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第四十九話


「さて、トイレットペーパーとアイスとコーラとポテチ、全部買ったな」


 OF事務所前で手荷物を確認し、帰宅する。

 大量の連絡の最後にメールでお使いが投げられていた。

 結局、俺が雑用することになるのか……。


「ただいま帰りましたー」

「お、遅かったな」

「あ、和佑! なんでさっき逃げたのよ!」


 そこには、いつものように新聞を読む未悠さん。そして、未悠さんが汚した部屋を片付けている比巻がいた。

 だが、予想外なのが一人。


「カズスケー、アイス買ってきた?」

「お、お前……なんでここに……?」


 掃除機を持って掃除していたのは、ポニーテールのクリスだった。

 なるほど……アイスはクリス用か。

 更に賑やかになりそうな事務所を見て、再び胃が痛くなる。





 時は少し遡る。

 これは、俺が比巻を病院で看病していた時の続きだ。


「ぜひ、弟子入りさせて下さい!」

「は、はぁああ?」


 唐突な申し出に、俺はもちろん、未悠さんも困惑していた。

 確かに、未悠さんは有名な人物ではあるが、ここまで直接指導を仰いだ人物はいただろうか。

 それに、魔術師は基本的に一子相伝の魔術を得意としており、その師も血縁者が多い。

 だということを踏まえても、やはり比巻の行動は謎であった。


「あぁ……その、悪いが他を当たってくれ」


 バツが悪そうに断る未悠さん。

 こうして直接的に憧れの目を向けられるのは、あまり慣れていないのだろう。

 だが、比巻の目のキラキラは消えていない。


「だが、どうして比巻が弟子に?」

「えぇ、私の母親がよく神貫未悠さんについて話していたの」

「……ん? 母親?」


 未悠さんが、母親という単語を聞いて何か思考を巡らせ始めた。

 そして、待つこと五秒。いつの時代か、手で合点を表し、大きくうなずいた。


「――――お前、比巻の娘なのか!」

「やっぱりお母さんのこと覚えていたんですね!」


 急に比巻の肩を掴む未悠さん。

 なんだか一人だけ置いてけぼりだ。一体、どういうことだろうか?


「いやぁ、結婚するとは言っていたがまさか娘がここまで大きくなってるとはなぁ」

「お母さん、いつものように神貫未悠さんのお話をするんです! それで、とっても興味深くて!」

「あの、未悠さんは比巻のお母さんと知り合いだったんですか?」

「あぁ、魔術学院の時の友人でな。卒業してもう17年も経つのか……」


 そういえば、事務所に置いてあった写真を見たことがある。

 ふてぶてしく偉そうな未悠さんの横に、二人の女性が立っている写真だ。

 確かに、あの片方は比巻の面影がある。そんなところに繋がりがあったとはな。


「ふむ、比巻の娘となると話が違ってくるな。どうせ洗脳魔術しかできないから戦闘系を教えろってところだろう?」

「はい、流石ですね」

「相変わらず洗脳魔術を極めているんだな」


 すると、未悠さんが適当な紙を一枚用意する。

 そこに流し書きで『神貫未悠と比巻牧瀬は師弟関係を結ぶ』と一筆。

 下に自分のサインと拇印を押す。


「ここにサインをしろ、それで師弟関係は成立する」

「これって、ゲッシュですか?」

「もちろんだ。これを師弟関係を崩す行為があれば、ゲッシュにより魔術封刻が刻まれる」

「ま、魔術封刻!?」


 魔術封刻といえば、IMROが行使する絶対的抑止力、末代まで魔術が使用不可能になる呪いだ。

 それを、使用するというのか?


「魔術封刻が抑止力としてIMROのみが行使しているのは、その行使の難易度が桁違いだからだ。だが、私レベルならゲッシュとして行使できる」


 世界の中でも有数の魔術師である神貫未悠。

 その人に師弟関係を結んでもらえるというのはありがたいかもしれないが、もし違えた場合、末代まで魔術が使えなくなるのだ。

 だというのに――――


「よろしくお願いします! 師匠!」


 何の恐れることもなく、サインを書く比巻。

 それはきっと、自分が未悠さんに付き従えるという自負があるから。責任でもあり、それを全うするのが得意なのが比巻だ。

 拇印を押し終わると、紙は赤く光りだし、徐々に文字が刻まれていく。そして、最後は端から焼け焦げ消えてしまった。


「これで師弟関係は成立だ、雑用もやるんだぞ」

「もちろんです!」


 比巻のその元気な返事は、これからのことを楽しみしている声であり、もう体は完全回復をしているとの証明でもあった。

 そのあと、比巻と未悠さんの間で魔術学院トークが繰り広げられ、二人の仲はあっという間に縮まることになった。


 俺が楽しみなことといえば、雑用が減ることくらいか。それは両手をあげて喜びたい。

 さて、これからどうなることやらと期待を胸にした俺もいたのであった。


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