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第108話・楽しい思い出と共に

 ライーナの協力もあり、母へプレゼントするオリジナル香水を作り上げたニアだったが、初めての慣れない作業で疲れてしまったらしく、香水が出来上がったあとには深い眠りに落ちてしまっていた。

 そしてシャロはそんなニアをおんぶし、リーヤでいつも使っている宿、シープドリームで借りている部屋のベッドにニアを寝かせた。


「よっぽど疲れたんだね」


 ベッドで熟睡するニアをにこやかに見ながら、シャロはその頭をそっと撫で始めた。そしてしばらくするとシャロも徐々に意識がまどろみ、ニアから香る香水の優しい匂いに包まれながらその横で深い眠りへと落ちた。


× × × ×


「いたっ……」


 翌朝、ぐっすりと眠るシャロの額にコツンと何かが当たり、シャロは薄っすらと目を開いた。すると薄ぼんやりとアースラの姿が目に映り、シャロは小さく口を開いた。


「……師匠」

「そろそろ起きろ、朝飯に行くぞ」

「えっ、もうそんな時間なんですか?」

「そんな時間なんだよ、分かったらさっさと起きてニアと一緒に猫飯亭へ来い」


 そう言うとアースラはシャロたちのもとを離れ、部屋を出て猫飯亭へ向かって行った。すると残されたシャロのお腹から空腹を知らせる虫の音が大きく鳴り響き、それに呼応するようにしてニアのお腹からも腹の虫の音が鳴り響いた。


「昨日は晩御飯も食べずに寝ちゃったから、空腹の虫も大騒ぎするわけだね」


 シャロはベッドから下り立ってニアを起こし、パッチリと目を覚ましてから猫飯亭へ向かった。そして猫飯亭で待っていたアースラと思う存分食事をしたあと、三人はご満悦な様子で猫飯亭をあとにした。


「町で出る料理って凄いね! どれも見たことなくて美味しい料理ばっかりだった!」


 ニアは猫飯亭へ来る前からとてもご機嫌で、運ばれて来る料理を見ては物珍しげに表情をほころばせ、料理を口にする度に絶賛の声を上げていた。


「猫飯亭の料理そんなに気に入った?」

「うん! 今度はお母さんとおじいちゃんとも一緒に来たい!」

「そっか、気に入ってくれたみたいで良かった」

「さてと、俺はこれからマールたちの買い出しの手伝いに行くから、二人は適当に観光でもしとけ」

「えっ、お手伝いしなくていいんですか?」

「ああ、俺が居れば大丈夫だろうから、その間はニアに町の案内でもしてやれ」

「分かりました、それじゃあそうさせてもらいます」

「ただし、昼には町門の前に来ておけよ」

「はい」


 シャロの返事を聞いたアースラは踵を返し、商店が集まる方へと向かって行った。


「さてと、ニアちゃん、どこか行ってみたい所はある? 時間はそんなにないけど」

「えーっとねえ……それじゃあ、シャロお姉ちゃんと一緒に時間まで沢山のお店を見て回りたい!」

「そんなことでいいの?」

「うん、ニアは町のことは全然分からないから、シャロお姉ちゃんと色々な所を見て回りたい」

「そっか、それじゃあ時間までそうしよっか」

「うん! あっ、あのお店に変なのがある!」


 シャロとお店を回ることが決まった途端、ニアは満面の笑みを浮かべて視界に入ったお店へ走って行った。


「シャロお姉ちゃん! 早く早く!」

「はーい!」


 とても楽しそうに手招きをするニアを見たシャロは、足取りも軽くニアに近づいて行った。

 こうして二人は残された時間を存分に楽しむため、時間の許す限り観光を続けた。

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