第五十九話
「なにも問題……なかった、私……トイレ行ってくる」
声が部屋から聞こえてくる。そして、トイレに行くと告げた彼女は館長室から再び出てくる。
「それで……こんなところで……なにしてるの?」
「こっちが聞きたいくらいだわ、イリス」
館長室から出てきた少女は、イリス。共にコンビを組んで戦った仲だからこそ、忘れるわけない。
そんなイリスが、なぜ館長室にいる?
「私は……父の付き添い」
私の疑問に答えるように教えてくれる。
イリスの父、フォルデウス・フォン・アッヘンバッハ。名門アッヘンバッハ家の現当主である彼が、一体なんの話を?
「そっちは……なにしてるの?」
「私たちは、ここで密会してホムンクルスについて話しているという情報を聞いて、どうにか事件を調べられないかと」
「なるほど……間違ってないけど……はずれ」
「どういうことか、説明してくれる?」
その後、トイレに移動し、イリスから話を聞いた。
どうやらアッヘンバッハは今回のホムンクルス事件を良く思っておらず、早期解決を目指している。そこで、捜査線上に館長が上がってきたことから、問い詰めにきたということらしい。
「でも……館長は……口割らない」
「どうやら、ヒントどころか答えの大当たりみたいね」
話を聞こうと思っていたが、どうやら館長がこの事件に関わっている可能性は高いようだ。
牧瀬ちゃんを連れて行って、口を割らせるか。やりようはいくらでもある
その時、牧瀬ちゃんが上を向いてじっと見つめる。
「何か……音がしない?」
「天井のほ――――――」
直後、天井にあった排気ダクトの網が外れ、人が飛び降りてくる。
「騒ぐな! おとなしく両手を――――――え?」
そこから飛び降りてきた人物は、全身を黒い特殊な服を身に着けており、手にはサプレッサーを付けた拳銃。
だが、その人物を三人は知っていたし、その人物も三人を知っていた。
「――――比巻にイリス、クリス、なんでここにいるんだ?」
「こっちのセリフよ、それにその恰好……なにしてるのよ、カズスケ」




