第四十八話
「モテモテだな、伏見君よ」
エレベーターにはどうやら先客がいたようだ。
その高い背とお洒落な金髪の髪型。
パクチーさんだ。
「これがモテてるなら、俺はもう少しモテなくてもいいですよ」
「お、言うね~。それでも、比巻ちゃんを落とせたのはすげぇな!」
実際に落としたのは、俺ではなく未悠さんなんだが。
それも、弟子入り志願までして。
「そうだ、これから飯でもいかないか? おっかけられてんだろ?」
気の良い先輩が、昼食にまで誘ってくれる。丁度、腹も減っていたところだ。断る理由もない。一休憩入れるというのもありだろう。
「いいですね、是非」
「おすすめの店があるんだ」
それから案内され、西逆市の郊外へ出ていく。
そこには普通の住宅街という感じだが、その中でも一軒だけ和風な家が立っていた。
看板には『にし村』と達筆で書かれた提灯。
外観だけでも、相当な高級店だとわかる。
「さ、入りなよ」
「ちょ、こんな高級店大丈夫なんですか?」
「奢るからさ、ぜひ食べてほしいんだよ」
パクチーさんの笑顔には、全て肯定させるような抱擁感がある。
奢ると言われてしまったら、ぜひ食べさせてもらおう。
引き戸を開け、庭を歩いていくとそこには立派な日本家屋がある。中へ入ると、女将さんが正座して待っていた。
「いらっしゃいませ、パクチー様とそちらは?」
「今日は後輩を連れてきたよ」
「伏見和佑と申します」
「伏見様ですね、お料理はすぐにご提供できます」
そのまま奥の部屋へ通される。
雰囲気からしてもそうだが、とんでもない名店であろうことは予測できた。
というか、西逆市にこんなところがあったなんて知らなかった。
部屋につき、腰を下ろす。座布団に座り、互いに適当に乾杯を交わす。
どうも、緊張感がぬぐえなかったが、パクチーさんと他愛もない話をしていたらいつの間にか解けていた。
「それにしても、お前さんも十二賢者会に正式に入ってもおかしくないのにな」
「いえいえ、俺はちょっと特殊なだけですし」
「それでも、クリスちゃんと共に加苅と未納を倒したんだろ? 加苅の魔術は、俺も知らなかったから驚いたぜ」
「あれはクリスの力が大きいですよ、それに賢者会のメンバーは皆凄いじゃないですか」
「確かに、未納もそうだがトップ3は桁違いに強い」
学院のトップ3。
学内序列第三位の宮崎時雨、二位の出雲志麻、そして一位である黒崎総司。
その実力は、まだ計り知れない。
「だが、デスアスクを倒した実力は確かだ。アイツは、きっと俺じゃ倒せない」
「デスアスク……何故、その名前を?」
学院を襲ったのはIMROの人物だということは共有しているが、デスアスクという名前までは公表していないはずだ。
どこかで、話しただろうか?
「…………いや、ちょうど志麻ちゃんと白衣の女が話しているを聞いてな」
「あぁ、なるほど」
「うん、お前と食事をするとどうも良い気分になっちまうな」
その言葉の真意をくみ取ることは出来なかったが、俺もパクチーさんとは良い食事ができたと思っている。
時間も時間ということで、店を出る。
会計時に、ゼロがいくつ並んでいたかは見る気もしなかったが、小切手にサインを書き渡す様は流石王子だと痛感した。
店を出てパクチーさんと別れた後、比巻とクリスからアホみたいな量の連絡が来ており、また胃が痛くなった。




