第141話・お互いのために
新たな傭兵を雇うまでの間カリーナ村と村人たちを守ることになったアースラたちは、さっそく村長の家でこれからの話し合いを始めようとしていた。
「野盗に襲われて間もないので散らかっていますが、どうぞお座りください」
村長はそう言いながら、背もたれの壊れた椅子を右手全体を使って指し示した。
「さっそくだが、さっきも言ったように俺たちも先を急いでいる身だ。だから傭兵を雇うのもなるべく早くしてもらいたいんだが、実際どれくらいかかりそうなんだ?」
「ご覧の通り村は散々な有様ですので、まだ傭兵を雇いに行けていない状態なのです。しかも傭兵を雇うことができる一番近い町までは、ウーマを使っても半日はかかりますので、戦う力のない我々では傭兵を雇いにも行けない状態なのです」
「なるほど、それで一時的とはいえ俺たちを雇いたかったってわけか」
「そういうことでございます」
「それなら話が早い、俺が村人や残った傭兵たちの代わりに傭兵を雇いに行くから、雇いたい傭兵の級種と契約金がどれくらいか、それと一番近い町がどこかを教えてくれ」
「おお、それは願ってもない申し出でございますが、お一人で行かれるつもりなのですか?」
「ああ、村の防衛も考えれば俺一人で行く方がいいだろう、俺も気を使わなくていいしな。シエラ、フルレ、俺は傭兵を雇いに行くから、その間この村のことは頼んだぞ」
「うん、任せておいて」
「フルレたちに任せておけば何の心配もないのだ、だからさっさと行って来るといいのだ」
「ああ、分かった」
「今から町に向かわれるおつもりですか!? それはお止めになった方がよいですぞ、夜間は凶暴なモンスターも増えますし、何より最近はモンスターの出現数も増えておりますからな」
「俺たちにとってもこの村にとっても傭兵を雇うのは最優先事項だ、だから気にしなくていい」
「しかし、それであなたがモンスターにやられるようなことでもあれば……」
「村長の心配は分かるが、そんなことは気にしなくていい、俺は絶対に負けないからな」
「そうですよ、ベル君は絶対に誰にも負けません、だから安心して待っててください」
「そういうことだ、それにシエラもフルレも実力は相当なものだ、村のことは何も心配しなくていい」
「そうですか、分かりました、そこまで仰るならもう止めはいたしません、どうかお気をつけて」
「ああ、さっさと代わりの傭兵を見つけて戻って来るさ」
アースラは今後のことをシエラとフルレに話し、そのあとで村長から雇いたい傭兵の級種を聞いて契約金を受け取り、ウーマに乗って夜の闇に染まった荒野へ出ると、目的の町ラスティアへ向かい始めた。




