいまつが設置されてる? どうしてだろう……。


 設置されている灯りのついていない松明を見たシャロは、少しずつ洞窟の奥へと足を進めた。


 ――血生臭さが強まった、嫌な感じがする。


 洞窟へ入ってしばらく歩いたが、一匹のゴブリンにも遭遇することなくシャロは最奥部の広い部屋へと辿り着いた。


 ――あ、あれって。


 最奥部の部屋を魔法の明かりが照らすと、そこには燃えるような赤い目と老人のような容姿に筋肉質な体、突き出した鋭い歯に鋭利な鉤爪かぎづめを持った背の低い不気味な怪物が、無数のむくろに囲まれるようにして鎮座ちんざしていた。

 そしてその怪物はシャロが出している灯りに照らされるとゆらりと不気味に立ち上がり、耳まで裂けた口をニヤリと開いてからその鉤爪で素早くシャロに襲いかかって来た。


「きゃっ!」


 怪物の攻撃をすんでのところで回避できたシャロは、すぐに振り返って相手を見据えた。


 ――私の記憶が間違ってないなら、アイツはレッドキャップ、どうしてこんな所にいるの?


 レッドキャップはゴブリン族の中でも個体数が極めて少なく、通常のゴブリンとは比較にならない高い身体能力と知性を持つが、その高い能力ゆえに群れて行動をすることはない。そしてシャロは今回の件にレッドキャップが関わっていることに対し、驚きを隠せなかった。


「ファイアボール!」


 左手にスターライトボールを出した状態で戦うのは無理だと判断したシャロは、素早くそれをレッドキャップに投げつけて一瞬の目くらましにし、次の瞬間には両手を使って魔法を放ちながら壁に設置されている松明に火をつけた。


 ――よしっ、これで周りが見える!


 十分な明るさを確保できたシャロは、改めて相手が本当にレッドキャップなのか確認を始めた。


 ――師匠から聞いてた特徴と一致する、やっぱりレッドキャップで間違いないと思うけど、だとすると今の私には荷が重い相手かも。


 モンスターの中でも比較的弱い部類に位置付けされるゴブリン族だが、希少種であるレッドキャップに限っては例外となる。同じ希少種であっても個体差は大きいが、その実力は魔界の怪物と比較しても遜色そんしょくないと言われているほどだ。


「グゲゲゲッ」


 シャロが多少なりひるんでいる様子を見ると、それを見たレッドキャップは最初よりも大きく口を開いて不気味な笑い声を出し、シャロとの距離を詰め始めた。


 ――初撃の速さを考えると簡単には逃げられない、だったらできるだけ戦って隙を見て逃げるのが得策かも。


「よしっ! かかって来いっ!!」


 ひるむ気持ちを吹き飛ばすように力強くそう言うと、シャロは臨戦態勢をとって魔力をてのひらに集め始めた。

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