第六十二話
クリスとイリス、比巻にここにゾルヴァンが潜伏している可能性、施設内にも何かあるかもしれないという話を共有した。
『アッヘンバッハもここに目を付けたか、これで間違いはないようだな』
「それで師匠! 私たちはなにをすればいいですか!」
『そうだな、この建物にはおそらく大規模な施設が隠れている。 それを見つけるための手助けをしてくれ』
「任せて! 私がまとめてぶっ飛ばすわ!」
「おいやめろ、隠密作戦って言葉知ってるか?」
道中の警備員は、比巻に任せていいだろう。隠密作戦でこれ以上ない助っ人だ。
「でも師匠、場所が分かっていないと動きようがないですよ」
『配管とマップを見ると、ここに謎の空間がある』
「謎の空間……?」
『配管地図では、明らかに偏っている配置になっています。 なのに、館内地図はそこに何もありません』
未悠さんと遠見が、すでにだいたいの位置はつかめているようだ。だが、そこに至るまでの道が分からない。
「道……たぶん、わかる」
「ほんとかイリス!」
「父から……おおよその推測は……聞いてた」
『魔術建築でも有名なアッヘンバッハ当主の推測だ、間違いないだろう、そこまで案内してもらおう』
ここから俺が一時間かけて調べるはずだった情報が、あっという間に集まった。
俺は確かにOFにこだわりすぎていたのかもしれない。こんなにも力強い友達がいっぱいいるというのに。
「ここの壁……壊すと……道があるっぽい」
イリスの案内で廊下を進んでいくと、何の変哲もない壁を指さす。
確かに、壁を叩くと、ほかの壁とは違う音の反響だ。
「任せて、私が穴をあけるわ」
「大きな音立てるなよ」
「わかってるわよ!」
そういうと、クリスは指先の炎で壁を焦がし、魔法陣を描いていく。そして、魔法陣が完成すると、その壁の部分は静かに灰に変わっていった。
中には、確かに道があった。
「すごいな、こんなことも出来たのか」
「学内序列七位よ、当然出来るわ」
クリスの自慢げな言葉も、今日は素直に受け取っておく。
おそらく、この先が敵の拠点であることは間違いないだろう。
「覚悟はできてるか?」
今一度、三人の意思を確認する。
今回は、面白半分で首を突っ込んでいい内容ではないだろう。
もし、IMROと密接に関わっている事件であるならば、最悪の場合、三人の命すら危険に晒すことになる。
そして、俺はそうならないように最善の努力をしなければならない。
「もちろんよ、何があっても今回の犯人は許さない」
「ここまで案内したから……もう引けない」
「私も神貫未悠の弟子よ、見て見ぬふりは出来ないわ」
三人の覚悟は、すでにできているようだ。
今回のホムンクルス事件の犯人、パクチーさんがなぜ関わっているのか、事件の全貌に関わる重要なものがこの先にあるはずだ。
俺も覚悟を決め、隠し通路を進んでいった。




