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第106話・特別な贈り物

 無事に円形城塞都市リーヤへ着いたアースラたちは、それぞれの目的のために別行動を開始した。


「シャロお姉ちゃん、香水ってどこに売ってるの? 道具屋さん?」

「道具屋にも売ってはいるけど、道具屋や屋台で売られてる香水には粗悪品も多いから、師匠に聞いたことがある専門店に行った方がいいかも」

「へえー、町には香水の専門店なんてあるんだね、凄いなあ」


 ニアが好奇心いっぱいの明るい笑みを見せると、シャロはにこやかに微笑みながらニアの手を握った。


「行こっか」

「うん!」


 ニアは握られた手を握り返し、シャロに手を引かれながらリーヤにある専門店に向かい始めた。しかし初めてカルミナ村を出て町へ訪れたニアには街中に溢れるあらゆる物が珍しいらしく、目的の専門店へ向かう途中で何度も足を止め、興味の対象を見ては子供らしくはしゃいでいた。

 こうしてアースラたちと別れてから20分ほどが過ぎた頃、シャロたちはようやく目的の専門店へと辿り着き店内へ入った。


「わあー、このお店にも見たことがない物がいっぱいある!」


 店に入った途端、ニアは驚きの表情を浮かべて広い店内をぐるっと見回した。

 店内の棚に並べられた大小様々な大きさと色をした綺麗な瓶、それをニアが見ていると、店の奥から黒のとんがり帽子を被った露出の多い妖艶な黒の服装をした女性が出て来た。


「いらっしゃいませ、まあ、可愛らしいお客さんたち。私はこの店の店主で、ライーナ・フレグラースと申します。このお店共々お見知り置きを」

「あっ、え、えっと……」


 村では絶対に見ない服装をした女性を前にニアは戸惑いの表情を浮かべ、素早くシャロの後ろに隠れた。


「あらあら、どうかされましたか?」

「すみません、この子は町に来るのが初めてなので、ちょっと緊張してるんですよ」

「そうだったんですか、私はアストリア帝国に認められた、正式なアロマウィッチアルケミストですので、ご要望があれば言ってくださいね」

「あろま、ういっち、えっと……なに?」


 聞き慣れない言葉を聞いたニアがシャロの後ろから顔を出し、興味深げに小首を傾げた。


「アロマウイッチアルケミストは匂いに関する専門職として、日常で使う香水からモンスターけ、引き寄せるための匂い袋作り、匂いに関する病気の治療薬を作ったりと、様々な用途やご要望を聞いて仕事をしているんです。ですからお客様のご要望には出来る限りお応えいたしますので、遠慮なくご相談ください」

「はい、ありがとうございます」

「あ、ありがとう」

「それで、本日はどのような品をお求めですか?」

「えっと、お母さんの誕生日に香水をプレゼントしたいの」

「それはとても素敵ですね、それではご予算とどのような香水がお望みか伺ってもよいでしょうか?」

「えっとね、千グランまでで、優しくて甘い、ふわふわした匂いがする香水が欲しいの」

「優しくて甘い、ふわふわする匂いですか?」

「うん」

「優しくて甘い、ふわふわする匂いの香水……そうですね、それだと――」


 ニアの要望を聞いたライーナは棚へ近づくと、あちこちに視線を向けながらいくつかの瓶を手に取り、それを近くにある木製テーブルに置き始めた。

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