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第111話・小さな子供の大きな夢

 カルミナ村で仕事を始めてから24日目の深夜、シャロは小さく欠伸あくびをしながら輝照石きしょうせきが入ったランプを手に持ち、いつものようにトイレがある扉の前の廊下でニアが出て来るのを待っていた。


「シャロお姉ちゃん、そこに居るよね?」

「ちゃんと居るから安心して」

「うん」


 ――私もニアちゃんくらいの時は、お母さんやお父さんにトイレについて来てもらったな。


 夜の闇を怖がるニアを可愛く思いながら、シャロは自分が幼かった頃のことを思い出していたが、それと同時にもう二度と戻っては来ない両親との日常を思い、少しだけ涙を浮かべていた。


「シャロお姉ちゃん、どうしたの?」

「えっ!?」


 突然聞こえてきた声にハッとすると、目の前に心配そうな表情を浮かべたニアの姿があった。


「大丈夫?」

「う、うん、大丈夫だよ、何でもないから」

「本当に? シャロお姉ちゃん泣いてたよ?」

「ちょっと昔のことを思い出しちゃっただけだから」

「昔のこと?」

「うん、私が育った村のこと」

「シャロお姉ちゃんの村のお話聞きたい」

「そっか、それじゃあここは冷えるから、ベッドの中でお話してあげるね」

「うん!」


 こうして二人は寝室へ戻り、僅かに温もりが残るベッドに入って寄り添いながら話をした。


「――そっか、シャロお姉ちゃんの村はなくなっちゃったんだ……」

「うん、私以外は一人残らず殺されちゃったの」

「シャロお姉ちゃんはどうして助かったの? うまく逃げることができたの?」

「ううん、あの時の私は野盗を前に怖くて少しも動けなかったの、でも私が殺されそうになった時に師匠が助けてくれたの」

「アースラお兄ちゃんが?」

「うん」

「それでシャロお姉ちゃんはアースラお兄ちゃんについて行くことにしたの?」

「うん、理不尽な目に遭う人や、か弱い人を守れるようになりたい―そう思って師匠に修行をつけてもらってるの」

「それでアースラお兄ちゃんはシャロお姉ちゃんに一人で戦えとか言ってたんだ」

「そうだよ」

「怖くないの?」

「うーん、怖くないって言えば嘘になるけど、師匠が私を認めてくれる瞬間は嬉しいし、今はニアちゃんや村の人たちを守れてる実感があるから、やり甲斐があるよ」


 シャロがにこやかに微笑みながらそう言うと、ニアは目をぱちくりとしたあとで口を開いた。


「……カッコイイ」

「カッコイイ?」

「うん、シャロお姉ちゃんカッコイイ! ニアも大きくなったらシャロお姉ちゃんみたいになりたい!」

「私みたいに? 師匠やシエラさんみたいにじゃなくて?」

「うん! アースラお兄ちゃんたちも強くてカッコイイけど、ニアはシャロお姉ちゃんみたいになりたい、そしてこの村のみんなをニアが守ってあげるの!」

「でも戦うのは怖いよ? 凄く勇気がいるし」

「あ、そっか……それじゃあニアが大きくなったら、シャロお姉ちゃんの弟子にしてもらって強くなる! それなら戦うのも怖くなくなるよね?」

「ええっ!? 私の弟子に? うーん、それはどうかなあ……」

「お願い! シャロお姉ちゃん!」


 そのお願いにシャロが戸惑いを見せていると、ニアは瞳をうるうるさせながらシャロに抱きついた。


「……分かった、それじゃあニアちゃんがもっと大きくなって、お母さんとおじいちゃんが私の弟子になってもいいよって言ったら、その時は弟子にしてあげる」

「やった! 絶対だよ? 約束だからね!」

「うん、約束する」

「楽しみだなあ、早く大きくなりたいなあ」

「それじゃあ早く大きくなるためにしっかり寝ないとね、夜更かしすると大きくなれないよ」

「そっか、それじゃあすぐに寝なきゃ」


 そう言うとニアは素早く目を閉じ、眠ろうとし始めた。そしてシャロはそんな可愛らしいニアを見てから目を閉じ、二人で眠りの世界へとまどろんで行った。

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